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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
狗のお仕事とは
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キラキラと輝くシャンデリア。

床に引かれた豪華な赤い絨毯。

ホールの両脇にずらりと整列する貴族の当主達。

正面には空席の玉座。


玉座の脇には黒髪を緩く垂らした男性が純白の軍服に金の飾緒を肩に付け眉間に皺を寄せて立っていた。

その下段には色鮮やかなドレスを見に纏った少女達、同じく軍服を着た少年達がズラリと並んでいる。


「正面が私の兄弟姉妹だよ」


「…どれが」


「端にいる白髪の男性以外は」


「子沢山過ぎません」


「色々事情があったんだよ。

因みに6男8女」


「御両親頑張ったんすね」


「いや王妃以外に側妃が何人かいらっしゃるから」


「お父様馬車馬の如く励まれたんすね」


「うんまあそうだね」


そんな厳かな雰囲気に包まれたホールの真ん中に横並びになりながら、ヒソヒソと不敬極まりない会話をしているのがシルフィーとレイモンドである。

聖女と勇者が前に立っている為あまり目立たないし平気だよと彼は言っていたがそれはどうだろうか。


他の兄弟と同じ白い軍服を身に纏ったレイモンドが入場した途端、ホールの脇に並んでいたご令嬢方からはうっとりとした様な溜息が漏れていた。

制帽から溢れている銀髪はシャンデリアの明かりを浴びて輝きを放ち、真顔であっても甘さを滲ませる顔立ちは何とも目立っている。


そこへ来てシルフィーと口を小さく動かしながら会話をし時折柔らかな笑みを浮かべる物だから周りの視線が痛い。

視線で焦げ付きそうである。

国王陛下代理として話す黒髪の男性の話になど全く集中出来ない位には視線が痛い。


「てか何で代理なんすか?」


「まだ父上の崩御は公表されてないんだよ」


「…なんでまた?」


「あれは第一王子で王太子のアイザック兄上なんだけどね、公表してしまうとすぐに彼は戴冠しなきゃいけなくなる。

見ての通り王子王女はまだ全員未婚。

封印の儀には王子が必要なのに王子がいなくなってしまうんだ」


「封印の儀?」


「私達がやる役目の名前だよ。

封印の儀は100年に一度と決まっているんだ。

これは動かせないからこの儀式が終わるまで公表しない事になってる」


「あれでも救護所の方知ってませんでしたっけ?」


「彼らは王宮お抱えの医師だからね」


「あっなるほど」


「だからフィーも内緒ね」


少しだけ身を屈め勇者の背中に隠れる様にしながら人差し指を唇に当ててニコリと微笑む。

しーと言う仕草だけで色気を滲ませるのは止めて欲しい。

偶々目撃してしまったのであろうホールの隅にいたご令嬢がふらりと倒れてしまったではないか。

兵器と同じである。


2人がグダグダと話している間に聖女と勇者が前に呼ばれ、いつの間にかアイザック王太子と祭服を身に付け頭に司教冠を被った男性が2人の前に立っていた。


「今アナベル嬢に宝珠を手渡したのが教皇猊下。

キース兄上に渡されたのは聖剣だね」


「えっなんかかっこ良い。

私は何貰えるんです?」


「何も」


「良い事なんもないですね」


「勇者と聖女が主役の御一行だからね。

私達脇役だから」


「脇役にだって贈り物してくれても良いと思いますけど」


「例えば何が欲しいんだい?」


「そうですね…。

魔術師なんで神話に出てきたとか逸話がある最強の杖とか?」


「神話の杖…?

…あー災いの神ダネルが持ってた神殺しの杖とか?」


「いやそう言う反社的な杖はなしで。

国を敵に回したいとは思ってないです」


「要求が多いなあ」


「そんなに難しい事は要求してません。

てか神殺しの杖とか持ってるだけで教皇猊下にこの場で殺されそうじゃないすか」


「いや伝統に乗っ取って拘束した後に火刑じゃないかな?

魔女と言えば火刑だよね」


「我が国の伝統じゃないすよそれ」


「知ってるよ。

あっほらカーテシーして。

終わるよ」


「うっす」


先程メイド長に習った高貴な方への御挨拶とやらをプルプルと行う。

目の前にいる聖女様はさすがご令嬢とでも言うのかやたらと型が綺麗である。

付け焼刃ではやはり無理であった。


「この後は明日に向けて各々準備しとけって言ってたけどフィー1人で準備出来るかい?

粗方はこちらで用意してあるから着替えとお財布と後はまあおやつでも」


「そんな遠足みたいなノリで良いんすか」


「大丈夫でしょ多分。

着替えは3日分位で良いよ。

一番近い街までの距離がそれ位だから」


「了解です」


「じゃ私は書類仕事してくるからまた明日ねフィー。

明日は早いから早めに寝るんだよ」


「うっす」


退場しホールから離れるなり首の釦を外しながらそう言い、じゃあねと手をヒラヒラさせながらレイモンドは去って行く。

多分奴は式典とか好きじゃないに違いない。

あのヤル気のなさは見事である。


「…おやつ買い出しに行くか」


その後ろ姿を見送ったシルフィーも封印の儀の為のおやつを買う為、王都へと向かったのであった。

ヤル気がないのは彼女も同じである。

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