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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
壊滅した都市
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「お聞きしたい事が何点かあります」


「……はい」


「この飛龍の卵は貴殿らが飛龍から盗み保管していた。

間違いないですね?」


「………はい」


イシュラン領の領主はしばし俯いた後、否定する事無く頷いた。

全てを覚悟した様な顔で。


「今回飛龍が襲来したのは、我々が儀式を執り行った事で結界が一時的に完全に破れ、その隙に以前から卵を取り返そうとしていた飛龍が入り込んだ」


「……」


「卵を盗んだのはこの地に魔素を留める為である」


レイモンドの言葉にマークは頷きながらも自嘲気味に笑った。

キースが眉間に皺を寄せてマークを睨み付けながら口を開く。


「じゃあ何か?

領主自ら民を危険に晒したと言う事か?」


「兄上落ち着いて下さい」


「落ち着ける物か!!!!

この火事も飛龍による物なんだぞ!!!!!!

何人が死んだと思ってる!!!!!!

道端に並べられた遺体の数を見ろ!!!!!!

貴様には領民を守る責任があるはずだ!!!!

領地を預かる貴族としての義務さえ忘れたのか!!!!!!」


「兄上!!!!!!!!」


激怒し怒鳴るキースをレイモンドが怒鳴り返して戒める。


キースは仕事中毒だ。

彼はいつだって仕事をしている。


それは全て国の為の仕事で。

国を良くする為に身を捧げているのであって。

自分を犠牲にしてでも国や民を守りたい彼にとって、領主が私欲の為に領民を犠牲にする事は許せない事なのだろう。


彼の目には憎悪に近い感情が浮かんでいた。

対するマークの目に浮かぶのは、疲弊か諦観か。


「…兄上聞いて下さい」


「………何だ」


「彼は私欲の為にこんな事をしたんじゃない。

国の為、ひいては民の為です」


そうでしょう?とレイモンドは碧色の瞳を優しげに細めた。

マークの強ばっていた肩がびくりと震える。


「兄上、飛龍の卵ってどうやって手に入れると思いますか?」


「…商人から買うなり、巣に侵入して盗むなりだろう」


「商人は無理でしょうね。

犠牲の数が多すぎて稼ぎよりも被害が大きくなります」


「じゃあ巣か?」


「その巣の場所ってご存知ですか?

この国から出て隣の大陸の僻地です。

そこには多くの種類の龍が暮らし、人間が入り込めばすぐに惨殺されると言われています。

そんな場所に飛龍の卵はあるんですよ」


「……」


「逆に言えば、そんな場所まで行って卵を取って来たと言う事です」


「…何故?」


「言ったでしょう?

魔素を留める為ですよ」


レイモンドはマークを見上げふわりと微笑んだ。

まるで味方だとでも言う様に。


「龍の卵は孵るのに約30年かかると言われています。

だが孵る前の卵も中には龍の生命がある。

魔族の血が流れているのだから当然、卵も魔素を纏い、集める事が出来る。

魔素を集める為には通常、魔族や魔族の血が濃い魔術師、魔獣がいればその地には魔素が集まります。

けれど魔族や魔獣は危険が付き纏う上に、魔術師は希少価値で隠れて暮らしている者が多い。

その中で龍の卵と言うのは孵るまでの期間も長く、安全性も高い。

魔素を集める為には最適確でしょう」


「…何故そうまでして魔素を?」


「兄上、お忘れですか?

ここは我が国の食料庫です」


レイモンドの言葉にキースは目を見開いた。


「我が国は100年毎に魔素が澱み、その浄化を終えるまでは作物も育ち難くなります。

100年の内必ず95年目から100年目辺りは不作となると言っても良い。

だが我が国はずっと食糧難に陥っていない。

何故か分かりますか?」


「…イシュラン領があったからだ」


「そうです。

この地はずっと最期の砦として立ち塞がっていてくれたんですよ。

わざわざ危険を犯して龍の卵を盗みに行ってまで、浄化が終わらずとも作物を守れる様に国の砦となっていてくれたんです」


それを責めるのは、責任転嫁にも程があるとレイモンドが呟く。

キースもグッと唇を噛み締めた。


「…この地は農産物も畜産品も盛んな土地です。

その地が100年目に1度必ず長期間不作になったらどうなると思いますか?

皆そんな不安定な業種からは離れて行くでしょう。

だけど歴代領主がずっと守って来たからこそ、この土地のワインはずっと王座にいる。

この土地のチーズがずっと最高級品として愛されている。

国内の他の地域が食糧難に陥っても備蓄倉庫を解放して支援をして来た。

その為にこの行為が必要だった。

だから罪を負わせるのならば、この地の領主に全て背負わせてしまったこの国も、共に罪を負うべきでしょう」


「………」


「イシュラン侯爵閣下、貴殿に対し我々王家は頭を下げ謝罪し、礼を言わねばならないと思っています」


謝罪し、感謝すべきは我々です、とレイモンドが深々と頭を下げた。

マークの握り締められた拳がブルブルと震えている。

唇を震わせながら彼は首を横に振った。


「謝罪を…礼を…言われる筋合いなどありません」


「……」


「私は失敗しました。

やってはいけないミスを犯しました。

封印の儀の前に卵の移動をせねばならなかったのに、魔獣が現れその討伐に時間を割き飛龍の侵入を許してしまいました」


「……」


「私は…領主としての務めを怠った上にっ、領民を殺したのです」


「……」


「私にはっ領主としての資格も、礼を言われる資格もありません!!!!」

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