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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
壊滅した都市
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飛龍は卵を足の間に入れると大人しく座る。

レイモンドに「大人しくしててね」と言われていたが本当に言葉が分かるのかもしれない。


「えっと私の言葉って分かります?」


「……」


飛龍はちらりとシルフィーを見たが黙って目を閉じる。

無視をするつもりらしい。


「分かるなら尻尾を動かして欲しいんすけど」


「……」


「…このクソドラが」


ぼそりと悪態をつくと爪先で額を啄かれる。

額からタラりと血が垂れた。


「レイモンド様離して下さい。

こいつ殺します」


「じっとしてなさい」


「きゅえっきゅえっ!!」


「殺す!!

絶対殺す!!!!」


「嘲笑われた位で怒らないの。

馬鹿だこいつって言われただけでしょ」


「首へし折ってやる!!!!」


「きゅえっきゅえっきゅえっ」


「大爆笑されてるね」


「なんすかこの躾のなってない糞龍。

ペットにしてやらんでもないと思ったのに」


「きゅえい~きゅる~」


「えっ無理~。

チンチクリンはやだ~だって」


「誰がチンチクリンじゃい!!!!」


「フィーでしょ」


きゅいきゅいと飛龍が嘲笑いシルフィーは憤怒した。

この糞みたいな飛龍を躾てやらねばならんと。

駄目なら1発殴らせて欲しい。

だがレイモンドが宥めるようにどうどうと背中を撫でた。


「ちょっレイモンド様痛いっす。

手を別の場所に置けません?

背中痛いっす」


「腹はパックリ、背中は穴まみれ、額からも流血で無事な場所ないでしょ。

多分何処に置こうが痛いし既に私の手も血塗れだよ。

もう手遅れだよね」


「……入院っすかね?」


「ポーションが残ってるかどうかかな」


「まーた暇になる…」


「そうだね」


げんなりとしながらシルフィーが言うとレイモンドも遠い目をしながら答える。

退院して1週間以内に再入院する程病院好きにはなれない。


「あっミリア嬢」


「はっはい!!」


「フィーのローブの場所って分かるかい?」


「あっはい回収してありますよ。

ですが…」


レイモンドに声をかけられたミリアがおずおずとローブを差し出す。

丁度シルフィーが首を叩き切った飛龍の落下地点にあったそれは、泥水を吸い込んだ上に血と肉片でドロドロになっていた。


シルフィーからはレイモンドと彼の背後にいる飛龍しか見えない為、ローブを確認せず後ろに向かって腕だけを伸ばす。


「ナイスですミリア様。

ローブを下さい」


「あー…フィー、ローブも逝ってるみたいだよ。

なんか血と肉と泥で凄い事になってる」


「…………詰んだ」


「まあ我慢だね」


「シルフィーさん、大丈夫ですか?」


「隠さなきゃいけない程度には大丈夫じゃないかな」


「どれどれ」


ガウルがひょこっと現れローブを掴み中を覗く。

うげぇ…と小さく漏らしたのが聞こえた。

乙女の背中を見た感想としては最低である。


「…なんか血で出来た蜂の巣みたいになってる。

これはグロいな」


「だろう?」


「それ大丈夫なんですか!?」


「話し合いが終わるまでは大丈夫だと思うよ。

元気はあるし」


「心は折れてます」


「ほらね元気でしょ?」


「だな」


「良かったあ」


こいつら誰も話を聞かねえとシルフィーはむくれた。


「あっそう言えばアナベル様とは合流出来たんすか?」


「はい!!

ただ血がダメだと言う事で今は馬車で待機して頂いてます」


「血がダメなら今のお前見たら吐くんじゃねえか?」


「顔みて吐かれたら私の乙女心は粉砕するっすねえ」


「最初からねえだろそんな物」


「まあはい」


「認めちゃうんだ」


「シルフィーさんは乙女心はなくても漢気はあるから大丈夫ですよ!!

飛龍と闘う姿かっこ良かったです!!」


「全くフォローになってないっす」


「キース殿下!!

イシュラン侯爵領領主マーク・イシュラン様をお連れ致しました!!」


騎士の声が周囲に響く。

キースがそちらに視線を向け、ミリアとガウルは端へと避けた。


「遅くなって申し訳ありません。

私がイシュラン領を治めるイシュラン侯爵家当主マーク・イシュランです。

我が領地の危機に駆け付けて下さり感謝の念に耐えません。」


「良い。

とりあえず世間話は後だ。

弟のレイモンド第三王子から貴殿に話があるそうだ」


マークはキースにしか意識が向いていなかったのか、促され漸くレイモンドの方へと視線を向けた。

その背後に立つ飛龍と足元から覗く卵を包んだ布の端に気が付くと、小さく息を吐く音が聞こえる。


レイモンドはドロドロに汚れ前が見え辛くなっていた銀髪を掻き上げて、真っ直ぐに碧い瞳でマークを見詰めた。

露わになったその麗しい顏に、周囲の人々から感嘆の息が盛れたが気にせずにレイモンドは口を開いた。


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