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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
魔術師は最もな理由で嫌われる
20/90

20

2日後。

漸く街に着き馬車から降りると腰をぐーっと伸ばす。

街の名前はマシュガル。

王都からさほど離れてはいない為、割と栄えた街であった。


港がある為魚介類が名物の街らしい。

市場でもまだ生きている魚が売られていた。

風もどこか潮の香りを帯びている。

王都では全てない事である。


シルフィーは市場を冷やかしながらうようよと長い触手を口から出して動かしている黒い魚の前で足を止めた。

エラは動いていないのに触手は動いているという何とも変わった魚である。

少々気になる。


「おっ、嬢ちゃんイビルが気になるかい?」


「イビル?」


「その触手だよ。

ちょっと見てな」


そう言って店主が魚と触手を掴むとグイッと引っ張る。

触手が魚の口からズルリと抜け中から別のやたらと細長い魚が出てきた。

触手は長い口部分だったらしい。

おーと思わず拍手をしてしまう。


「すげえっすね。

手品みたいです」


「違ぇよ。

こいつはなんつーか寄生虫みてえな魚なんだ。

他の魚の身体に入り込んでその内臓とか肉食って成長して、その皮被って移動すんだよ」


「はえー。

食べれるんすか?」


「おうもちろんよ。

ゼラチン質でうめえぞ。

嬢ちゃん旅人かい?」


「はい」


「宿の名前って聞いても良いか?」


「親父の宿っす」


「あぁジェームズの所か。

なら大丈夫だ。

持ち帰ってこれ使って作ってくれって言やあ絶品の料理にしてくれるぞ」


「まじすか。

買います」


シルフィーは財布から銀貨を取り出し手渡す。

先日初任給を貰ったばかりのお財布は少々重たい。


「おう、毎度!

まだ街見て回るなら親父の宿に配達しといてやるがどうする?」


「あっじゃあお願いします」


「なら配達書書くからちょっと待てよ。

嬢ちゃん名前は?」


「シルフィーです」


「シルフィー…と。

今の時間だと昼飯には間に合わねえから晩飯になるがそれで良いか?」


「大丈夫です」


「なら晩飯に出して貰える様伝えとくわな。

ありがとうな嬢ちゃん!

良い旅を!」


「はーい」


ぺこりと頭を下げて店から離れまた歩き出す。

中々良い物を買ってしまった気がする。

夕飯が楽しみだ。


今シルフィーは1人であった。

宿に荷物を置いた後、明日の朝まで自由時間を与えられたのである。


キースは街長の元へ顔を出しに行き、ガウルは許可を得たから大人の階段を登って来ると言っていた。

レイモンドとアナベルとミリアは部屋に入った後会っていない為分からないが。

シルフィーもおやつや酒の補充をしようと街に出て来たのである。


晩御飯も好きにして良いと言われていたしと外で食べるつもりだったが、先程の魚屋のおっちゃんの様子を見るにあの宿の店主の料理は美味いらしい。

夕飯は宿に変更しよう。


酒屋で宿へエールの配送をお願いし、今度は服屋の前で足を止めた。

何やらギラギラしたローブが飾られていたのだ。

トゲトゲした小さい角の様な形をした色とりどりの飾りが隙間なく縫い付けられ、何とも攻撃力の高そうなローブである。


ちょっと欲しい。

尖ったお年頃のシルフィーにピッタリの服ではなかろうか。


「…横になった時刺さりそうではあるけども…まあオシャレに我慢は必要らしいし…」


「さすがにこれは前衛的過ぎる服だと思うよ」


「時代の最先端か…。

なんかカッコ良い………ん?」


何故会話になってんだ?と横を見るとやあとローブのフードを被ったレイモンドが微笑む。

いつの間にいたんだこいつは。


「服を買うなら他の店にしたら?

目立ってなんぼの大道芸人を目指すなら別だけど」


「大道芸人は将来設計になかったっすね」


「ならやめといたら?

というか馬車で隣に座る私が被害を受けそうな服だから正直止めて欲しい」


「余計買いたくなりますね」


「まあフィーはそうだよね。

ほら行くよ」


「どこ行くんすか。

別行動で良いはずですよね」


「今ほっといたらフィーは絶対あの服買うでしょ。

さっき美味しいご飯屋さん聞いたからおいで。

昼ご飯奢ってあげるから」


「…うっす」


こっちだよと歩きだすレイモンドの後ろを渋々歩く。

せっかく自由を謳歌していたのに。

だが美味しいご飯も気になる。


大衆食堂の様な店舗に入り木の椅子に腰掛けた。

中々に古びた店である。

恰幅の良いおばちゃんにレイモンドが何品か注文し、メニュー表をシルフィーに手渡す。


「料理は勧められた奴適当に頼むけど飲み物は何が良い?」


「酒呑んで良いっすか?」


「昼間だよ…?

まあ今日は自由行動だし良いけど」


「んじゃエールで」


「すいません。

後エール2つ下さい」


「はいよ。

ちょっと待ってな」


そう言っておばちゃんはすっと厨房に行き、先にエールを運んできた。


「料理は出来次第持ってくるからね」


「ありがとうございます。

じゃ飲もうか」


「レイモンド殿下も飲むんじゃないすか」


「ここではさすがに殿下は止めようか。

レイにしといて。

まあ私も用事は済んだしね」


「用事?」


「旅の備品の補充。

食材とか諸々の買い出しだよ」


「なるほど。

じゃ頂きます」


「ん。

どうぞ」


ジョッキを手に取り喉を潤す。

ぷはぁと声が出るのは一体何故なのだろうか。

人類の謎である。


「フィーは何か買ったの?」


「えっとエールと何か長い魚です」


「魚?」


「なんか寄生虫みたいな魚みたいな。

触手みたいに長い口がうにうに動くんです」


「………それどうするの?」


「美味いらしいんで宿に届けて貰って晩御飯にして貰う手筈になってます。

なんだっけ…ゼラチン質?」


「…ちょっと気になるから私も貰って良い?」


「まあ良いっすよ。

昼飯奢ってくれましたし」


「ありがとう。

楽しみにしとくよ」


そう言って微笑みレイモンドもグイッとエールを飲み干す。

喉が乾いていたらしくすぐに2杯目を注文している。

シルフィーも飲み干し一緒に注文して貰った。

2杯目と一緒に料理も届き漸く昼食の始まりである。


「遠慮せずにどうぞ」


「ありがとうございます。

頂きます」


「…フィーってお礼言えたんだね」


「どこにびっくりしてんすか」


「多分初めて聞いた気がするから」


「礼を言う事がなかったからでしょうね。

あっ美味。

これ美味いです」


「そう。

それは良かった」


「あっエールおかわりして良いですか?」


「お好きにどうぞ」


「ありがとうございます。

今日のレイ様良い人です」


「…何かお礼言われた気分にならないね」


はぐはぐと食べ進めるシルフィーにレイモンドは苦笑いを浮かべエールを飲んだのだった。


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