冒険者パーティー、ダンジョンに入る
未だ敵は、出てきません。
次回には、出てくる予定です。
そして、打合せから3日後の朝。
みずきは飼いねこを病院に連れて行って、昼からの参加だ。
みずき以外の3人と犬一匹で、地下迷宮に降りていく。
犬は、月が飼っている。
イチという名前だ。
プードル系の元野良犬で、毛がふさふさだ。
ただ、目が見えないようなのだ。
ふさふさの毛で目が塞がっているから、という訳ではない。
「目の見えない人間は、盲導犬という犬に助けてもらう。
目の見えない犬を人間が助けるのは、当然だ」
こう言って、彼は野良犬だったイチを飼い始めた。
この3人、そしてみずきが仲良くなったのは、イチのお陰だ。
月の日頃の言動に寄らず、優しいことが分かるからだ。
※月という名前は、誤解され易い。
何故か、ずる賢いとか冷徹と思われる。
3人と犬一匹は、洞窟の中を進む。
地下迷宮に住み着いたスライムが一匹、ついて来ている。
以前月が下調べに来た時に、見つけたやつだ。
なぜか、月に懐いている。
彼が地下迷宮に入ると、毎回現れる。
3人の共通点は、異世界からの転移者であることだ。
そして、3人とも異世界では、獣人だった。
満月は元猫族、残る二人は元犬族である。
初パーティーを組むにあたって、戦闘職能紹介をする。
お互いに名前は知っているが、一緒に冒険するのは初めてだったからだ。
円滑な戦いのために、スキル情報を交換して連携を深めるのだ。
まず、三好晴海が自己紹介した。
「ボクは、忍者魔術師。
結構、素早いよ。
攻撃魔法と手裏剣が得意だから、遠距離攻撃は任せてよ」
満月が続いた。
「僕は、魔法剣士だ。
剣の腕は、そこそこだ。
魔法も、そこそこ上位の魔法が使える。
とは言え、魔法は1日1発しか撃てないから、魔法は任せる。
僕はどちらかと言うと、戦わずに勝つのが好きだ。」
柴山ケンタも自己紹介する。
「俺は、良くも悪くもサムライだ。
刀で戦うことしかできねえ。
で、まだ来てねえが、みずきって嬢ちゃんは、どんなもんなんだ?」
月が答える。
「彼女は、多分ラスボスだ。
本人は、気付いてないけどね。
最高レベルの勇者のパーティーでないと、彼女に勝つのは無理だろう」
「ラ、ラスボスゥー?」
「そんなのありー?」
二人は、口々に叫んだ。
「今回みずきは、洞窟探検のピクニックだと思っている。
だから、武器自体持って来ないと思う。
普段の戦闘では頼りにできないが、本当の強敵が出てきたら出番だ。
彼女というより、その取り巻きが倒すことになるけどね」
そして、月は付け足した。
「後は、このイチ。
知っていると思うが、目が見えない犬だ。
僕がいないと、ご飯も食べられない。
今回の冒険は1日で終わらないから、連れてくるしかなかった。
戦闘になったら、退避させてやってほしい」
「「任せときな」」
二人は、親指を突き出しながら口を揃えて言った。
ここで、付いて来ていたスライムが割り込んだ。
「さいごに、ぼくはスラミンだよ。
かいふくまほうが、つかえるよ。
ぼくはわるいスライムじゃないよ」
「お前、冒険に付いて来る気か?」
月は、あきれた口調で言い放った。
実は晴海とケンタは、スラミンとは初対面だ。
ケンタは驚いた様子だ。
「貴様、スライムと知り合いなのか?」
晴海がフォローする。
「でも、回復魔法が使えるなら、良いんじゃない?
大体、喋れるスライムなんて凄いし。
戦闘の時、イチと一緒に退避してくれれば、安心じゃん」
「まあそれも、そうだな」
月も納得したようだ。
サムライ、魔法戦士、忍者魔術師、スライム。
戦術と魔法で戦う構成のパーティーだ。
決して、レベルを上げて物理で殴るパーティではない。
少なくとも、メンバーにラスボスが加わるまでは……