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「菅野の朝」

パーティー翌日。

菅野にとんでもない変化が起きてしまっています。

ですが、彼は持ち前の性格を活かし……?


※約6,000字程度です。

※始めだけ全視点で、他は関西弁です♪

↑やはり菅野という人間を描きやすいので……。

2013年7月15日……

???

全視点(菅野中心)



 藍竜組で最も腕のたつ槍使いであり、裾野を除けば2番目とも言われる彼の筋力に誰もが驚くであろう。菅野の持つ槍は成人男性以上とも言われる程の重さ。

それを軽々と振り回し、繰り出される一撃は重々しく、まともに受ければ腕が痺れるか、酷ければ骨が折れてしまうだろう。

しかしもう1つ……彼には藍竜組1番のものがあった。

それは、頭の…………悪さだ。



2013年7月15日……

???

菅野


 俺はまずいつもと違う布団の感触に違和感を覚えたんよ。

(なんか……ちゃうなぁ……なんやろ?)

とりあえず、もぞもぞと動きまわってみたんやけど、めっちゃ布団の感触が近い! とにかく近いんや!

なに? めっちゃふわふわを肌に感じるんやけど。

高級すぎてるのか、そうやないなら薄着なんかなぁ? 夏やし。


せやけどまだ眠いし、起きたいし。

どっちやねん、菅野!!

……つまらんな。


 俺はその2人と戦っているんやけど、とりあえず間を取って目だけを開けることにしたんや。

中々賢いと思うねんけど、どうや?

 ほんで、見慣れない白い天井に同じ色の丸い照明。

ちょっと目を移せば、全体的に真っ黒い着替えがあってなぁ……。

隣には黒い狙撃銃!?

(あれ? この狙撃銃……銃刀? やっけ?仕込んであるなぁ……)

俺は狙撃銃に取ろうとしたんやけど、その腕がこの健康的すぎる俺の自慢の浅黒い肌とは全然ちゃうほんまに真っ白いことに思わず「うぉっ!!」とか言ってん。

「なんやこの細っこ~くて白い腕!! 俺、もしかして女になったん……? でも、声は普通に男にもとれる……って、待って待って。背中もなんか……毛みたいなんが当ってこそばゆい。……い、一旦半分くらい起き上がっとく? ……おいおい、誰に聞いとんねん。あ! 裾野~?」

俺は半身だけ起きて、居る筈の裾野を探したんやけど、そこには黒いカーテン、姿見、タンス等しか無いんやけど。なんやったっけなぁ……漢字3文字くらいのやつ。それをしすぎたんとちゃう?

言い換えるなら、カタカナやと7文字? めっちゃ物少ない人のこと。知らんけど。

あ~、あとは反対側に同じベッドがあることくらい?


「裾野……居らんの?」

俺はそう言いながら、ベッドの中で自分の腕や腹を触って自分のものかを確かめてみてん。

だって心配やん? 自慢の筋肉やし。

「……俺のや。この筋肉のつき具合は完全に俺の。それにしても、あれや。さっきから服の感触がせぇへんのやけど?」

と、そっと中を見ると自分でも驚くくらいの「はぁ!?」という裏返った声が出てん!

まぁ布団の中はシーツと白い肌……裸やってん。

「はぁ……裸で寝るとかありえへん。そんなことしてみぃや? 裾野に襲われるで。って、ちゃうちゃう! でも、ここのサイズは酷いもんやなぁ。同情しようもないで」

と、”象徴”をじぃっと見つめながら言っている自分がもう恥ずかしくって、すぅかり熱くなった頬を触ってしまってん。

(下ネタ苦手やのに、よく言えたな……。まぁそれほど酷いんよ……さて、まずは服を着るところからスタートやな)

とか思いながら、筋肉の分無理かな~って思ってたんやけど、服を着られたんよ!

せやけど、やっぱ気になるのは後ろにある黒い髪やな。

「これちょっと乱れてるけど、しっかり結んであるやんな。ふぅん、これがこそばゆいヤツの原因やな」

俺はさらっさらの髪の毛をいじりながら、いつもより視界が低いのが気になってはいるんやけど、そのままふらふらと洗面台の前に来たんやけど、何この顔?

 まずひとーつ!

肌真っ白。

ふたーつ!

髪真っ黒。

みーっつ!

俺の方が顔小さいし~。とか思いながら、口をイーッと開いてみる。

憎たらしさ何百倍やな。ムカつく顔~!

…………あ! よーっつ!

俺の方が目大きいやんな~?

今は1人やけど、裾野がいたら絶対頷いてくれるで?


「……ほんで、この顔の正体は黒河やな。今度会うまでに裾野にサイズをチクっておかないとあかんな。だって、あいつほんま嫌いやも~ん……でもまぁ顔はこいつやけど、意外と表情は俺やな。いーっ!」

それから簡単に洗顔とかパパッとやって、またベッドに戻ってのんびり。

これがいつもの朝やな。とか思ってたんやけど、

――ぐ~~~ぅ?

という腹時計の鳴る音が聞こえて、ハッと立ち上がってん。

(そうや。いつもは裾野が作ってくれるけど、今はちゃうやんな。なにかしらあるや…………え?)

はーい! 他人の家の冷蔵庫ターイム!

ほんで冷蔵庫を開けたんやけど?

入っていた物:適当に盛られたサラダ、ヨーグルト、氷室に氷。

以上。

それと台所の銀色の数段の棚の上に、クロワッサンがわんさか。

以上。

「料理も出来へんとかもっと嫌いになるで」

と、文句を言いながらも腹ごしらえをしたんやけど、歯磨きをしようと思ったら俺より歯並びが良くてなんかムカついてん。

とりあえず、廊下に出てみよか~?


 廊下めっちゃ質素。

なんぼかかってんの? 数万で出来そうやで、ほんま。

とか思ってたら、藤堂からすとバッタリや。

初めての”試練”! めっちゃドキドキするけど、あいつになりすまさないとあかんやんな?

え? ウザくて、暗くて、ノリ悪くて、関東弁で、変人。変人以外は正反対なんやけど~。

「お、おはようございます……藤堂さん」

俺はなるべく関東の発音に近づけたんやけど、どうしてもイントネーションは関西のままやな。

やっぱ、なんちゃら縄……もうええわ。そう簡単にはいかんな~って意味なんやけど。

「……月道は出身地を変えたのかな~。それとも、誰かに影響されたかな~」

藤堂は意外にも本当にこそばゆそうに後頭部をわしゃわしゃと掻きむしってん。

ほんま適当やな。ちゃんと人を見いや。

「えっと」

「多分、そのしゃべり方と立ち方。菅野か……佐藤永吉かな」

「っ……!」

俺は気付いたら一歩引いててん!

だってちょっと話しただけやし、立ち方までガッツリ見る!?

(情報屋相手じゃ無理そうやなぁ)

と、俺特有の苦笑いが出てしまってん。こりゃバレるで。

「笑い方からして菅野、何しに来たのかな?」

藤堂は肩に何羽も烏を乗せて、腕に巻き付けてあるキーボードの上から緑色の画面が出てて、なんかそっから探してたみたいやで。

情報屋はやっぱ強いなぁ。最前線で戦う殺し屋には無いものがあるやんな?

なんて言えばええのかわからんけどな。

「ちゃうねん。朝起きたらこいつになっとってな?」

「うんうん。漫画みたいだね」

「ちゃんと聞けや!」

「……短気。データ通りだ」

「あんなぁ藤堂。俺はな――」

「はいはい。月道の仕事は今キャンセルしてあげたから、あー待ってね、昨日のあのピンクの飲み物以外は口にしてないんだよね?」

「せやで」

「じゃあ、それを調べればわかるんだね~。……おっと」

「おっと?」

「治療薬無しかぁ……これはキツいな。あー……画面消えた~。ごめん、あとで連絡入れてあげるから。またね~」

と、藤堂は何の説明もせんと烏にエサをやりながら走ってって、ちょっとして藤堂の方を見たら、曲がり角が無いのに姿は消えていてん。

(……消えた!?片桐組っておかしなヤツしかおらんのかいな)


 俺はそう思いながら、また廊下をふらふらとしとってん。

そしたらな、歩いているのに、どんどん知らん男に囲まれて……ほんで10人くらいになってん。

あのRPGみたいやねんけど、仲間ちゃう。

ニュースでたまに見る、芸能人囲んでるアレや。そっくりや。

そいつらはみんな、ニヤニヤしながら俺のことを見下ろしてきて、すっごい胸くそ悪い感じがしてん。

「黒河エース。拷問されてから――できなくなったって、本当ですかぁ~?」

「拷問されて嬉しそうにしていたって噂ですけど~?」

「形だけの筈だったらしかったですけど、どうなってるんすか~?」

「むしろ俺と今夜お願いしますぅ~!」


(やかましや……下ネタだらけやんか。それに拷問って何のこと?裾野は何にも言ってなかった筈やけど)

と、とりあえずあいつっぽく冷静キャラをしてたんやけど、こんなに言われたらもう限界や。

「あぁもう!! 拷問やら下ネタやらほんっまにやかましや!! 少しは黙れへんの!?」

という俺の声に男たちは完全に固まってん。

よく考えたら、あいつ関西弁話せないんとちゃう?

…………これ、もしかして俺がやらかした?

戻ったあと、めっちゃいじられるんちゃう? ……別にええか。

 

「月道、部屋に戻ろう。」

こんな固まった空気をたった一言で動かしたのは、見たことあるやつ!

多分、後醍醐を殺そうとした時に居たヤツかなぁ……。

まぁそいつは男たちを無視しぐいぐいと腕を引き、あいつの部屋に戻ってん。


 部屋に戻るとすぐに慣れた風にベッドに寝転がってん。

(もしかして、こいつ……)

と、疑いの目を向けると、そいつはガバッと起き上がり、

「菅野さん!」

とか言うてん。てか会ってすぐにバレたし、なんとかして欲しそうに見つめてくる男に、俺は2,3回ゆっくりまばたきしてたんや。

「なんや?」

「俺、月道の元相棒の佐藤永吉です! あの、あいつとコンビを解消してから変わってしまったみたいで、前よりも更に高嶺の花になっていってもう、俺はどうしたら……!」

「あんなぁ……佐藤やっけ? まず、何で解消したん?」


「それは話すと長くなりますが、かいつまんで話しますと……月道と俺がやるはずだった仕事を、月道が他の仕事を優先させて勝手に辞退して、生け捕り命令の出ていた俺と元エーススナイパーさんが行ったんですけど、月道がその依頼人を逃がしたんです! で、なんとか月道だけ捕まえて形だけの拷問をしたら、依頼人を庇ったんです! それで拷問死説が囁かれるくらい傷も酷くって、昏睡状態にもなったんですけど、自分は最悪死んでもいいっていうそういう月道の考え方が、俺には意味不明で! それで解消っす!」

と、佐藤は早口でまくし立てるように言うから、ほとんど最後の方しか聞き取れなかったで。

とりあえず何回か頷いたけどな。


(解消の理由は簡単に言うと、考え方の違い? あー……解消して正解や。って、それじゃあかんな)

菅野はそう思いつつ、首をかしげたりしながら次の言葉を待った。

「……ですよね。はぁ……あの! そうじゃなくて、最近鷹階、いや、スナイパーたちの態度が悪くて悪くて、聞いてみたら拷問の話が違う方向に一人歩きしてしまって、月道の指導にとにかく従わないんです! ……俺からあいつには言えませんけど、本当はいいやつですから! なんとかしてください!」

と、佐藤はまたしても早口で言ってきて、今度はベッドから降りて土下座までしだしてん!!

(ええやつなら、俺のことをあんな風に言わへんっての!! ……まぁ拷問の話はたしかに、完全に違う方向になっとるもんなぁ。せやけど、たしか裾野が言うには片桐組のスナイパーって、100人くらい居た気がすんねんけど? 友だち100人は嬉しいけど、部下100人は嫌やなぁ)

と、自分にもし100人の部下がいたらという想像に飛んでいきそうになったんやけど、佐藤が土下座してるから、

「わかった。やってみるで」

と、まぁここは男らしさを魅せつけてみたんやけど、そしたら佐藤は感激の涙を流し、

「ありがとうございます!」

と、何度も床に頭を打ちつけながら言ってん。

 そして佐藤がセッティングをするから、と居なくなった後1人部屋の中で思うことといえばな、

(あいつほんまクソやな。部下に当たったってしゃあないのに。でも、入れ替わった今なら好き勝手できるからなぁ~)

という、ちょっと嫌な感じも混じったアレやな。

部下が可哀想やから、悪いようにはせえへんけど。



数時間後……

片桐組 鷹階入り口付近

菅野中心



 総勢100人の屈強なスナイパーたちが自分の目の前にズラリと列を揃えて並んでる。

これは佐藤がエースソルジャー権限ってやつで号令をかけて、特別に収集してくれているんやって。

すごない!? ……藍竜組じゃありえへん。

とか思うと、やっぱり苦笑いをしてまうんやけど、部下は表情を変えへん。関東やなぁ。

 何人かは噂のことを思い出してるのか、歯ぎしりをしたり気味の悪い笑顔を浮かべているヤツも居たで。

せやけど、俺が決めたこと。

あいつがもっとクソ野郎にならへん為に、ちょっと良い人ぶっとく?

ま、俺のおかげでやけど。

「みんなに聞いてほしい! 俺の拷問の話、あれはただの形だけのものです!! だから、何にもされてないし、ちょっと怒られただけです! それと最近の俺のことだけど、ちょっと気持ちの整理がつかなくて、当たってただけです! 本当にごめんなさい!!」

と、俺が頭を深々と下げると、部下からはどよめきが起こってん。

それをよく聞いてみたら、「就任以来初めて!」とか「あのエースが!?」とか言ってるから、めっちゃ厳しくやってるんやろうなぁ。

あんまり厳しいと逃げ出しそうやけど。

 せやけど、部下のどよめきはだんだん拍手に変わって、俺が頭をあげると全員が狙撃銃を空高くまっすぐあげていた。

(すごい……! エーススナイパー権限、おそるべしやな)

と、その忠誠心に感動した俺が、

「俺にこれからも付いて来てくれるかな~?」

と、大声で呼びかけると、部下からは「もちろんです、エース!!」という圧倒されそうなくらいの重い声が響き渡ってん。



 せやけど部屋に戻ったらもう、慣れない関東の言葉を話した自分に疲れてベッドにダイブしてん。

「ふぅ~……疲れた。人を演じるのは”あの日”以来やから緊張した~」

俺は森のような香りのする枕を抱きしめ、頬をすりすりとし、何度もゴロゴロと転がったんや。

めっちゃ良い香り。わかっとるなぁ、黒 河 さ ん?

 あ、あの日のことは……いつか話す。約束やで!

そしたら黒河のスマフォがバイブ音と共に尻ポケットの中で震えるので、嫌気を感じつつも藤堂からの着信と確認してから、電話に出た。

「やぁ、すごい演説だったよ~。あ、そうそう。入れ替わりの治療薬が無いことは言った気がするけど、治し方がわかったんだ!」

と、気だるさと快活さが混じった声で話す藤堂は、鼻歌まじりにわざと解答を焦らしてきてん。

ちょっとムカつく。適当でええけど。

「もうはよ言えや!!」

(れん)より短気っと。治し方はただ1つ。あ、今わかっている時点だからね! …………それは、入れ替わった者同士が――」

その先を聞いた俺は、ほぼ衝動的に通話を切ってしまってん。



「俺は死んでも黒河と……裾野でも嫌やのに? あーもーいっそのことあの時の科学者風の執事探しだして殺してやりたいなぁ……いや待つんだ菅野。いくら俺の自慢の筋力があっても月道の身体やし、武器は使い慣れない狙撃銃。普通のヤツやなかったら、逆に殺されるやんな……? そうやんな!? ……マジか」

俺は1人で黒河のベッドの上で頭を抱えてしまってん。

緊急にも関わらず、読了いただきましてありがとうございます!

資格試験には無事合格致しまして、後ほど証明書が届きます。楽しみです。


次回は月道視点です。

投稿日は、今週の土曜日です。

お楽しみに♪

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