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「だぁりゃあああ!!!!」
掛け声と共に深々と剣を飛龍の首へと突き刺す。
そのまま風魔術の風圧と共に剣に全体重を乗せた。
グヂュッと言う嫌な音と共に血飛沫が上がり飛龍の首がゆらりと揺れる。
そのまま首が地面へと吸い込まれていき、胴体もまた首を追いかける様に落下した。
「あっやべ」
地面にそのまま落ちたらヤバいと気が付き慌てて風魔術を纏わせた。
さすがに救助に来て街を破壊するのは本末転倒にも程がある。
というか普通に嫌がらせでしかない。
きちんと着陸出来たかに意識が向いていたせいか身体が真横に吹っ飛ばされる。
空中を勢い良く吹き飛ばされ、必死で足を使ってブレーキをかけた。
「痛ったぁ…」
シルフィーは抉られた横腹を見る。
白いシャツにジワジワと黒々とした血が滲んでいった。
この前病院で縫ったばかりなのに早速開いたらしい。
医者はもう勘弁して欲しいんだけどなあと小さく溜息を吐く。
さすがにこの腹で剣は振れない。
力が入らない上に、色々飛び出すのはさすがに嫌だ。
内臓を出しながら戦うなんてそんな怖い絵面にはしたくない。
今度は爪で切り裂こうと振り下ろされた腕を避けながらどうしようかと暫し考える。
飛龍に有効なのは火魔術のみ。
だが火魔術はシルフィーと相性が悪く威力が足りない。
要は火魔術の威力さえ上げれば良いのだ。
シルフィーはぺろりと唇に付いた血を舐める。
火魔術とシルフィーの相性は悪いが、シルフィーの主属性である風魔術と火魔術の相性は悪くない。
シルフィーは魔素を操り命じる。
竜巻を起こせ、と。
風の魔素が集まり台風かの様な竜巻を作る。
そこに火魔術で火の玉を投げ込んでいく。
一つ一つの威力は小さくとも、風に煽られた事で火は炎へと変わり竜巻と一体になり、そして火災旋風へと姿を変えた。
その熱さにチリチリとシルフィーのお下げ髪が焦げる臭いがした。
シルフィーは掌を飛龍へと向け地獄の業火の様な竜巻を飛龍へと飛ばした。
飛龍は避けようとするが全てを巻き込まんとする風に負け、断末魔を残しながら吸い込まれて行った。
あと1体。
さっさとこの竜巻をぶつけようと視線を動かしたシルフィーは目を見開き、急いで竜巻を消滅させると真っ直ぐに地面へと急降下した。
飛龍の1匹が隙をついて街へと突っ込んで行ったのである。
地面すれすれで飛龍よりも先に街に降り、瞬時に土魔術でドーム状の盾を創る。
受け止められれば良い。
街さえ守れたならば、それで良かった。
猛スピードで盾に突っ込んで来た飛龍の衝撃で盾には無数の亀裂が入った。
「ぐぅっ!!!!!!!!」
押し返そうと踏ん張る足が雨によってズルりと滑る。
身体に力を入れたせいで、裂けた腹からダラダラと血が溢れ出すのが分かる。
やがてバキッと言う鈍い音と共に盾が弾け飛び、そのままシルフィーは地面へと叩き付けられた。
飛龍がその隙を見逃さず再び突進してくるのが見える。
「ちっ!!」
慌ててもう一度盾を作ろうとするが、さすがにまだ魔素の回復が追い付かず先程よりも数段劣る強度の物しか出来ない。
あっこれ詰んだかもとぼんやり飛龍が来るのを眺める。
やけにゆっくり見えるのは走馬灯って奴かしら等と巫山戯た事しか思い浮かばない。
最悪、相打ち覚悟で爆発を起こすしかないと掌に風と火の魔素を集める。
飛龍が来るのをただただ待つシルフィーの視界を銀糸が埋めつくした。




