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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
魔術師は最もな理由で嫌われる
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16

完全アウェイな空気は終わりを見せる事はないまま今日の野営地だと言う平原に馬車は止まった。


馬車から降り操縦をしてくれていた筋骨隆々のガウルと言う騎士にペコっと頭を下げるが無反応である。

こいつもか。


「彼には何したんすか?」


「ん?

彼?」


「あのガウルって人っす。

完全無視じゃないすか」


「あー…。

彼には何もしてないよ。

ただただ嫌われてるだけだから気にしないで」


本当か?と疑いの眼差しを向けるがレイモンドはさっさとテント張るよと歩き出してしまう。

何もしてなくても嫌われるって最早奇跡だ。

才能の一種に違いない。


「女性陣のテント頼んでも良いかい?」


「うっす」


「えっと私は何をしたら…」


「ミリア嬢はそうだな…。

アナベル嬢と一種に夕食の準備を始めてくれるかい?

料理は出来る?」


「はい、多少は」


「ここに3日分の食材があるから適当にメニュー考えて作って貰っても良い?」


「大丈夫ですよ」


「ありがとう助かるよ。

テントを張ったら私達も手伝うからお願いね」


レイモンドにふわりと微笑まれミリアが薄らと頬を染める。

被害者が増えるかもしれない。


アナベルの注意は意味をなさなかったのだろうか。

木箱を開け食材を選び始めているミリアをそんな目で見ているとクイッと袖を引っ張られる。


「ボケッとしてないで行くよフィー」


「うっす」


「…何その目」


「何がっすか?」


「明らかに屑を見る目で見ないでくれるかな?」


「自意識過剰です。

そんな目してません」


「…まあ良いけど」


確かにこれが後々修羅場になるのか、こいつ修羅場製造機やんけとは思っていたがシルフィーはしらを切る。

正直さは時に厄介事を産むのだとシルフィーは知っているのだ。


川から程よく近い便利の良さそうな場所に支柱を立て杭を打ち込む。

木槌を振り下ろすのは中々に楽しい。

2週間毎日テントを貼らされていた為慣れた物である。

建て終えて荷物や毛布を運び込むと何だか秘密基地の様でワクワクしてしまう。


「フィー終わった?」


「遊牧民も良いかもしれないっすね」


「何が?」


「将来の計画です」


「何でも良いけど終わったならミリア嬢を手伝ってあげて。

私は兄上の手伝いをしてくるから」


「うっす。」


テントから出て川に向かうとミリアとアナベルが笑みを浮かべ楽しげに会話をしながら野菜を洗っていた。

美しいブロンドヘアに白く陶器の様な肌と真っ赤に染まった唇をした美しいと言える容姿を持つアナベル。

タレ目がちのキラキラと楽しげに輝く鈍色の瞳をした可愛らしいミリア。


そんな2人がキャッキャウフフとしている姿は何とも絵になる位に愛らしい。

女神の戯れかの様だ。

割って入りにくい事この上ない。


どうした物かと思っているとミリアがこちらに気が付きニコリと微笑んだ。


「あっシルフィー様!

お手伝いに来て下さったのですか?」


「えぇまぁ」


「ありがとうございます!

今から皮むきを始める所なので一緒にお願い出来ますか?」


「はい」


シルフィーも混ざり平らな石に腰かける。

傍らに置かれたナイフを軽く川で洗い2人が洗った芋を手に取りナイフを滑らせた。

3人がスルスルと皮を剥く音と川のせせらぎしか聞こえない。

またも無言だ。

やらかしたのはレイモンドなのに何故シルフィーまでとは思うが仕方あるまい。


「あの、シルフィー様皮むきお上手ですね。

まるで職人みたいです」


「森の奥で呪師の真似事をして暮らしてたのでこれ位はまあ」


「呪師?」


「…回復薬を作って売ったり町人の頼みで祈祷を行ったりする職業ですわ」


「アナベル様ご存知なのですか?」


「婚約者候補が魔術師でしたので魔術師の生活方法は勉強致しましたから」


全て無駄な時間でしたがと続き場がまたシンとする。

至る所に地雷が埋まっているらしい。

シルフィーと同じ様に顔が引きつっていたミリアが話題を変えようと視線を彷徨わせ口をアワアワと開いた。


「あっえっと皆様おいくつなのですか?

お名前しかお伺いしてませんよね。

私は19歳です」


「18です」


「16歳ですわ」


「えっ歳下?」


「まじすか?」


「見えませんか?」


ツンと顎を上げて言うアナベルに何と答えて良いか分からない。

絶対一番歳上だと思っていた。

性格的にも身体付きにしても。

16でその出る所は出ているのにスレンダーなスタイルはずる過ぎやしないだろうか。

ミリアとシルフィーは揃って互いの胸をみた。

何となく仲間意識を感じるまな板加減である。


「…何となくシルフィー様が一番歳下かと思っておりました」


「…そこは同意致しますわ」


「色気ないっすからね。

知ってます」


「いえそんな事は…」


そう否定しながらもミリアの目がさ迷っている。

その通りだったに違いない。

全くもって失礼である。


「というか私ど平民なんで様付けとかいりませんよ。

こそばゆいというか気持ち悪いです」


「こそばゆいと気持ち悪いは別物の様な…?

でも分かりました。

私の事もミリアとお呼び下さいませ。

私も平民ですもの。

アナベル様も敬語なんて不要ですわ」


「分かったわミリア」


「了解です。

…というか気になってたんすけどアナベル様も皮剥き上手いっすね。

ご令嬢は出来ないかと思ってました」


「聖女に任命されてから大急ぎで練習したのよ。

それまでは刃物を握った事も無かったわ」


「あー確かに手が綺麗ですもんね」


「確かに白魚の様な手です」


2人から注がれる視線を受けてアナベルがまじまじと自分の手を見た後、2人の手に目を向けた。

家事で赤切れなどのあるミリアとそれに加えて豆の潰れた跡まであるシルフィーの手。

身分は手に現れるとは良く言ったものである。


「…働き者の手ね」


「ありがとうございます!」


困った様にそう言ったアナベルにミリアが笑顔で礼を述べる。

汚れていると言わないアナベルも気にしてないと気を使って笑えるミリアもとても良い子なのだろう。

一番薄汚れているのはシルフィーで間違いない。


外見だけでなく内面ですら勝てないとはこの世は無情な物だ。

勝ち負け以前に土俵に上がる事さえ叶わないのはこの際置いておくとしてだ。


「さっ剥き終わりましたし運びましょうか。

急がないと暗くなってしまいます」


「なら私が運びますよ。

…あ、いややめとくっす」


「え?」


「いや魔術で運ぼうかと思ったんすけど、やっぱ嫌かなぁとあはははは」


地雷を踏み抜くに違いないとシルフィーが乾いた笑い声を上げるとアナベルと目が合った。

アナベルがふぅと溜息をつく。


「…別に気を使わなくて良いわ。

魔術自体は嫌いじゃないもの」


「あっそうなんですか。

ならお言葉に甘えて…」


背中に嫌な汗をかきながら指先を動かし魔素を操る。

翠色の光の粒が皮を剥いた野菜の入った籠を包んでいくのを見てミリアが綺麗…と呟いた。


「…貴女は緑なのね」


「へ?」


「…何でもないわ。

この光の粒で貴女達は見分けているの?」


「えぇまあそうですね。

例えばミリア様の周りには小さい乳白色の粒子が少量浮いてますのでそれが目印と言うかそんな感じです」


「えっそうなんですか?!」


どこ?どこ?とキョロキョロ辺りを見渡すミリアをアナベルが感情の読めない瞳で見詰める。


「…私もあれば違ったのかしらね」


「…アナベル様?」


「…行きましょう」


そう言って踵を返すアナベルの背中を見ながら思う。

修羅場の種は燻りながらもまだここにもありそうだと。

奴はやはり修羅場製造機に違いない。

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