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ブラザーシスター★コンプレックス  作者: 鉄筋農家
第一章 シンギタイ村編
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№02 『目覚めの時』


 暖かな日差しに起こされ、もう仕事の時間かと思い俺は目を覚ます。日の明かりで目覚められるのは俺の唯一の自慢なのだが、気持ちよく起きれるかと言ったらそうではない。


 睡魔との格闘を終え、脳が覚醒し始める。


 それにしても何だかリアルな夢だったな。交通事故にあって、死んだと思ったら『世界の理』とかいう神様に会う、そんな夢だ。何となく、でもハッキリと記憶に残っている。


 しかし、夢なんかを思い出して寝そべっている暇はない。現在の時間は早朝5時、出勤までおおよそ30分だ。

 二度寝をしてしまうと寝坊は確定、無理やり寝ぼけた頭を叩き起こし、直ぐ手の届く辺りに置いてある眼鏡を手探りで探す、が―――


 辺りには何もない。おかしいな、この動作をもう何十年もやってきたから、外すはずないんだけど。眩しい朝日の中ようやく開くようになった目で辺りを見渡すと、どうも見慣れない景色がそこにはあった。


 木材と煉瓦を組み合わせて作られたであろう、日本では考えられない粗末な家の造りに、工場では作られていないであろう、いかにもオーダーメイドの家具類。広さだけは六畳半あった俺の部屋と同じぐらいだが明らかに違う。


 あれ? 模様替えしたっけな、俺の部屋…… って違うな、ここはどこだ?


 起き上がろうと力を入れるがどうも、上手く力が入らない。それどころか、身体の感覚が明らかにおかしい。


「いや、まさかな……」


 恐る恐る手のひらを目の前まで持ってきてようやっと自信に起きた異変に気づいた。


 目に写るそれは小さく柔らかそうな手、まるで赤ちゃんの手だった。


 身体中、触れられる部分を手当たり次第確認する。頭に顔に胸、お腹、足―――― 冗談だろ? 俺、小さくなってる?


「あら、ウォルカ起きたの?」


 声がする方へと、視線を向ける。再び目に写る光景に驚いた。


 声の主の容姿がブロンドのウェーブかかった髪に整った顔、そして豊満な胸、外国の方にしてもちょっと違うような、取り合えず会ったこともない見たこともない美人だからだ。


 それに、聞き慣れない言葉。分かることは日本人では無いってことだけだろう。


 彼女は俺に近づき、細く白い腕で軽々と持ち上げられると華奢な身体とは正反対の立派で柔らかい豊満な胸に押し潰され、抱き抱えられる。


「こんな所で昼寝してたら風邪引くわよ? こっちへいらっしゃい」


 どうにか埋もれた頭を動かしてもう一度顔を拝む。見た目は外人、英語でもフランス語でも無い、話す言葉は一切聞いたこと無い言語でさっきから何言っているか分からない。 


 一体ここはどこなのだ。分かる人が居るならどうか答えてほしい。完全にヘルプミー状態だ。


 ここが、夢の続きなのか。はたまたここが現実か、姿は赤子で日本ではない場所、もしくは地球ですら無い。


 もう一度寝れば、夢から覚めるのかな……


 考えることを止めた俺は、いい臭いがする胸に顔を埋めたまま再び目を閉じて眠りについた。



*****



 この状況を理解するのに一月ほど掛かった。そして、分かったこと――――

 ここは疑うこともない現実であり、俺は新たな命として転生し、俺が知っている地球とは違う。まぁ異世界という所だろう。



 そして、俺は一歳になるかならないかの赤子。最初に出会った綺麗な女性はどうやら俺の母(名前はエリス)らしく、短髪でいかつい目付きの男は父(名前はローゼン)らしい。

 二人は共に会話をし、共に食べ、共に寝ている事からそれ以外考えられない。もし、夫婦ではないとすればこの異世界は俺の常識を真っ向から破壊することになる。


そして、二人の子であろう俺の名は『ウォルカ』。


 発音が難しいがまぁ、慣れだ。徐々にこちらの世界の言葉も覚えつつある。何せ毎日母が話しかけてくれるのだ。

 ある日には物を持って名前を教えてくれたり、今は冬だとか、空が暗いから夜だとか、俺は赤子らしく頷いたりするだけなのだがそれでもしっかりと頭には入っていた。こうやって言葉というものは覚えるものなのだな。


 もしかして生まれ変わったこの状況を、兄弟(みんな)も何処かで経験しているのかな……

世界の理の言葉を思い出す。


『本当に産まれるはずだった世界で、()()()()()()()()()()()()()()しまいますが、あちらの世界で培った絆はどこかで必ず繋がります。』


 なるほど、ここが本当に兄弟(おれたち)が産まれるはずだった世界、か………


 朱音は大丈夫だとして、翠や優黄はちゃんとこの状況に理解しているだろうか。翠は人と話すことがあまり得意では無かったし、優黄はまだ8歳になったばかりだ。

 無事であることを祈るしかないけど。


 この先の不安を胸に、俺は夜空に浮かぶ四つの月をただ眺めた。

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