表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/77

★ 2人の関係

賢悟は温彩を連れ、ダッシュで細い道を曲がった。

人通りの少ない路地通りだ。

そこまで来ると、やっと足を止めた。


「悪い、平気か…?」

「う、うん、びっくりしたけど…。でも誰なの…?こんなスーパーダッシュで逃げないといけないの??」

「アイツ疫病神なんだよ」

「疫病神??」

「そう、疫病神…」

その時、


《ピリリリリリ…!》


賢悟の携帯の着信音が鳴り響いた。


「んだよこんな時にっ」

そしてそれと同時に、背後に人の気配を感じた。反射的に振り返ると…

「ゲッ…!!!」

賢悟に向けて発信中の携帯を片手に、さっきの女性が立っていた。

「ゲじゃないわよ、誰が疫病神だって?っていうかあんた、携帯生きてんじゃないの」

賢悟を見据え、立ち憚る黒髪の女性…

「それに…あたしの俊足なめないで欲しいわね。言っとくけど微塵も衰えてないから」

確かに、呼吸は少しも乱れていない。


(だ、誰なの… すごい美人だけど、それ以上にすごい気迫…)

すっかり動揺し、慌てふためく賢悟の影にかろうじて隠れ、温彩は事の成り行きを見守った。


スレンダーでスポーティな女性。垢抜けているし、静かな重圧感がある。

それに、自分達よりも年上に見える。

少なくとも、高校生ではなさそうだ。


「ね。そこのあなた。あなたは賢悟の、彼女かなんか?」

賢悟からスッと視線を外すと、今度は温彩に眼差しを向けた。

切れ長の目元とそこから放たれる涼しげな視線は、綺麗だけどきつい印象だ。


「あ… えっとあたし、す、菅波…です」

「別に名前聞いてないし。ふぅん…まぁまぁね。感じのいい子ってとこ?」

そう言って、再び賢悟に視線を戻した。


「おい勝手に話しかけんなっ」

賢悟は咄嗟に、自分の背後に温彩を押し込めた。

「賢悟、今この子と付き合ってるわけ?あんた当分女作んないんじゃなかった?」

「死ぬかお前〜!くだんねェこと喋んなっ」

「ところで…携帯はどういう風の吹き回し?」

「っせ〜よ!お前に関係ねェだろうが」

「関係ない?連絡取れなくて困んのはそっちじゃないの」

「もういいからどっか行けよっ」

「あら。珍しく余裕がないわね」

「お前がしつけ〜からだろ!怖ェぞその執念、都市伝の妖怪並だぞ」


同じ周波数で発せられているような言葉とその掛け合い。

それに賢悟の携帯をも知っている程の存在となれば、昨日今日の知り合いというわけではなさそうだ。

温彩は一抹の不安に駆られた。


そんな温彩の様子に気付いた利歩は、口元を緩ませると、賢悟に向かって促すように言った。


「どうでもいいけど、シャキッとその子紹介しなさいよ。関係ないなんていわせないわよ?あんたはあたしにとって最愛の、‘初めての男’なんだからね?」


(へ?? いっ…今、なんて……)

頭の上に空が落っこちてきたかのような衝撃に駆られる温彩。

(は、初めての……男?初めての、男…?)

ピアノの鍵盤を、全て叩き鳴らしたような濁音が、温彩の脳内に鳴り響いた。

(そ、そういう意味?そそ…そういう意味っ?!?!?)

ガーン…ガーン…ガーン… リアルに、ショック。


そして、埴輪のようになった温彩の顔を見た賢悟の脳内にもまた、地獄の狂想曲が鳴り響いた。

「おいっ… こ…、殺すぞお前……妙な言い方をするなっ…誤解招くだろうが」

「クスクス…誤解も何もないでしょ。これからだって一生あんたはあたしの男じゃない」

「おいっ…コラ、アツサ? おいっ…」

「あ〜あ彼女完璧飛んじゃったわね…クスクス。あんたが悪いのよ。どうせ中途半端な付き合い方してんでしょ?相変わらずバカ賢悟ね」

「っせ〜!!お前に言われたかねェよバカ利歩が……」


廃人の表情の温彩だったが、頭の中にはぐるぐると色んなものが渦巻いていた。

(ケンゴ… こ、この人と、何か、怪しげな関係なの?? あ…あ、あたしの知らない賢悟の世界が、あるのっ??)


突然現れた、謎の美人女性。しかも賢悟との初めてのデートにだ。

2人で楽しく過ごしていた矢先、嵐のようにやってきた。

そして未だ目の前では、仲がいいのか悪いのか、よく分からない不思議なやり取りが続いている…


温彩は混乱と同時にいたたまれなくなり、賢悟のシャツの裾をキュッと引っ張った。

「ケ、ケンゴぉ〜…」

「んあ、えっと、なんも心配ねェよ、ちと待ってろ」


そんな2人の様子を見た黒髪の女性は冷やかに笑うと、見下すような目で賢悟に言った。

「ほんとダメな男ね。心配ないわけないでしょこんな状況で。あたしに冷たくするのは構わないけどさ、そんな純粋そうな子まで傷つけちゃって…酷い男ね」

「つか、さっきから変な言い方をすんな!!全部お前のせいだぞクソ利歩!」

「だったら早いとこ‘あたし達の関係’を説明してやればいいじゃない?可哀想よ、その子」

「‘関係’ってなんだよ!わざとに話しややこしくすんな!」

「ほらほらほら」

「ダ〜くそ、相変わらずムカつくなァお前…」


チッと舌打ちをしてから賢悟は、腕を組んで立っている利歩を一睨みし、温彩の方に顔だけで振り返った。

そして、眉をひそめてこう言った。


「コイツ、オレの 『姉貴』 だ……」



えっ…。


へっ!?  はっ!?!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ