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episode3

 佳奈からメッセージが来て、数日が経った。あたしが基本的に生活をしている部屋は、地球と同じ時間の流れだから、多分数日で合っていると思う。

 連載小説の最新話を書き終わって保存しホームに戻ると、メッセージが来ていた。おそるおそる、それをクリックしてみる。差出人の名前は、予想通り『カナ』だった。


「件名:佳奈です

 本文:

 深月、このメッセージを読んでいるんだったら返信して。

 本当に心配だよ。

 もし、このメッセージを読んでいるのが深月なら、私はこのメッセージでだけでもあなたとつながりたい。深月が死んじゃって、本当に悲しいんだよ。

 それに、誰も深月のことを覚えてない。私にもよく分からないけど、深月のこと、誰も覚えてないんだよ。

 お願い、深月。

 私は深月と、もう一度話がしたい。」


 あたしは、泣きそうになった。ごめんね、ごめんね佳奈。あたしが、ドジだから。ドジだから死んじゃったんだ。

 ごめんね。あたしだって悲しいよ。もう一度話がしたいよ。でもね、だめなの。

 あたしはもう死んじゃったから、佳奈とは話せないんだよ。ごめんね。ほんとにごめんね。佳奈、ごめん。

 みんながあたしのことを覚えていないのは、あたしがなろうで活動を続けたいって願ったから。教えてあげたいよ、佳奈。あたしね、今とっても幸せなんだ。

 でもね、佳奈と話が出来ないのはさびしいよ。あたしも、佳奈と同じ。さびしいんだよ。


 だけどさ、あたしが『小説家になろうここ』で小説を書くためには、佳奈には返事をしちゃいけないってことになってるんだ。一度だけでも、その事実を伝えたい。そう思うけど、その願いは叶わないんだよね~。って、なんかネタ思い浮かんできたあああ! キタアアアアァァァっ!

 これは書かなければ! つーわけで、ごめんよ佳奈。あたしは佳奈のことは大好きだけど、でもそれ以上に小説はあたしにとってめちゃくちゃ大事なものなんだ!

 死んでも小説書いて暮らしたいもんね! ……ああ、でも。


「生きてる間に、書籍化したかったなあ……」


 天国ここでも本とか作ってんのかな? 天使さんに頼めば、もしかしたら書籍化してくれるかも? あ、でもイラストも欲しいな。あたしは絵が下手だから。

 佳奈は絵、描くの上手かったんだけどなー……。佳奈に頼めたら良いけど、そんなの無理だし。くそぅっ、無念だよ!

 あーもう、なんであたしってばこんなドジな子に生まれてきちゃったんだろうっ。ほんとに、このドジさを恨むよ。そのせいで死んだんだからね!

 生きてたら、いくらでも小説が書けたし(それは死んだ今の方が書けたかもしれないけど)いくらでも佳奈と話せたしいくらでも……。もしかしたら、書籍化とかできたかもしんないのにいいいい!

 書籍化のお話が来なくても、自分で自分用くらいの本は作れたかもしれないのに! あああああっ!

 バカ! あたしのバカ! もっと早く思いついていれば良かったのにっ、そしたら佳奈にイラスト描いてもらって、本みたいにできたかもしれないのにぃぃいいぃ……。

 でも、それは叶わないんだよね。あたしは死んじゃったから。あーあ、死ななかったらなあ。死ななかったら、夢が叶ったかもしれなかったのに。


 ……いや、待てよ。もし、仮に天国でなろうをやり続けて更新してて、書籍化の話来たらどうすんの? 断るのめちゃくちゃもったいないんですけど。

 でも、絶対編集者さんとか? には会わなきゃだろうし。佳奈に代理で行ってもらうとか? いや、そもそも佳奈に連絡取れないってさっきから言ってるじゃん。

 オーノー! 手詰まり! 新規作成ゲーム! ……って、ソリティアかよ。そして、なんでこんなに今日のあたしはテンションが高いんだ……。


 あたしはパソコンに向き直って、もう一度そのメッセージを読み返す。そして、小さく「ごめんね」とつぶやいて、それを消した。

 まじでごめん。佳奈、あたしを殴ってくれ。ってそれも無理か。あたしアホだな。

 天国来ちゃったことで頭がいかれたようです。お母さん、こんな娘でごめんよ。

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