空色と銀色の魔法使い
これは「色小説」です。(色っぽい話ってワケじゃないですよぅ)
共同制作に参加してくださる先生方のすばらしい作品は
「色小説」で検索すると探すことができます。
ぽわぽわ草って知ってる?
オブスクの丘のどこかに生えている・・・えっとねぇ
たんぽぽみたいな草なの。
空色の綿毛がぽわぽわ風に揺れてすごくキレイなんだって。
しかもね、キレイなだけじゃないの!
すんごい魔力があるんだって!!
食べると一つだけ願い事がかなうんだって。
どんなことでも叶うのかなぁ?
わたしは今日もお気に入りの桃色ローブを着て
大好きなクゥを遊びにに誘う。
クルーセントだからクゥ。
銀色の細い髪がすごくきれいなの!
ぽわぽわ草の綿毛もきっとクゥの髪みたいに
ふわふわきれいなんだろうなぁ
私はクゥを見ながらうっとりと考えちゃった。
「クゥ、ぽわぽわ草探しに行こう!」
飴色のローブを着ているクゥの手をとってオブスクの丘へ向かう。
クゥのお母さんが持たせてくれたお弁当の入ったバスケットは
金色のリボンがついていて風にひらひら揺れている。
(ねぇローラは何をお願いするの?)
クゥはお口から声を出すことができないんだって
でもね、考えてることが・・・えっとてれぱしー?
とかそんなやつで伝えることができるみたい。
わたしのことをローラって呼ぶのはクゥだけ。
ローレライだからローラ。
みんなはレイとかローレとかライとか呼ぶの。
ローラって呼んでいいのはクゥだけ。
わたしの秘密の決まりごと。
「それはね・・・内緒!」
内緒ないしょ。
だって願い事聞いたらクゥ怒って一緒に探してくれないかもしれないもん。
オブスクの丘には黄緑色の芝生の上にオレンジ色、紫色、山吹色・・・・
色々なお花が咲いている。
私とクゥはくたくたになるまで水色綿毛を捜したけれどぜんぜん見つからない!
もう動けない〜疲れた〜と
クゥのお母さんが持たせてくれたターキーのサンドイッチを食べながら
私たちは作戦会議!
「ぽわぽわ草ってどこにあるのかなぁ?
一緒に同じ場所探すのじゃなくて手分けする?」
(う・・ん。そのほうが効率は良いかもしれないけれど
ローラ一人で足滑らせたりしたら大変だよ?
二人で一緒に探そう)
効率、とか難しい単語使っちゃうクゥはすごく物知り。
私はいつも色々教えてもらうの。
お口の周りを群青色のハンカチでぬぐってもらってわたしは聞いたの。
「ねぇクゥ。
ぽわぽわ草の魔法ってすごく強いかなぁ?」
(・・・・・
どうだろうね。見つけてみないと判らないね)
クゥはちょっと驚いた顔をした後、いつもの穏やかな顔になって
笑顔をみせてくれる。
クゥ可愛い!!
よ〜し!
そんなクゥと一緒ならがんばれる!
でもごめんね、クゥ。
わたしはクゥに願い事を秘密にしてる。
それなのに一緒にぽわぽわ草を探してくれるクゥは優しい。
お指が土で茶色になってお気に入りローブが泥んこになっちゃっても
気にせず探す。(あとでママには叱られちゃうかも)
緑色の花びらを珍しいなぁと指でつついていたら
(ローラ!あったよ!あれが多分ぽわぽわ草だよ!!)
クゥが指差したところは切り立った崖の壁。
そこはクゥよりちょっと高い私の身長よりもずっと高いところ。
そんなところに私の手のひらくらいの大きさの水色綿毛が
ぽわぽわ浮いている。
「可愛いお花だね」
(そうだね。でも高いところにあるね。どうしようかね)
「うーん・・・・」
わたしは一生懸命ジャンプしたの
えいっえいっって
でも全然届かない。
えいっえいっ
足が痛くなるまでジャンプしたけれどかすりもしない!
もう泣きたくなってきたら横にいたはずのクゥがいなくなっちゃってる!!
大変!クゥが迷子になっちゃった!!
「クゥーっっ」
大きな声で叫んだらクゥは崖沿いからおおきな石を転がして近づいてきたの
(ローラ。これに乗れば取れるんじゃないかな?)
クゥってば頭イイ!!
わたしはクゥが転がしてきてくれた石に乗って見事ぽわぽわ草を取ったの!
根元をお指で切るとき緊張して落っことしちゃいそうになっちゃった
あぶないあぶない
(きっとコレがぽわぽわ草だよ。ローラのお願いを叶えてもらおう)
クゥも満足そう。嬉しいっっ。
じゃあ願い事をする番ね。
「うんっ!!はい、クゥ。これ食べて?
そして『声がでますように』ってお願いして」
(・・・・僕の?)
「・・・うん・・・ごめんなさい・・・」
(ぼくのためにこんな泥んこになったの?)
なんかいつもとは違うクゥのテレパシー。
もしかして怒ってる?
大変!ちゃんと謝らなくちゃ!!
悪いことしたらちゃんとごめんなさいしなくちゃ!
「ちがうの!私のね、わがままなの。
あのね、怒るよね?
ごめんね。
クゥってね、いつも心に聞こえてくる声がねすごくキレイなの。
だからね、お耳から聞こえる声もきっとキレイなんだろうなぁって
聞きたいの、すごく。
わがままなの。
ごめんなさい・・・・。」
恥ずかしい!
大好きなクゥに軽蔑されちゃう!!
わたしは今お顔がきっと赤色になっちゃってる!
もうお耳まであついもん。
でもね優しいクゥは
(わがままなんかじゃないよ。
ありがとう。
大好きだよ)
ってわたしの頭をなでなでしてくれたの。
(おうちに帰って一緒にぽわぽわ草食べよう)
そういってわたしの手を取って歩き出した。
綿毛をちょっぴりむしって二人で味見してみたら
何か甘くてふわふわして・・・水色の綿飴みたい。
ぽわぽわ草を見つけると願いが叶うっていうのは
それだけ珍しいお花だから見つけることができるくらい幸運だったら
きっとイイコトあだろうってコトみたい。
帰り道でクゥは手をつなぎながら教えてくれたの。
夕焼けで朱色に照らされたクゥの横顔は何だかちょっとお兄さん。
私よりも1つ年下なのに心はきっとお兄さん。
でもね、ぽわぽわ草の魔法ってやっぱりあるなぁ
クゥ手作りのぽわぽわ草入り特製オムレツを食べると
お腹からほわ〜って暖かくなって
すごく幸せになったの
これは黄色いオムレツ色の幸せ
きっとね、ぽわぽわ草よりもクゥの方がずっとずっと魔法使い
銀色と水色と黄色の魔法を使うわたしだけの大好きな魔法使い
絵本っぽい世界観をイメージしてみました。
感想いただけたら嬉しいですっ