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ライズの趣味

「さて、特別授業......というより、模擬戦を見てチェックって感じだったが、どうだっただろうか。質問とかあれば、またいいに来てくれ」


 彼はそのまま、研究室へと戻っていった。


「ちょっと! ライズ先生!」


 ソフィア先生が走ってくるも、もうすでに姿が見えなくなっているため、とぼとぼと研究室へと向かった。


 そして生徒は―――――


「あの先生、何者なのかな?」


「何者もなにも、ライズ先生だろ?」


「そうじゃなくて。一体、ここに来るまで何をしていた人なんだろうって」


「いや、どうして?」


「あれだけ教えるのがうまくて、知識も豊富。それであの装備まで揃えられるって、中途採用で来るレベルの人材じゃないと思うの」


「そう言われたら......確かに」


 生徒たちも、何も考えずについていくほど馬鹿ではなかった、ということだ。




「さて。始めるか」


 ライズは光魔法を詠唱する。


「我は望む 万里を視る目 全てを視る目 『遠視』」


 光属性中級魔法、遠視を発動させ、特にやましい意味はないが、ガイアの部屋を覗き見る。


 ......特に変わった様子はない。


 一応くまなく調べるか。


 視界を奥へと移動させる。どうやらガイアは今昼寝をしているようだ。

 この魔法の欠点として、どうしても魔法の気配が感じ取れやすい。視線がわかる人はなおさらだ。


「さてさて~」


 もう一度言うが、やましい意味はない。

 部屋を探すと、何かの痕跡を見つけた。


 これは......!





 ドンドンドン!


「ライズ先生! いらっしゃいますよね!」


 失敗。


 この魔法の終了条件は三つ。

 一つは術師の任意。

 二つ目は視点を飛ばしている先がばれる。

 そして最後が、本体が魔法を集中して使える状況ではなくなった場合。


 この場合は音で警戒したせいで、本体が集中できなくなったのが原因だ。

 こういう継続使用の魔法はあまり慣れていないせいで、初歩的なミスを犯してしまった。


 ともあれ、この声はソフィア先生だ。押しが弱いので居留守でいいだろう。


「ライズ先生! 今日はまだ勤務の日ですよ! 出てきてくださーい!」


 もはやここにいるのを確信しているようだ。一体何の根拠があってだ。

 ともあれ、今日の勤務が終わっていないと言われてしまっては弱い。

 あきらめて戸を開けた。


「ライズ先生、やっぱりここでしたか! なんでライズ先生が見本を見せなかったんですか!」


「どうして見せないといけないんですか」


「だって、そのほうが効率が......」


「棒術と、微量の才能しかない俺が、ですか」


「うっ......でも、力があるからこの学園に来たんですよね?」


「いいえ、知識だけです」


「うっ......分かりました、失礼します」


 そのままトボトボと帰っていった。

 きっと俺が無能と蔑まれてしまうのを防ごう、という筋書きだろう。


 ライズはそのまま思考を戻すと、また視線を飛ばして、ガイアの部屋の痕跡を探す。


 無防備なガイアの寝顔。その頬をつつきたくなるが、今は視線だけだったことを思い出す。

 さて、近づきすぎても怒られる。早速物色を始める。


 どうやら、渡している宿題は手を付けていないようだ。

 消耗品の一部が最近一気に減っていたようだ。

 無口な彼女だが、部屋の中はお人形でいっぱいだ。


 やはり、楽しい。こうやって物色するの、めっちゃ楽しい!


 これが全財産没収の一回目の理由だったりするが、癖になってしまうので仕方がない。

 もっと、もっとぉ......


 結局、その日はガイアが寝ぼけながらも夕食を取りに降りて、戻ってくる直前までその行為が続いていた。

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