目覚めはビンタ
<転生に成功しました>
魔王と相打ちに倒れ、意識だけの存在になった俺に謎の声が聞こえてきた。
(転生に成功?)
転生の意味はわかってる。
所謂輪廻の理から外れず、新たな命として生を受けること。
次の瞬間、不思議な映像が浮かんできた。
知らない女性が知らない男性を起こすように身体を揺すっている。
声をかけているようだがその声は聞こえない。
これは一体なんだろうか?
そう思っていると、だんだん意識が遠のいていく。
<これより転生を開始します>
この言葉を最後に俺の意識は完全に消えてしまった。
パァン!
乾いた音とともに痛み出す俺の頬。
突然の出来事に慌てて飛び起きる。
痛む頬を摩りながら辺りを見回すと、先程浮かんできた不思議な映像と一致する部屋が見えた。
すると
「いい加減目は覚めた?さっさと着替えて食事にしなさい。」
声のする方に目を向けると先程の映像に映っていた女性が立っていた。
「えと…どちら様ですか…?」
思わず聞くと、女性に両頬を思い切り引っ張られた。
「お姉ちゃんの顔も分からなくなるくらい寝れて良かったわね?まだお姉ちゃんの顔が分からないならもう一度ビンタしてあげようか?」
顔は笑っているが目は笑っていない。
「ごめんなさい、お姉ちゃん。」
俺はちょっと涙目になりながら答えた。
「あんまりゆっくりしてると神託の儀に遅れるよ?」
俺の姉だと名乗る女性は頬を引っ張る手を離してそう言った。
神託の儀?って思ったけど、とりあえず今は聞くのをやめて出されていた服に着替え始めた。