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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
魔術師は最もな理由で嫌われる
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「こいつはな、毎日顔を合わせ会話をしていた兄弟の顔を覚えていなかったんだ」


「…反省しましたし今は覚えましたよ」


「幼い私に本気で泣かれたからであろう?

だがそうでもなければ覚えられないし覚える気もなかったという事だ」


「えっと…何かあったのですか?」


「幼い頃、廊下で話しかけた時こいつは私が誰か分からなかったのだ。

聞けば食事の際は席の場所で記憶出来るが、そうでなければ見分けが付かないのだと」


苦々しげにそう語るキースにミリアが目を見開いた。


「兄弟でさえそうなのだ。

今は努力して見分けられる様になってはいるらしいが、裏を返せば努力しなければこいつは見分けられないと言う事だ。

他の魔術師も同じだと言っていた。

見分けがつかない物に恋情など湧くはずがなかろう」


辛辣ではあるが事実の為シルフィーとレイモンドは黙るしかない。


そもそもの話ではあるが魔術師はその人間が纏っている魔素の色や量で記憶するのだ。

だから魔力のない人間、所謂魔素を纏っていない人間を見分けるのは酷く難しい事なのである。


服や髪の色で努力して記憶しているが正直な所髪型を変えられたり服を着替えられるとお手上げ状態だったりする。


「それは…本当に…?」


「事実ですのよミリア様」


ミリアの横に座っていた聖女アナベルがパタンと本を閉じて顔を上げた。


「レイモンド様は人間の見分けが付きません。

例え婚約者候補として共に過ごした者でさえ」


「婚約者候補?」


「えぇ。

私は幼少期レイモンド様の婚約者候補だった時がございましたの。

すぐに辞退させて頂きましたけれど」


「…私が悪かったんだよ。

傷付けて申し訳なかったと思ってる」


「謝罪は何度も頂いておりますので不要ですわ。

確かに酷く傷付き半年は泣き暮らしましたけれど」


「本当にごめんなさい」


「惨めになりますので謝らないで下さいませ」


「えっと…お2人は何があったのかお聞きしても?」


「先程言った通りですわ。

婚約者候補として徐々に友好を育み、幼いながら将来の伴侶なのだと思っていた私をレイモンド殿下は見分けられなかったのです。

エスコートの際、間違えて私の妹をアナベルとお呼びになっておられ漸くその事に気が付きましたが。

想像出来まして?

初めての舞踏会。

胸を震わせながらレイモンド様をお待ちしておりましたら、私をお迎えにいらしたはずのレイモンド様が、先に家人として出迎えた私の妹をアナベルと呼び手を取っていらしたのを見た私の気持ちが」


アナベルの手元の本がミシリと音を立てた。

それは…とミリアが同情した目でアナベルを見る。


「それまでにも引っかかる事はございましたわ。

お父様のお忘れ物を届けに登城した際にすれ違ったのに完全に無視されていたり等。

気が付かなかったのかもしれない等と思って納得していた馬鹿な自分を殴りたくてたまりませんわ」


「こいつは人当たりはいいから余計に厄介なんだ。

こちらにはある程度仲良くなったと思わせてくる。

本人は見分けすら付いていないとは微塵たりとも思わせない位にな」


「これは嫌われてますね…。

もはや憎悪の域ですよ。

すげぇや」


「知ってるからとどめ刺さないで」


小さく話しかけるとうっとレイモンドが呻きながら答えた。

シルフィーにお前も同類だろと言う目を向けてくるがシルフィーはまだこんな悲劇を起こしてはいない。

その違いは大きいと思う。


「えっとシルフィー様もそうなのですか?」


「否定はしないです」


「まあ…」


「ほらみろ。

だから魔術師との間に恋情など湧くはずがないし、友好を深めようとするだけ無駄なのだ」


「シルフィー様、本当の本当に見分けがつかないのですか?」


キースの言葉にミリアは何か希望はないのかと言う目でこちらを見てくる。

いたたまれなさが凄い。


「正直に言うならば街中ですれ違ったとして、この中ではレイモンド殿下とミリア様は分かると思います。

残りの方々は申し訳ありませんが気が付けないかと」


「私は分かるのですか?」


「えぇ。

恐らく極僅かではありますがミリア様は魔力持ちです。

魔素を纏ってるんで見分けは付きます。

レイモンド殿下も同様です。

そうでない他の御三方は無理だろうと」


「そんな…。」


ミリアが困った様な顔をして俯いた。

何を言えば良いのか分からないのだろう。


だが今の会話で分かった事がある。

キースもアナベルも人見知り等ではなくわざと喋らなかっただけだったのだ。

仲良くなっても無駄だから、と。


まあその感情は最もである。


「…愛想良くしてるとこんな悲劇が起こるんすね。

いやむしろここまでいくとちょっと笑えるんで喜劇?」


「楽しんでるねフィー」


「ここまで酷いと笑うしかなくないっすか?

あっ飴いります?

笑わせてくれたお礼に。

『自業自得の末の苦悩味』です」


「…貰うよ。

ありがとう」


飴は喉が痛む位に酷く苦かった様で、レイモンドの眉間には縦にくっきりと皺が刻まれていた。


「あれすか。

顔合わせの機会がなかったのも『記憶出来ないのに先に会う意味が無い』的な事言われたからとかですか?」


「…そんな所だね」


「ド正論過ぎてウケますね」


今代の勇者御一行は歴代と違い感動的な物語は生まれそうにない。

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