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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
足りない物
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「ご案内致します」


領主の館でシルフィー達を出迎えた執事長と名乗る男性は、用事を聞く事もなくそう口にすると、着いて来いとばかりに踵を返した。


普通なら有り得ない態度だが、魔族が取り繕う必要も無いと判断したのだろう。

シルフィー達は黙ってその後に続いた。


館の中は綺麗と言うよりは男らしいと言った内装だった。

廊下の壁は特に壁紙も塗装もされておらず、石材そのままである。


そこに集めたのであろう武器や甲冑、狩で捉えたのであろう鹿の角等が無骨に飾られていた。


ゼークス領は有名な騎士を多く排出して来た地だとキースが言っていたが、領主もまた武の道を歩む人だった事が伺えた。

正直センス良いじゃないかと謎の目線で褒めてしまう位には、シルフィー好みの内装だった。


こんな状況でなければゆっくり見て周りたかったと残念でならない。


石床を歩く音だけがやけに響く。

誰も一言も話さなかった。

いや、話せなかった。


それ程までに館内は異常なまでの静けさが広がっていたのだ。


この執事長を名乗る男性以外、誰もいないのである。

騎士はおろか、使用人の1人でさえも。


皆、殺されたのだろう。


それ以外考えられなかった。


「こちらです」


そう言って男性は大扉を指し、壁際へと避けた。

自分達で開けろと言う事だろう。


キースはもう覚悟を決めていたのか躊躇う事無く扉に手をかけた。

ギィッという重たい音と共に扉がゆっくりと開く。


中は大広間であった。

奥には豪奢な椅子が1つ置かれているだけで他には何も無い。


その椅子にダラりと気だるげに座る人物がいるだけだった。


長髪の黒髪に灰色の肌。

黒い軍服を胸元を開けて気崩し、その上に黒いオーバーコートを肩にかける様にして羽織っている。


全身が黒に染められたかの様な容姿の中でその瞳だけは紅く煌めいていた。

まるで血で染めたかの様に。


人間では無い事は肌の色だけでも分かるが、髪の隙間から生える2本の捻れた角が彼が魔族である事をはっきりと示していた。


「やあ、待ちくたびれたよ」


男はねっとりとした声でそう言った。


「変な事をやってるな~って気が付いてはいたんだけどねえ。

何をやっているかまでは分からないから放ってたんだけど。

興味も無かったしねえ」


誰も返事をしないが彼は話し続ける。

何の話だろうか。

さっぱり分からない。


「…あっ忘れてた。

案内ありがとう。

もう良いよ」


男はそう言うと指先をスイッと動かした。

その瞬間、シルフィー達の後ろに控えていた執事長がボロボロと砂となって消え失せる。

床に服だけがパサリと落ちた。


誰かがゴクリと喉を鳴らした音がやけに響く。


「あぁそれでね。

たまたま通りがかったんだよ。

お散歩がてらね。

そしたらびっくりしたよ」


男は口を耳まで裂けさせてにやぁと笑った。


「ダメだよねえ???

魔王様を作ったりしちゃあさあ」


その言葉に思わずシルフィーはビクリと震える。

話の内容が漸く分かったのだ。


そしてもう1つ気が付いた。

これは当たって欲しくない。

だが、そうとしか考えられない。


魔王が生まれた事が分かるのは。

魔王が生まれたと判断出来るのは。


4眷族だけだ、と。


「魔王…?」


訝しげに呟いたキースの小さな声が耳に届いたのか男はあぁと頷いた。


「人間には分からなかったかもしれないねえ。

何も知らされてないただの操り人形だもの。

…でもさあ」


男の姿が椅子から消えた。

探そうと目を動かした瞬間、耳元で楽しげな声がした。


「お前達は分かったよねえ???

半魔の癖に4眷属の真似事をしたんだからさあ」


バッと身を翻しシルフィーとレイモンドは男から距離を取る。

速い。

速すぎる。


「愚弄してると思わないかい??

魔王様の偽物を作った挙句、人間と半魔が4眷属なんてねえ。

魔族にとって最大級の侮辱だよ。

ちょっと頭に来たからとりあえず近かったここで遊んでしまったよねえ。

国ごと滅ぼそうか迷ったけどねえ、タイミング良く君達が来るって言うからさあ」


男は懐から羊皮紙の束を取り出した。

それはキースが無事か確認する為に何度も領主に向けて出した手紙であった。

キースの瞳に憎悪が宿る。


「先に君達から殺そうかなあってねえ。

そうだねえまずは…」


男はそう言うとツイッと赤い目を動かした。

その瞳がガウルを捉える。

男はにやりと笑みを浮かべた。


「……気に入らないなあ。

私と同じ西の眷属を名乗るなんてさあ!!」


「ーっ伏せろ!!!!!!!!」


キースが怒鳴るよりも先に飛び出したのはシルフィーであった。

男がガウルに視線を向けた瞬間、風の魔素を身に纏い土の魔素を操りながら風に乗る。

そしてガウルを突き飛ばすと土の盾で魔術を受け止めた。


だがまるでそれは薄いガラスで出来ているかの如く粉々に砕け散り、シルフィーは後方へと吹き飛ばされた。

壁に衝突するギリギリで何とか風によって身体を受け止める。


男の赤い目が少しだけ開いた。


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