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俺、選ばれちゃいました。

今からおよそ1000年ほど前、世界に異変が起こりました。

世界に 穴 が開くようになったのです。

穴は不意に、そして生き物がいない場所であればどこにでも現れました。

そしてその穴はおそらく異世界に繋がっており、たまにこの世界には存在しない色々なものが落ちてきました。


そして、その中には人も含まれていました。


その多くが落ちてくる途中で死んでしまっていましたが、中には生きてこの世界にたどり着く人たちもいました。

この世界に元々住んでいた人々は共通点のほうが少ないような彼らをある者たちは保護し、またある者たちは迫害しました。

その結果、ある地域では共存したことで異世界人との混血化が進み、またある地域では純血であることを至高とし、異世界人の血を嫌いました。


そして今から500年前。

異世界の知識や技術によって発展した世界に異変が現れました。

特大の穴がこの世界の最西端の国の上に現れ、そこから25万人の魔族と名乗る人々が現れたのです。

彼らは降り立ったその国を瞬く間に武力によって奪い、世界に宣戦布告しました。


この世界は我々のものとする。

抗う者は力で排除する、と。


魔族と名乗る彼らは魔法という不思議な力を持ち、強靭な肉体を持つ獣人やその血を持つ亜人たちでさえ太刀打ちできませんでした。

その上、魔法を操る力、つまり魔力を持つ化け物が穴から出現するようになりました。

人々はその化け物を魔物と呼び、魔物と魔族、その両方の危険に晒される事となりました。


それから50年ほど経った頃。

世界の半分以上が魔族の手に落ち、人々は徐々に戦意を失っていました。

そんな時、今度は最東端の国の上に穴が開きました。


その穴から現れたのは、後に十二聖獣と呼ばれることとなる獣たちでした。


彼らは世界に散らばり、異なる種族の人間を12人選びこう伝えました。


我らは神々に創られし者なり。

汝らが彼の者らに抗う術を欲するなら我らが与えよう、と。 


選ばれし12人は聖獣たちと契約を結び聖獣師団という兵団を結成し、世界に平和を取り戻すべく、魔族や魔物を倒し続けました。


それから3年後、遂に魔族の王を討ち、魔族を降伏させることができました。

聖獣師団の12人は彼らに恩情を与え、人々は魔族と手をとり共存する道を選びました。

その後12人は各地に散らばり、英雄として国を治めたり、魔族と人間の間を取り持ったり、依然穴から現れる魔物退治のために世界を飛び回りました。






そして今。

魔族の王、魔王の手により再び世界に混乱が訪れました。




「というわけで、僕と契約して聖獣師になってよ!」

「母さん! 変なウサギが庭にいるんだけど!」



どういうことなんだ・・・。

朝起きて顔を洗いに外に出たら、雄牛ぐらいの大きさの白いウサギがいた。

魔物かと思ったら急に十二聖獣師団の話を始め、最終的に聖獣師に勧誘されていた。


「どうしたの、ルクスってあら? かわいいウサギさんだこと」

「かわいくねぇよ!」

「ムッ、君は失礼だね。 そこは嘘でもかわいいって言うのが騎士ってもんじゃないの?」

「何で俺が騎士だって知ってんだよ」

「それは、ほら。 僕は一応聖獣だから」

「お前が・・・聖獣、だと?」


おかしい。

確かに今、聖獣師は7人しかいない。

既に生まれている聖獣は3体いるらしいからこいつがそれでも問題はない。

ただ、今まで生まれた聖獣の中にウサギなんていなかったはずだ。


「ウサギの聖獣なんて聞いたことないんだが?」

「それはあれだよ。 神様もマンネリ化を防ぎたかったんじゃないの?」

「そんな理由信じられるかよ!」

「でも、聖獣をどんな形にするかはダーツで決めてるし」

「えっ」

「その的を僕を創る前に変えたらしいよ?」


神様って意外と適当なのか?


「僕の前はサイで、その前はシャチだよ。 今までいなかったでしょ?」

「た、確かに」


十二聖獣といえば、イルカ、ウシ、ウマ、オオカミ、キツネ、コウモリ、ゴリラ、ゾウ、トラ、ヒツジ、ムササビ、ライオンの初代の12体がもっとも有名で国旗なんかにもなっている。

ちなみに、聖獣師が亡くなると聖獣は天界に戻り、新たな聖獣がどこかに生まれる。

また、こいつが言うように新しい種の聖獣が生まれることもある。

今までに確認されている聖獣は他にアシカ、アルマジロ、キリン、クマ、タヌキ、トナカイ、ネコである。

しかし歴代の聖獣師の強さは初代の12種族が優れており、その他の聖獣はあまりぱっとしない。

というか、ぶっちゃけハズレ扱いされている。


また、この世界では生まれた瞬間に12いる神々の内1柱から祝福され、加護を得る。

そして人種が同じなら基本的に加護も同じになるため、混血化が進んだ現在でも人種は12に固定されている。

そして聖獣師は各種族の内に1人のみ、つまりヒュム神の祝福を得ているヒュム族に既に聖獣師がいればヒュム族から新たに選ばれることはない。

よって新たな聖獣師が選ばれた際、どの聖獣に選ばれたかでその種族のムードは一変する。

人気の聖獣は魔王と直接戦ったとされる聖獣師を選んだウシ、オオカミ、トラ、ライオンである。

逆に魔族に騙され危険を招いたヒツジや、その聖獣師が凶悪な事件を起こしたことがあるクマやネコはあまり歓迎されない。

当然、新種も実力が未知のため微妙な空気になる。

実際初代以外の聖獣が現れた際も強いのか、とかそもそも聖獣なのかと問題になったらしい。


「で、でも俺は何で選ばれたんだ? 自分で言うのもあれだが騎士団の中でも実力は底辺だぞ?」

「確かにそうみたいだね。 剣術と槍術は下の下、弓術と馬術は下の中、腕力は中の下、魔法の適正は無し。 ただ持久力だけは聖獣師を除けば一番のようだね」


うちの騎士団長は7人の内の1人、ウマに選ばれた聖獣師のヤード様である。

聖獣師になると身体能力がずば抜けて高くなる上、元々槍術の天才だったこともあり名実ともに最強の騎士とされている。


「と、とにかく俺を選ぶ理由がないとなればお前が聖獣な訳がない!」

「あるよ、当然ね」

「な、何だよ。 その理由って」

「運がいい」

「母さん、夕飯はウサギ料理にしようか?」

「ルクス、ちゃんと話を聞いてあげなさい」

「そうだよ! いいかい? 僕は生まれてすぐにビビッときたんだ。 運がいい人をパートナーにしよう、ってね」


聖獣によって契約者を選ぶ方法は異なる。

強さや優しさ、賢さなどを基準にして候補者を選び、その前に現れる。

中には自分に勝てたら契約、なんて聖獣もいたらしいけど基本的には聖獣が勝手に選ぶ。

選ばれた人間が拒否すればその聖獣は天に還り、新たな候補者が現れるまで待つそうだ。


が、しかし


「運のよさ、ってお前」

「僕は知ってるんだよ? 君は生まれてすぐに奇病にかかったけど、たまたま町にその病気を治せる医者が来ていたでしょ?」

「確かにそうだねぇ」


母さんが言うならそうらしい。


「魔物に襲われそうになった時もたまたま通りかかった傭兵たちに助けられたり、自分だけ食中りにならなかったり、財布を落としても誰かが届けてくれたり」

「お、おう」


確かに思い当たる節があり過ぎる。


「何より君が騎士になれたのも運が良かったからでしょ?」

「・・・ああ。 その通りだとも」


俺が騎士に志願できる年になる直前、凶悪な魔物が群れを引き連れて穴から出現した。

そいつらとの戦闘によって騎士団は人員が激減してしまい、その穴を埋めるため採用の基準が例年になく甘くなっていた。

その中でも最底辺で採用されたのが何を隠そうこの俺である。


「運も実力の内って言うでしょ? つまり君がディオプトリ族最強の運の持ち主だってことさ」

「そうかよ。 で、俺を歴代最弱の聖獣師にしてやろう、ってことか?」

「そうは言ってないよ。 君は父親に憧れて騎士になったみたいだけど、騎士には向いてなかっただけ。 他の職業にしてればこうはならなかったんだよ」

「それはっ! 気づいてたけどよ・・・。 確か、聖獣師には商人や医者もいたんだっけ?」

「そう。 聖獣師は必ずしも戦うために存在するわけじゃない。 実際、初代の聖獣師のうち4人は戦闘に直接参加してないしね」


確か鍛冶師とか占い師とかもいたっけ。


「ん? てことは俺に一番向いてる仕事がお前には分かる、ってことか?」

「当然さ」

「で、何なんだ?」

「郵便局員に決まってるじゃないか」

「焼くのか、煮るのか、それが問題だな」

「今日の夕飯は焼き魚だよ」

「いい加減食べるっていう方向性はやめてくれるかな? だって君は運が良くて持久力があるんだよ? 安全に手紙や荷物を運べて、しかもいつまでも走って手紙を届けられる。 僕が採用担当者ならすぐに働いてほしいけどなー」


同僚にもそう茶化された事がある、というのをこいつは知っているのか?


「で、何? ウサギの郵便屋さんでも作れっての?」

「なるほど。 新しく開業する気だね?」

「じゃあ、母さんは受付を「違ぇよ!」」

「まあ、その辺は置いといてさ、とりあえず契約しよ? 少なくともデメリットは無いはずだよ」

「1つは確実にあんだろうがよ・・・」


聖獣師は共通して獣化という魔法が使える。

そして使用すると契約した聖獣の特徴が反映された姿になる。

つまり・・・。


「バニーちゃんの格好になるなんて嫌に決まってんだろ!」

「・・・あんた、あの店にいったんだね?」


しまった! 最近できたお店に行ったのが母さんにばれてしまった!


「いや、仲間内でさ、怖いもの見たさで、さ?」

「他のものが見たかったくせに・・・」

「あの店、巨乳の女の子が多いそ「やめてー!」 なら契約しましょう」

「おい! それは違「あの子、名前なんて言ってたかなー」 あっちで男同士、腹を割って話そうじゃないか」

「むっ、僕は女の子ですよ?」

「えっ、まじで」


正直ウサギの性別の見分け方なんて知らねぇよ。


「はい、今失礼なこと言った! 傷ついた! あることないこと町内で言いふらしちゃおっかなー」

「せめてあることだけにして!」

「では早速「待たれよ」 契約、しますか?」

「・・・いえす」


こうして私、ルクス・ディートリヒ (23歳 独身) はウサギさんのお店に行ったせいでウサギさんと契約することになりましたとさ。





お読みいただきありがとうございます。

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