表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 瀬川潮

 それはまるで、宮廷全体が……いえ、世界を押し包む夜全体が笑ったようでした。

「道化めっ!」

 謀反に走った親衛隊騎士団の筆頭隊長はそう吐き捨てると、深々と突き刺した剣を引き抜くのです。剣先を滴り落ちる血の雫の先には、いま心臓を貫いたばかりの王の真っ赤な胸板があるだけです。もっとも、替え玉だった道化の胸板でしたが。

「やりおったな、やりおったな。これからは剣の時代じゃ。貨幣は謀り心は乾き、棍棒は猛威を振るうであろう」

「くっ」

 舌打ちして親衛隊長は振り向きます。広間の奥にひっそりと佇み不吉な預言をした道化は王の姿に戻り、大きな笑い声と共に闇の霧のように姿が広がって夜にまぎれてしまったのです。

 残された者の中で、錯綜した王妃がナイフを自らの胸に突き立て息を引き取るのでした。


「それからどうしたの?」

 ベッドで布団に包まる少女はそう言って、添い寝する女性に言った。

「口にはされません。物語はここでお終い」

 ただ、親衛隊長は王を追って夜に紛れたと聞きます、と女性。

「それは仕方ないけど、それじゃ貴方は誰?」

 少女に聞かれ、寂しそうに微笑する。

「さあ? もともと口にされない存在です」



   おしまい

 ふらっと、瀨川です。


 他サイトのタイトル競作に出展した旧作品です。やや改稿しています。

 動と静のコンビネーション、豊かさと喪失感をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ