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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
漸く働くらしい
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「どうせガウル様はお金っすよね」


「…まあそうだな。

悔しいが他にいる物ねえし。

けどてめぇらもどうせ金だろうが」


ガウルにムスッとして言われシルフィーは頬杖を付いた。

良く考えたら王家にせびってまで欲しい物等考えた事すらない。


「…確かに金っすかね。

隠居してこじんまりと家畜の世話でもしながら生活出来る程度の。

一生働きたくないっす」


「欲深いんだか無欲なんだか分かんねえなお前。

…あれ?

でもお前専属魔術師って事はレイモンドも一緒に隠居すんのか?」


「楽しそうだねフィー」


「…お願いって2個は出来ないんすかね?

契約破棄と金が欲しい」


「契約破棄は王家にではなく、レイモンド様にお願いされた方が早いのでは…?」


「こいつが頼みを聞く様な優しい人間に見えるんなら眼科に行くべきですよ」


「酷いなあフィーは。

まあその通りだけどね」


「…一生下僕にする気かよ。

鬼だな…。

つかお前は何にすんだよ?」


「私かい?」


「お前は金も地位も腐る程あるだろ。

なんか欲しい物とかあるのか?」


ガウルの言葉にレイモンドは梨をシャリシャリと齧りながらそうだなあと天井を見上げた。

確かにこれ以上何か欲しい物などあるのだろうか。


「あるけど既に私は伝えてあるから」


「だから何をだよ」


「人を誹謗中傷した君には教えない」


「誹謗中傷ですか?」


「んだよ。

ねちっこいなてめぇ。

まださっきの気にしてんのかよ」


「男の名誉に関わるからね」


「女みてぇな面してんだから良いだろうが」


「女装したら似合いそうっすよね」


「確かに私もそう思います…」


「そうやって堂々と人の顔面を揶揄するのは良くないと思うよ。

デリカシーって知ってるかい?

私が女顔にコンプレックス抱えてたら今頃傷付いてるよ」


レイモンドが梨を齧りながら3人を睨み付ける。

言っている事は間違ってはいないがこいつは絶対顔にコンプレックスなど抱えていないだろう。

むしろ使い勝手の良い武器位に思ってそうだ。


「顔面にコンプレックス抱える様な玉じゃねえだろ」


「まあね。

むしろこの顔は取り柄だと思ってるよ。

誇って良い顔だよね」


「言い切ったな…」


「レイモンド様のお顔でコンプレックスなんて言われたら私達の顔の価値なんてマイナス値になりそうですものね…」


「自信があるのは良い事っす」


「そりゃ自信持つしかない人生だったからね」


「くそ…。

張り倒してぇ…。

モテる奴うぜえ…」


「良く考えて下さいガウル様。

モテるのに失敗し続けてるってむしろ哀れじゃないっすか?」


「そういやそうだな」


「人の人生を失敗扱いしないでくれるかな」


「チャンスは数多あるのに掴み取れないというのも辛いですものね…」


「チャンスがないガウル様もチャンスがあっても無駄なレイモンド様もどっちも哀しい人生って事ですね」


「失敗とか哀しいとか言わないでくれるかな。

それを実際生きてるんだから」


「雑に纏めて侮辱してくんじゃねぇよ。

ミリア嬢はともかくてめぇだってモテねえからな。

それ分かってんのか?

現実見えてるか?」


「黙れゴミカス」


「てめっストレートに罵倒すんなや!!」


「フィーの悪口って割と8歳児レベルだよね。

地味にイラッとくると言うか」


「高貴な悪口とか知らないっすもん。

ミリア様は知ってます?」


「悪口ですか…?

そうですね…、私の働いていた教会の牧師様は『もしかして好物はクリームチキンタルトですか?』と聞いたりはなさっていらっしゃいましたね」


「…悪口なんすか?」


「クリームチキンタルトは村の伝統料理なんですが少々高カロリーなので遠回しに肥満大丈夫?と言う意味になるそうですよ」


「あーなるほどな。

痩せろデブって意味になるって事か」


「粋な牧師ジョークだね」


「粋なんすか…?」


毒にも薬にもならないウダウダとした会話だったが、あの死線を潜り抜けたからなのかやけに心地好く感じてしまう。

生きていると実感出来るからだろうか。

まだ続く封印の儀の事を考えたくないからだろうか。


その答えはシルフィーには分からないままだった。




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