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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
足りない物
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こうして役目が終わって無いにも関わらず、一旦王宮に戻る事になってしまった。


歴代こんな事は一度も無かったらしい。

歴史上初の勇者御一行途中帰還である。

多分歴代勇者御一行の中で一番恥ずかしい肩書きを持つ代となってしまった。


さすがに馬車で堂々と王都に戻るのは精神力とかそんなのがゴリゴリに削られるから無理だとキースに言われ、王都の手前でシルフィーとレイモンドは馬車から降ろされた。

第一王子宛の書状をキースに持たされ、背中にレイモンドをおんぶ紐で括られながら。


ローブの下に羽はしまってあるが気が付くと広がってしまう為のカモフラージュと、未だに靴の無いレイモンドの為である。

レイモンドの目からハイライトが消えていた。

最早生気がない。


「じゃあな。

さっさと解決して合流しろ」


「じゃあねえレイモンドちゅわぁん。

いないいないぶわああああ!!」


「…体が戻ったら覚えときなよガウル」


馬車の移動中ずっと練習し流暢に話せる様になったレイモンドがギロリとガウルを睨んだ。

だが赤ちゃんだと怖くないでちゅね~と頭を撫でられプルプルと震えている。

その内怒りで爆発するんじゃなかろうか。


「シルフィーさんも羽がなんとかなると良いですね。

せめて色だけでも」


「そうよねえ…。

その色と形はちょっとセンスがどうかと思うものね」


「…せめて黒に変えられる様に頑張ります」


しょぼくれている2人に思い思いの激励とからかいを贈り4人は旅立って行く。


…凄く静かだ。

何だかちょっとだけ違和感がある。

どうしてだろうか。

前はもっと静かだったのに。

静けさには慣れていたはずなのに。


街は賑やかなのに、それが余計に皆がいない事を実感させられてしまった。

てくてくと街を歩きながらそんな事を思う。


時折シルフィーの背後を見た通行人が可愛いと騒ぐ。

まあ見た目は確かに天使みたいな赤ちゃんであろう。

目はちょっと死んでるけども。

小さくブツブツと「ワタシハアカゴ…イマノワタシハアカゴ…」と呟いている以外は可愛い赤ちゃんである。


余程おんぶされているのが嫌らしい。

プライドやら男の沽券やら喚いていたから無理も無いが。


「あっ赤ちゃん用品店がある。

レイモンド様、靴買います?」


「…ありがたいけど今私を降ろしたら羽が飛び出すけど大丈夫かい?」


「あっ忘れてた。

無理っすね」


「……ワタシハアカゴ…イマノワタシハアカゴ…ワタシハアカゴ…」


自分を洗脳しようとでもしているのだろうか。

ちょっと怖い。


「まあまあ大丈夫ですって。

私もレイモンド様に抱えられた事ありますし、私に背負われた所でお互い様ですよ」


「…フィーは女の子でしょ。

男が背負われるのはちょっと違うんだよ。

私は考え方が古いと言われようが、男らしくありたい。

キュウシュウダンジみたいな」


「誰ですかそれ」


「頑固一徹で亭主関白みたいな人達らしいよ。

ちょっとかっこ良いよね」


「レイモンド様には無理じゃないすか?」


「いきなり人の夢を砕いたね」


「だって亭主になる気ないじゃないすか。

1人関白って難しくないすか?」


「…確かにただ生活力が無い独身になるね」


「まあ女顔ですし、多少女々しくても大丈夫ですよ」


「慰めるふりして傷を抉るのはどうかと思うよね」


「そんなにグズグズ言うなら元に戻った後、お姫様抱っこで城中を練り歩きますよ。

もちろんレイモンド様がお姫様側っすからね。

ドレス着させますからね」


「……それは…死ねるね」


主に心がだろう。

想像したら普通に似合いそうだと思ったのは内緒にしてやろう。

本気で凹んでしまいそうだ。


「てか私、第一王子様の場所分かんないんすけどどうしたら良いっすか?」


「あー…あそこの騎士にその書状見せたら良いよ」


「騎士…騎士…」


「門の前にいるでしょ。

銀色の胸当付けてる人」


「あーはいはい分かりました」


シルフィーがひょこひょこと騎士に近付き書状を見せるとキースの署名を見た騎士の顔色が変わった。

人を呼ぶから待ってと言われボケッと立ち尽くす。


「いやー可愛い赤ちゃんですねえ。

なんて名前なんですか?」


「レイモンドっすね」


「レイモンド!!

第三王子殿下と同じお名前じゃないですか!!」


背中をバシバシとレイモンドに蹴られる。

偽名くらい使えと言いたいのだろう。

だがシルフィーにはとっさに名付けが出来る程のネーミングバリューは持ち合わせて無かった。


「うわー本当に可愛い。

いないいないばー!!!!」


「…きゃっきゃっきゃっ」


「………真顔で笑ってますね」


「ちょっと性格が特殊な赤ちゃんなんすよね。

すいません」


「いえ。

まあ人それぞれですからねえ。

あっ来た来た。

案内役の彼に着いて行って下さい」


別の騎士に引き渡されぺこりと頭を下げた。

何やら着ている鎧の種類が違う。

エリート組とかそんなんだろうか。


「何で鎧が違うんすか?」


「騎士と近衛騎士の違いだね。

案内役の彼は近衛騎士なんだよ」


「へー。

てかもっかいやって下さいよ。

棒読みのきゃっきゃっ。

めちゃくちゃ面白かったっす」


「………」


足でまたバシバシと蹴られる。

赤ちゃんだと全く痛くないのが余計に笑えるだけだった。


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