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SIDE:A 真実

 武頼庵(藤谷K介)さまの「第二回初恋・春」企画参加作品です。

 恐れていた日がとうとう来てしまった。

 ほんの少しの希望にすがりついてきたけど、きっと明日、終わりが来る。


 「この寒いのに、1時間も体育館でじっと座ってるなんて、拷問だよな」


 「仕方ないじゃない。去年もやったことでしょ」


 「去年は、風邪ひいても困らなかったからいいけど、受験は卒業式の翌日なんだぞ。

  風邪ひいて受けらんなかったり、熱出して頭はたらかなくなったりしたら、どうしてくれんだよ。

  だいたいさぁ、高校受験も終わんねぇうちに卒業式とか言われてもピンと来ないんだよな」


 「亮ってば文句ばっかり。ほかに言うことないの?」


 「そんなこと言ったって、かったりぃじゃんか」


 「はいはい。みんな思ってても我慢してるんだから」




 さっきから文句ばかり言ってるこいつは、亮といって、私の従弟だ。

 従弟といっても半年しか違わないし、学年も同じ。ずっと一緒にいて、きょうだいみたいに育ってきた。

 亮には、お父さんがいない。なんでも、亮が生まれるよりも前に事故で死んじゃったんだって。

 亮のお母さん──私のお父さんの妹──がお仕事終わって帰ってくるまで、亮は家に帰ってもひとりぼっちだ。保育園に行ってたうちはよかったけど、小学校に入った後は、学校が終わると私のうちに帰ってきてた。私とクラスも一緒だったし。

 私のうちと亮のうちは近所だし、うちのお母さんと亮のお母さんは、とっても仲がいい。お父さんの妹のはずなのに、お母さんの妹みたい。

 私達がもっと小さい頃は、ずっと一緒に遊んでたんだって。私はよく覚えていないけど、弟の真悟が生まれた頃は、お母さんが真悟にかかりっきりだったから、私が寂しがらないようにってことで、おばさんが預かってくれてたそうだ。

 よく覚えていないけど、亮と仲が良かったのは間違いない。結婚の約束をしたこともあった。まあ、もう無効だろうけど。小さい頃のことだし。

 でも、私にとっては大事な思い出だ。あの時の初恋を、私は今でも引きずっているから。今も、亮が好きだから。たぶん、私の片想いだけど。




 「真実はいいよな。ちょっとくらい調子悪くたって、合格間違いなしだもんな。

  俺、結構ギリギリだから、風邪なんかひいたら完全アウトだぜ」


 嫌味だなあ。この台詞だけ聞いたら私が頭良いみたいだけど、本当は逆。亮の方が私よりずっと成績がいい。

 亮が受けるのは進学校で、私が受けるのは底辺校。そりゃ、私の方が楽だよ、悪かったね。

 「ごめんね、バカは風邪ひかなくて。

  もう同じクラスになることもないね、永遠に」


 「9年中6年、クラス一緒だったもんなぁ。そっか。もう同じ高校通わないんだな」


 「せいせいしてるって顔で言わないで。ムカつくから」

 台詞と表情が一致してない。そんなに晴れやかな顔で言わないでよ。私と離れるのがそんなに嬉しいの?


 「もう、試験勉強でお世話になったりもできないんだね」

 いかにも残念って顔して言ってやる。

 定期テストのたびに、勉強会という名の家庭教師をしてもらってきた。

 亮の勉強の邪魔してるって思いはするけど、なんとか亮と同じ高校を受けられるような成績になりたかった。

 サボってたつもりはないし、一生懸命やってたはずなのに、亮の成績との差は開いていく一方で。

 結局、どう頑張っても亮と同じ高校に行くのは無理って諦めた。諦めるしかなかった。一緒にいたいから受ける高校のランク落としてほしいなんて、言えるわけない。

 せっかくいい高校行ける頭があるのに、わざわざレベル落とさせるなんて無理。

 私が追いつくしかなかったのに…。


 「別に、学校違ったって、勉強くらい教えてやるよ」

 呆れたような顔で亮が言う。そんなつもりないくせに。いっつもイライラしながら教えてくれてたじゃない。


 「教科書も試験範囲も違うんだもん、できるわけないじゃない。

  気持ちだけもらっとくよ、ありがと」

 泣いちゃだめだ。亮は、なんにも悪くないんだから。







 「あれ? なんだ、これ?」

 卒業式が終わって教室に戻ると、亮の机の中に手紙が入ってた。差出人は書いてないけど、私にはわかる。きっと、同じクラスの築井(ちくい)さんだ。

 可愛くて、頭が良くて。亮と同じ高校を受ける人。

 前から、亮を見てる目がなんか違うなって思ってた。そうか、やっぱりか。


 「ほら、行ってやんなよ。誰だか知らないけど、勇気を出して手紙書いたんだよ」


 「こんな、誰だかわからない呼び出しにこたえるのか?」

 亮はめんどくさそうに言うけど、築井さん、勇気出したんだよ。

 私にはできなかったことをやってるんだから。

 「ちく…女の子が告白するって、すごい勇気いるんだから。ちゃんと受け止めてあげて」


 「…わ~ったよ」

 すっごくめんどくさそうに、亮は教室を出て行った。

 さすがに追い掛けていって見る気にはなれないし、私はここまでだ。

 長い初恋だったな。

 私はもう、亮について行けない。

 同じ高校に通う築井さんなら、お似合いだよ。


 さよなら、亮。明日からは、ただの従姉になるから。

 せめてキスくらいは、しておきたかったな。そしたら、もう少し繋ぎ止めておけたかな。

 「…あれ?」

 涙が、止まらない。とっくに覚悟してたのに。諦めた、はずなのに。

 今日が卒業式でよかった。泣いてても誰も変に思わないから。

 しばらく泣いて、それから1人で帰った。


 受験が終わって亮が会いに来てくれたけど、合わせる顔がなくて部屋に閉じこもって。

 亮に会うのが怖い。筑井さんとどうなったのか、聞くのが。

 ゴールデンウイークが過ぎて、亮が築井さんと付き合い始めたって噂を聞いた。

 SIDE:Bは、本日午後1時にアップします。

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