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ライズの帰還とバックアップ

 

「帰還した」


「おお、早かったではないか、それで、素材は」


「あぁ、報酬はいらないからもらっていく。結構研究に有用だからな」


「またそうやって......はぁ、分かった。倒してくれただけで万々歳というべきなのじゃろうな」


 実際は倒してないのだが、さもライズは余裕で倒してきましたという風を装う。

 俺を――――というか、バックについている天星教団を信頼しているのか、真偽判定の英雄武器を持った人が同席していなかったのが今回の国王の失敗だろう。


 ライズはそう心の中で結論を出すと、窓を開けた。


「それじゃ」


「おお、また頼むぞ」


「もうこんな仕事はごめんだ」


 そう言って、ライズは飛行して元の場所へと戻るのだった。





「あ、やっと見つけた、ライズせんせーい!」


「何処に行ってたの」


「あ、あぁ、ちょっと野暮用だ」


 エアリとガイアがようやっとライズを見つける。

 ガイアはともかくエアリは宮廷魔法師に食いついて探しに来ないと思っていたが、勘が外れたようだ。


 ライズは脳内でまた完結させ、次の言葉を紡ぐ。


「それで、異変はなかったか?」


「異変、北の山の微弱で異常な魔力以外は特に」


「あぁ、それならよかった」


 ガイアの魔力察知能力でその程度ならば、おそらくこの国で俺のことをとらえることが出来たのはあと一桁。

 後は......襲撃の魔物も姿が見えていないようだ。あとで情報をリークしておこう。


 ライズは脳内に冒険者ギルドまでの道筋を思い浮かべながら、ふと、思った。


 もし、俺が死んだら、誰が魔王の特性を知っているのだろうか、と。


 そして、数秒立たずして結論をはじき出した。


 ――――二人を、俺のバックアップにする、と。


 人類が、いずれ勝つために。魔王を撃ち滅ぼすために。そのために、ここで俺一人のせいで知識を潰えさせるわけにはいかない。


「そうだ二人とも、今日俺を探していたなら魔法練習できてないんじゃないか? この後俺が見てやるよ」


「ライズ先生、本当?」


「やったー!」


 二人に約束をすると、ライズは冒険者ギルドに向かった。


「ライズ先生、行っちゃったね」


「......うん」


 二人はライズがいなくなった後の空間を眺める。


「私たち、ライズ先生に教えてもらえるんだって! やったね!」


「......うん」


「どうしたの?」


「なんでもない」


「? そうならいいんだけど......」


 エアリがガイアの顔を覗き込んだ。が、ガイアの顔は一向に晴れない。


「何か、嫌な予感がする......」


 最近感じていなかったその予感。

 魔法を使うものが一番無視してはいけないその直感に、ガイアはひどく困惑するのだった。

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