休題1.都会とハル
信号が変わる――。
向かい側で信号を待っている人、こちら側で信号を待っている人、それぞれが歩き出す。
私は、この瞬間に出会う度、都会が嫌になる。
上手く流れに乗れず、後ろからぶつかられたり、向かいから来る人とぶつかったり。
人が多いせいなのか、それともどこも同じようなものなのか。
とにかくここは居心地が悪いのだ。
目的地に着くまで、一体どれだけの人に出会うだろう。
その中で、知っている人は何人いるだろう。
そう考えると、みんなお互いを知らず無関心の中で生きている。
居心地が悪いのはきっとこれのせいだ。
駅に着いた。
いつものように切符を買いホームへ向かう。
ホームには、たくさんの観光ポスター。
何かの観光キャンペーンだろうか。地方の田舎街のポスターが貼られている。
今、私は都会で何不自由なく暮らしている。
でも、その時そのポスターがなぜか輝いて見えた……。
電車がけたたましい音を立ててホームに滑り込む。
ラッシュの時間の電車は今日も満員だ。
私は、この瞬間に出会う度、都会が嫌になる。
なんとか乗り込んだ電車の窓から見えたポスターはまだ輝いていた――。