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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
魔術師は最もな理由で嫌われる
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ガタゴトガタゴトと揺れる馬車の中。

車内は静まり返っていた。

シルフィーはずっと続いてる小麦畑から視線をチロりと動かし向かいに座る男性を見た。


男性は赤みがかった紅茶色の瞳をつまらなそうに細めながら腕を組み窓の外を延々と眺めている。

その隣には豊かな金髪を窓から入る風に弄ばれながら若草色の瞳を手元の本に落とし続けている女性。


沈黙が続く車内が気まずいのかその女性の隣でシスターの格好をした少女が鈍色の瞳でチラチラと女性を見ながら口を開いては閉じるという動きを見せている。


上から順に勇者、聖女、神官である。

馬車に乗り込む前に自己紹介をしてからはずっと無言だ。

息が詰まりそうである。


シルフィーの横に座り反対側の窓から景色を眺めているレイモンドですらずっと無言なのだ。

喋ったら負けというゲームでもしているのかという次元である。


シルフィーも社交性はない方だと自負しているが、まさか勇者御一行は全員極度の人見知りか何かなのだろうか。

騎士のガウルだけは馬車の操縦をしている為人見知りかどうかは不明だが。

彼がもしかなりのコミュニケーション能力を持っていたとしても、この圧倒的な人見知り率に勝てるのかどうか甚だ疑問だ。


シルフィーは何か気まずいと思いつつ、肩にかけていたカバンをゴソゴソと漁り中から飴の詰まった瓶を取り出す。

色鮮やかな飴は昨日王都で買ったシルフィーのおやつである。

蓋を開けて紅色の飴を取り出し口に入れコロコロと転がす。

甘酸っぱくほんのりと苦い。

飴に気が付いたレイモンドが窓からシルフィーに視線を移し話しかけた。


「あっ飴いいな。

それ私にもちょうだい」


「何味が良いですか?」


「何味があるんだい?」


「色々です。

30種類位」


「中々多いね。

じゃあその濃い青のやつちょうだい」


「うっす」


シルフィーは瓶の中から藍色の飴を取り出しレイモンドに手渡す。

レイモンドはありがとうと言いながら口に入れると暫くしてから眉間に皺を寄せた。


「酸っぱくてなんか辛いんだけど…。

辛いというか結構口の中痛いんだけど。

何この飴」


「えっと藍色は『箱にしまった昔の思い出味』ですね」


シルフィーはコロコロと飴を口の中で転がしながら瓶に入っている説明書を読んであげた。

味的に余り良い思い出ではないのだろう。


「痛々しい思い出にも程があるよ。

フィーのは何味なの?」


「紅色は『破れた初恋味』らしいです。

甘酸っぱくてそれ以上に苦味が強いですね」


「…美味しいのかい?」


「美味いか不味いかで言えば不味いっす」


「なるほど。

悲恋だったんだねきっと」


「恐らく」


どちらかと言えば不味い飴を舐めながら顔を上げると神官の少女と目が合った。

名前は確かミリアだったか。

会話を聞いて気になったのか飴を見ていたらしい。


「…いります?」


「良いんですか?」


「はい。

何色にします?」


「えっとでは、その萌黄色のを…」


「萌黄色…あっこれか。

はいどうぞ」


「ありがとうございます。」


ミリアは飴を受け取るとおずおずと微笑み口の中に入れる。

が、やはり口元がへの字になってしまった。


「萌黄色は何味なんだい?」


「『自分探しの旅を終えた時味』ですね」


「…限りなく無味無臭です。

ガラス玉を舐めてる様な気分ですね…」


「多分見付からないまま旅が終わったんですかね。

悲しい話です」


「…まともな味はないのかい?」


「さあ?」


「王都には摩訶不思議なお菓子が売っているのですね…」


「数多ある普通のお菓子は美味しいから偏見を持っちゃダメだよミリア嬢。

わざわざこれを選んだフィーが摩訶不思議なだけだからね」


「そうなのですね承知致しました」


「せっかくおやつを分けたのにディスられるとは思いませんでした」


そう言って瓶をカバンにしまう。

他にも色々おやつを買ってあるが分けてやらねえと思いながら。


「ミリア嬢は王都の教会所属じゃなかったのかい?」


「えぇ。

私は元々シンビジ領にある小さな教会で働いておりました。

ですから御役目に選んで頂けたとお聞きした時には本当に感激致しましたの」


「嬉しいんすか?

この役目」


「えぇ勿論。

だって素晴らしく名誉ある御役目ですもの。

絵本でも聖女様一行の逸話は凄く人気ですし私も何度も何度も読み返したものです。

ですから王都の教会から志願者を募ると要請が来てすぐ志願書はお出ししましたが、皆も志願しておりましたから選ばれないだろうと半分諦めておりました」


そう鈍色の瞳を輝かせながら熱くミリアは語る。

そんな人気職だとは知らなかった。

ダルい役目とか言って申し訳ない。


「そんな絵本あるんすね。

知りませんでした」


「本屋に行けばいくらでもあるよ。

勇者御一行の冒険録や聖女と勇者の恋物語まで何でもね」


「私は旅の中で危険な目に何度も合いながら愛を育み勇者様とご結婚された5代目聖女のチェルシー様のお話が一番好きでした」


「ほー」


「…全く興味なさそうだね」


「まあ魔術師は完全に脇役中の脇役っぽいんで」


「あらでも8代目の時には魔術師様と勇者様がご結婚されたという事もあったと読んだ事がありますよ。

魔術師とは言っても、歴代の魔術師に比べて魔力が弱かった魔術師様でしたが、努力を重ねそんなひた向きな姿に勇者様が心を打たれ、励まし支え合いお役目を果たされるのです。

ラスト間際の『これからも共に生きて欲しい。』という勇者様の言葉に魔術師様が『何の役に立てない自分で良いのですか?』と涙を流されるシーンは本当にとても泣けました!!」


「へー」


「せっかく魔術師が主役なんだから興味持とうよ」


「いやだって私、共に生きて欲しいって言われても泣けないっすもん」


「…シルフィー様、失礼な事をお聞き致しますが初恋は?」


「まだっすね」


「あらあら」


ではこの旅で芽生えるかもしれませんね!素敵です!とミリアは頬を染めた。

レイモンドはどうかなあと苦笑いを浮かべている。


「…有り得んな」


そう有り得ない。

完全に同意ではあるが今まで黙りこくっていた男性の口からいきなり出る言葉としては少々失礼ではなかろうか。


唐突に有り得ないと口にした勇者キースは窓の外から視線を動かしシルフィーとレイモンドを見ていた。

侮蔑の滲んだ視線で。

何とも嫌な目である。


「えっと…なんで有り得ないのですか?」


いきなり凍り付いた空気にミリアは戸惑った様に問い返す。

キースはふんと鼻で笑った。


「魔術師と人間に恋など芽生えるはずがないからだ」


「でも8代目の勇者様は…」


「8代目の時には魔術師の魔力がかなり弱かったからこそ起きた奇跡であろう。

シルフィー嬢はかなり血が濃いと聞いている。

彼女ではそんな奇跡起きるまいよ」


「何故血が濃いと起きないのですか?」


「ミリア嬢は道端のアリに恋をする事が出来るか?

もしくは10分前に見たアリと5分前に見たアリの見分けが付くか?」


「あっアリですか?」


「魔術師には人間はそれと同じだそうだ。

…であろうレイモンド?」


そう言ってキースは冷たい目でレイモンドを見た。

レイモンドは溜息を付く。


「…それに関しては何度も謝ったでしょう」


「だが事実そうなんだろう?

ミリア嬢、魔術師はな魔力がない人間はアリと同じ様に見えるんだそうだ。

例え毎日顔を合わせる兄弟であってもな」


「えっ…」


ミリアは困惑した様に瞳を揺らし、レイモンドはまた溜息を付いた。







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