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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
渇望した物は
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パンとサラダと目玉焼きとハムと言った簡単過ぎる物をテーブルに並べてシルフィーは椅子へと腰掛けた。

買い出しにも行っていなかった様で掃除をした所でろくな食材が無かったのである。


「明日はシチューでも作るかのう」


「まじすか師匠!!」


「うむ。

じゃから買い出しと畑作業は頼んだぞ」


「………うっす」


シチューに釣られ労働をさせられる事になってしまった。

良い様に使われている気がしなくもないが、シチューの為には折れるしかない。

各々が食事に手を付け始めると、改めてアルフォンスは口を開いた。


「さて、隷属の契約についてじゃったな。

そもそも隷属の契約とは何なのかという話じゃが、これは本来魔族が魔獣を使役する際に使う術じゃ。

命令に従わせ、逆らえば罰を与える事が出来る。

方法も使役する側かされる側、どちらかの宣言さえあれば良い。

される側の魔素が使役する側より多ければ勝手に宣言されても破棄出来るし、逆もまた然りじゃな。

ただまあ基本的に魔獣より魔素が少ない魔族なぞ居らぬし、宣言が出来る言語を扱える魔獣もおらぬ故に破棄は殆ど無いケースだと思っておきなさい」


「なるほど…」


「私、魔獣扱いだったんすか」


「まあそうじゃの。

ただこの術には欠陥が多い。

使役する側の人間よりも魔素が勝る者であればその契約を勝手に断ち切る事が出来るんじゃよ。

例えばレイモンド殿下よりわしの方が魔素が多ければお前達の専属契約を無断で解除出来ると言う事じゃな」


「まじすか。

やって下さい」


「もう無理じゃな」


「えっ」


「前のお前達の状態なら出来たが、血を引き出された今はもう無理じゃて。

半魔だとしてもハイエルフより纏う魔素の量が多い者など魔族にも早々おらんよ」


ガックリと肩を落としたシルフィーにアルフォンスがポリポリと頬をかく。

小さい声で言われた諦めろという言葉はしっかりと耳に届いた。


諦めるなんて嫌である。

一生下僕なんて嫌である。

レイモンドに輝く笑顔でドンマイと言われちょっとイラッとした。


「本当はどうしても無理だと逃げ帰って来たら契約を断ち切ってやるつもりだったんじゃがなあ…」


「逃げ帰れば良かった…」


「まあそうしない位には別に悪くないんじゃろ?

諦めて全てが終わったらレイモンド殿下に切って貰いなさい」


「うっす………」


「まあそしてじゃな。

隷属の契約は実際魔族が使うのかと言えばそうでもないんじゃ。

言った通り簡単に切られてしまう上に、強さが全ての魔族が自分より弱い魔獣を従える意味が無い。

それならば自分で戦った方が早いしの。

これを使うのはよほどの面倒臭がりが番犬代わりの魔獣を捕まえる時位じゃ。

本来はこの隷属の契約を因縁の盟約に変えるんじゃよ」


「因縁の盟約に変える…?」


「そうじゃ。

それには条件がある。

隷属の契約には片方の宣言だけで良かったが、因縁の盟約はもう片方の宣言も必要になる。

後は互いの血を混ぜる。

まあ血判の上に血判を押すとでも言ったら良いかの?

互いに親指の先っちょでも切ってその指を重ねると血が混ざるという訳じゃな」


「はえーなんかカッコ良い」


「フィーのカッコ良さの基準って独特過ぎるよね…」


「カッコ良いかは分からんがこれが因縁の盟約に必要な事じゃ。

隷属の契約を結ぶ相手は魔獣が多いが、因縁の盟約は魔族同士が結ぶ物でな。

それには理由がある。

1つは絶対に切れなくなってしまう事。

もう1つが魔力や寿命を相手に渡す事が出来る様になるからじゃ」


アルフォンスはグイッとグラスに注がれた酒を飲み干した。

そして真剣な目で真っ直ぐに2人を見詰める。


「例えばそうじゃな。

フィーは火魔術が苦手じゃろ?

じゃがこの因縁の盟約を結べばレイモンド殿下の扱える魔素をフィーも扱える様になる。

苦手だったり、本来扱えない魔素ですら扱える様になるんじゃよ。

そして全てを預かれば単純に2人分の力を得て戦える様になる。

後はこう、相手が瀕死の状態であったとしても寿命を渡してやる事によって生き長らえさせる事が出来るんじゃ。

まあだからこそ、魔力や寿命を預けている間に契約が断ち切られたら困るから一生切れなくなるんじゃな」


「…ではもしかしてアリオクが死ななかったのも、誰かが蘇生したからですか?」


「いや、それはまた別の話じゃ。

そもそも因縁の盟約は魔族の中でもよほど信頼していなければ交わさぬ術じゃ。

魔族の証明とも言える魔力を渡すんじゃぞ。

それをしても良いと思える程に相手を信じていなければ出来ぬ。

隷属の契約は簡単に言えば上司と部下の関係じゃが、因縁の盟約は運命共同体の関係とでも言えば良いかの。

人間同士の結婚なんぞよりずっと重たい契りなんじゃよ。

だから交わす者など殆どおらん」


「なるほど…」


レイモンドが顎に手を当て思案げに小さく唸る。

因縁の盟約を交わそうなどと考えているならば本気でやめて欲しい。

そんな重たい契約は全力でノーである。


「これが隷属の契約と因縁の盟約についてじゃな。

そして次にアリオクが死ななかった理由じゃが、これは単純な話よ。

殺し方が違うというだけじゃ」


「殺し方が違う?」


「4眷属はそもそも魔王に忠誠を誓って産まれてくる。

その肉体や生命はその魔族の物ではなく、魔王の物だ。

じゃから切ろうが何をしようが奴らは死なぬ。

生命は魔王が持っているのじゃからな。

無茶苦茶だと思うかもしれないが、それが4眷属が4眷属である所以じゃ」


「では殺す事は出来ないと?」


「いや、どんな事にも例外はある。

例えばフィーの父親の様に魔族の理から外れたならば、4眷属であろうと消える。

そしてもう1つ。

人間の作った聖剣で、魔王に忠誠を誓ったその心臓を突き刺せば魔王との繋がりが消滅し4眷属は消える」

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