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ならまあ良いかとシルフィーは床に座り胡座をかいた。
両手を広げて声をかける。
「ほーらおいでー。
歩きましょうレイモンド様ー」
「いけるわけがないよね!!」
「何でなんすか」
「いちおうフィーもおんなのこでしょ!?
けんじぇんなしぇいじんだんしぇいが、ばらんしゅかんかくがおぼつかないまま、ちかづいていいたいしょうじゃないのわかる!?」
「平仮名ばっかで何言ってっか分かんないっすね」
「したがまわらないんだってば!!!!」
「…しゃーないっすねえ」
シルフィーは立ち上がると腰をかがめレイモンドに手を差し出した。
その手をレイモンドがきょとんと眺める。
「……1人で歩けないんなら一緒に歩けば良いじゃないすか。
掴まって下さい。
一緒に行きましょう」
「……ありがとう」
レイモンドがおずおずと手を伸ばしシルフィーの手を掴む。
そこに体重をかけてフラフラとしながらも立ち上がった。
手を引いてやれば歩く事は出来そうである。
「出来たじゃないすか。
飴ちゃんいります?」
「…いまもらうのはなんかばかにしゃれしょうだからいらない」
「まあしますね。
偉いでちゅね~良くできまちたねえ~って言おうかと思ってました」
「……」
貰わなくて良かったとレイモンドは遠い目をしながら思った。
さすがにプライド的な何かが粉々に砕けるであろう予感しかしない。
「てかその耳どうしたんすか?
やたらとんがってますけど」
「たぶんだけど…まじょくのちのぶんりょうをかえられたとか、にんげんのちでおしゃえられてたものをかいほうしゃれたんじゃないかとおもう」
「……はっきり喋れません?
聞き取り辛くて仕方ないっす」
「あかちゃんにたいしてようきゅうがきびしいよね。
がんばるからちょっとまって」
「…何にせよ一旦王宮に戻るしかあるまい。
レイモンドがその調子では次に魔族が現れたら嬲り殺しだ。
…それに俺も何か対抗策が無いか調べたいしな。
見ているだけと言うのは…もう二度と経験したくない」
「そうだな。
俺も嫌だ」
キースの言葉に黙って成り行きを眺めていたガウルが同意した。
ミリアとアナベルも頷いている。
「…仲間が死んでいくのが分かっていながら庇われるだけなんて腹が立って仕方ねえよ。
過去の大戦では停戦とは言え人間側が一応勝ったんだ。
対抗する術があるはずだろ?」
「…確か人間の国、シュタール帝国との国境沿いにあるマグナ領には過去の大戦についての詳細な記録が保管されてると聞いた事がありますわ。
そこでなら何か人間が魔族に対抗する為の方法が掴めるかもしれませんわね」
アナベルの話を聞き、キースはふむ…と顎に手を当てた。
暫し思案するとキースは顔をあげた。
「…そうだな。
まずは一旦王宮に戻ろう。
シルフィー嬢とレイモンドはそこで降ろす。
ゼークス領への派兵を頼んだ後、我々はマグナ領に向かう。
これで良いか?」
「えっなんで私も留守番なんすか」
「その悪趣味な羽を付けたままウロウロする気か?
貴様はそれをなんとかしろ。
書庫にでも行けば何かヒントがあるやもしれん」
「悪趣味…………」
「解決したらすぐに追いかけて来い。
馬を飛ばせば3日で着く距離だ」
「うっす…」
悪趣味とまで言われしょげているとミリアがそんな事ないですよと慰めてくれる。
じゃあミリア様もこの羽要ります?と聞くと目を逸らされたが。
さすがに少々傷付く。
「ほらレイモンド来い。
抱えてやる」
「……」
「外を裸足で歩く訳にもならんだろう。
他の奴に抱えられたいか?」
キースの言葉に唇をぐぬぬと引き結んでいたレイモンドが諦めた様に抱え上げられた。
女性陣は除外したとしてガウルに抱えられるのもまた屈辱だったのだろう。
死んだ目でキースに抱えられている様はちょっと笑える。
先を歩く2人をニヤニヤしながら見詰めていると袖をぐいっと引っ張られた。




