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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
壊滅した都市
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「話は後だ。

マーク殿、とりあえず街の再建が先だろう」


「はっはい!!!!」


「レイモンドはとりあえず救護所に行って来い。

シルフィー嬢をずっとローブに包んでいる訳にはならんだろ」


「……あ」


「あ?」


「いやずっと静かだから抱えてる事をすっかり忘れてました。

フィー、大丈夫かい?」


慌ててレイモンドがローブの中を覗くと完全に脱力したシルフィーがいた。

レイモンドの胸に頭を押し付けて俯いている為に顔が見えない。

死んでいるんじゃないかと焦り呼吸音に耳を澄ませる。


すぴょーすぴょーと何とも気の抜ける音が聞こえた。


「生きてるのか?」


「…寝てますね」


「はあ!?

普通あんな真剣な空気で寝られんだろう!?」


「話が長かったんでしょうね」


「…しかも一応年頃の娘だろう。

恋人でもない他人に抱えられて寝るって生物としての危機感すらないぞ」


「まあ手を出されるわけがないと思ってるんでしょう」


「…まあレイモンドだしな。

その点では一番安全だろうが…お前本当に欠片も意識されてないんだな。

魔術師故かもしれんが…」


「男としての沽券に関わりそうなのでやめて下さい。

とりあえず救護所に行ってきます」


「あぁ…」


何故か哀れみの視線を受けながらレイモンドはシルフィーを抱えて立ち上がる。

そのままスタスタと救護所へと向かって行った。


キースがチラリとレイモンドがいた場所に視線を向けると、そこには夥しい程の血溜まりが出来ている。


ここまでの怪我を負いながらそれを欠片も顔に出さなかった。

それは一重にただマークに責任をこれ以上感じさせない為だろう。


その頑固さが心配であり、また兄として少しだけ誇らしく妬ましい。

キースは頭をガリガリと掻き毟る。


書類仕事や有事の際の最適確な判断は自分の方が出来ると自負していた。

だがやはり。

人を動かす力は、人の心に言葉を届ける力は弟の方が上だ。

人たらしとでも言うのかもしれないが。


片方だけでは人は着いて来ず、またもう片方だけでは国を守れない。

両方を兼ね備えた者こそが王座に相応しいのだろう。


逆に言えば、力を合わせたならば素晴らしい国を作っていけると言う事だ。

兄が実務、自分が兄の下で書類仕事をし、弟に秘書を付けて外交をして貰えば良い布陣となるだろうと思える。




ーだがそんな未来が来ない事も分かってる。




キースは小さく舌打ちをした後、騎士団に声をかけた。


「まず遺体を搬送だ。

遺体安置所として一箇所に集め速やかに検視検安を進めろ。

被害状況や怪我人、物資の過不足の把握。

夜が来る前に油は確保する様に。

避難所に毛布や食料品の支給と仮設トイレを作れ。

動ける住民には川から水を汲み出す様に伝えてくれ。

後は井戸の復旧作業と瓦礫の除去。

物資運搬の為にも速やかに道を作れ。

それと治安維持の為の警備。

各隊で役割を分け同時進行で速やかに始めてくれ。

細かい指示は私か領主に仰いでくれ。

以上解散」


「はっ!!!!!!」


「マーク殿災害対策本部は出来ているか?」


「先程仮設で用意致しました」


「分かった。

早急に立て直すぞ」


「ーっありがとう…ござい…ますっ…!!!!!!」


「泣くのは後だ。

全部終わってから存分に泣け。

泣く暇があったら足元の瓦礫の一つでも拾うんだ。

絶望したとしても下は向くな。

前だけを向いていろ」


「はいっ………!!」


涙でぐしゃぐしゃになりながらマークは頷く。


「後ろにも下にも未来はない。

あるのは前だけだ。

前だけを見て進むしかない。

だが苦しくなったら横を見ろ。

共に歩む仲間はいる」


ほら行くぞとキースはマークを呼ぶ。

マークはグイッと涙を拭うと真っ直ぐに足を進め始めた。

その歩みに、もう迷いなど無かった。


「ガウル!!

貴様はこの書状を持って馬を使って隣のトバス領まで走れ。

仮設住宅用の資材の支援を頼んでこい。

後で王家から補填させる」


「はいよ!!」


「ミリア嬢は救護所で医務官の補助に回ってやってくれ。

数日以内に大規模な葬儀を行うからその用意もこの地の教会と連携して頼む」


「分かりました」


「ついでにアナベル嬢に家に連絡を入れる様に伝えてくれ。

被災者の物資が絶対的に足らん。

夏場だから食材がすぐに傷む。

迅速な支援の要請を頼んでくれ。

その後は被災者への食糧支援の手伝いに回る様に伝えろ」


「了解。

馬持って行く前に伝えるわ。

なんだったらトバスに行った後俺が伝達してくる」


「あぁ、頼んだ」


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