異常事態
二人はとりあえず、とどちらからともなく学校へと足を進める。
きっとソフィア先生が終わりの挨拶をしているころだろう、と思い教室に入ったが、人っ子一人いない。
「何があった......魔力も、朝の痕跡しか見えない」
人は誰しも魔力を持っており、それが魔法使いともなれば、体が無意識に魔力を放出したり、珍しい人で言えば魔法を無意識で使う人までいる。
が、そのような痕跡が一切ない。ということが示すのは。
「誰一人として、学校に戻ってきていない」
フィルターで現地解散しているのか、はたまた何か問題に巻き込まれたか。
とりあえず魔法を使って学校中を探索してみるも、人の影一つない。
逆、つまり俺が何かをされている、とライズは疑って幻術に対応する簡単な方法、魔力の放出を試してみる。
も、周囲の環境が変わることはなかった。
「これは一体どういうこと」
ガイアがぼそりとつぶやいた。
職員室に行ってみるも、校内大会に来ないで学校に残った先生すらいない。
「これは異常事態だ」
そう言ったライズは一気に光魔法を使い、王都のあちこちをさがしはじめる。
「見つけた」
数秒で見つけたライズ。が、状況は芳しくはなかった。
もっと頭を凝らすべきだったのだ。
あの頭の悪そうな悪魔が、どうして人間界に訪れたのか。
あいつが戦いたかったから? それなら悪魔同士のほうがよっぽど満足できる。
襲撃を仕掛けたかったから? それなら逃走用に何か用意してもいいだろう。それに、目的がはっきりしない。
様々な可能性を切り捨てた結果―――――と、そこでガイアが答えた。
「あいつは陽動だった」
ライズもその答えを導き出していた。
「急ぐぞ」
「うん」
もう日が落ちてきた。
もう生徒たちは寮に戻る時間だ。
「さて、流石に救援を呼ぶか」
ライズはそう言うと手の先から微弱な光魔法を放出しだした。
それが何を意味するのかは、ガイアにはわからないことだった。




