狭間へのお客様
神隠し…それは神域である山や森で人が居なくなったり、あるいは、街や里からなんの前触れもなく人が消え去ってしまうことである。そんな事になろうものなら、人間はどうなってしまうのだろうか…少し気になってしまうものですね…
お母さんとはぐれちゃった…ここ何処だろ…
神社のお祭りに来ていたはずの、少女がお母さんとはぐれた様子だった。とりあえず歩く少女に1人の青年が話しかけた。
「そこの子。お主じゃ、どこから来たんや?迷子かいな。こりゃえらいこっちゃ、ここに人間は来ては行かぬぞよ。」
少女はまだ9歳くらいだったため、何を言われているか良くはわかっていなかった。
「何言っとるんかわかっとらん感じの顔やなぁ。まぁいい。とにかく手鏡とか持っとらんか。自分をよぉみてみぃ。」
少女は手鏡など持っていません。お母さんに荷物を全て預けていたため、そう言われても、どうしていいかわかりませんでした。
「持っとらんのか…せやなぁ、この世界は天界と人間界の狭間や。そう簡単には帰れんのや…今お主がどうなっとるか分かれば、すぐその事も理解出来ただろうに…」
少女は感じ取ったのだろう。とにかく、何か恐ろしい事になっているということは、分かったらしい。今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ていたのだ。
「自分の顔みて、名前をよぉ覚えとき、ここにいると忘れちまうからな……」
そう言って、青年は俯いた。慌てて少女は鏡になりそうなものを探しますが見つかりません。
「もってない……どうしたらいいの?……」
「せやなぁ、ここはな金入らんのや。その代わりと言っちゃなんだが、あるものと取引したり、手伝ったりすると交換とかしてくれるのだが、」
少女は大きく頷いた。俺も手伝ってやらな……毎回……失敗してしま……いやこの考えはもうなしや。いつもの俺ちゃうで。
「よし、俺の仲のええやつのとこ行こか。そしたらきっと、手鏡貰えるかもしれぬ。」
早速俺たちは向かった。