第5話 プリマの街
村を出てから数日が経った。
僕は今、村から一番近くにある中規模の街、「プリマ」に向かって街道を歩いている。
街道と言っても石畳のような立派な物ではなく、馬車が通った轍の跡が残る、土がむき出しの道だ。
「おっ、城壁が見えてきたぞ。」
そう、城壁だ。このプリマもまた、暗黒の森に近い場所に存在しており、10年~100年に一度、不定期に魔物が大挙して押し寄せるスタンピードが発生する。
スタンピードはその規模もまちまちで、直前になるまで予測ができない。
また、スタンピードが発生せずとも、時折魔物が森から現れて、街道を通る人々に攻撃を加えることがあるのだ。
弱い魔物であれば冒険者や騎士団が討伐するが、強力な魔物の場合、街にこもって魔物が去るのを待つか、籠城戦のような形で討伐をすることになる。
そのため、プリマの街は高い城壁を擁しているのだ。
「よかった、すんなり街に入ることができて。」
日が傾きかけた夕方頃、僕は無事にプリマの街に入ることができた。
レンガ作りと木造の家や建物が並ぶプリマの街は、夕日に照らされて、どこか優しげな印象を僕に与えた。
「う~ん、まずは冒険者ギルドで冒険者登録かな。ついでにそこでおすすめの宿も聞いてみよう。」
そう、冒険者。これまで何度か単語のみ登場しているが、冒険者という職業が存在する。主な仕事は魔物の討伐や未踏破領域、ダンジョンの調査だが、街の中の雑務なんかも行う、なんでも屋のような職業だ。
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読者の皆さんには、おなじみだろう。
想像の通りの冒険者と思っていただいて、差し支えない。
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門番をしていた衛兵さんに教えてもらったとおり、街の中心を通っている大通りをまっすぐ歩いていくと、「剣と盾がクロスした紋章」を掲げる建物が目に入った。
そう、冒険者ギルドだ。
中に入ると、そこには大勢の人々がおり、とても騒がしかった。
みな皮鎧や金属鎧、ローブを着ており、一目で冒険者だと分かる見た目をしている。
かく言う僕も、皮の胸当てにロングソードを一本腰に刷いている。
「すみません、冒険者登録をお願いしたいのですが。」
カウンターのような形になっている受付に行き、受付嬢に声をかける。
「登録ですね。承知しました。では魔力紋を登録しますので、こちらに手を置いてください。」
何かの金属でできた台座に手を置くと、うっすらと発光した。
「はい、ありがとうございます。もう手を離していただいて結構ですよ。冒険者タグを作製する間に、冒険者と冒険者ギルドについて説明させていただきますね。」
「よろしくお願いします。」
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この世界における冒険者は例に漏れず、ランクが存在する。
ざっくりとした基準は以下の通りである。
Sランク:世界でも数えるほどしかいない、最高峰。単騎で国と戦えるような存在が名を連ねる。
Aランク:人外の領域。一つの街にいるかどうか。その街の最高戦力といえる。
Bランク:多くの冒険者の最終目標。ベテランの中でも一部の冒険者しかたどり着けない。
Cランク:ベテラン冒険者と言える領域。数々の依頼を成し遂げた、歴戦の猛者たち。
Dランク:多くの冒険者がここで終わる。中級冒険者。
Eランク:討伐依頼が開放されるランク。駆け出しから一歩出た存在。
Fランク:主に街中の依頼を中心に行う。一部採取依頼も受託可能。駆け出し冒険者。
Gランク:町中の依頼のみに限定される。10歳以下の子供の雇用窓口としての役割がメイン。
また、10歳以上の年齢であれば、ギルドが定期的に開催しているEランク認定試験に参加ができる。参加し認められれば、いきなりEランクとして登録が可能だ。
また、それぞれのクラスには昇格試験があるが、まれに飛び級で昇格することもある。
なお、ランクは個々人に対するものであるが、パーティを結成した際には、そのパーティメンバーの平均ランクが、パーティ単位でのランクとなる。なお、偶数人数のパーティにおいてランクが半々となる場合は、低い方のランクが適用される。
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「また、これからお渡しするギルドタグは身分証としてもご利用になれますので、紛失しないようご注意ください。紛失された場合には、再発行手数料としてニフル銀貨3枚を頂戴いたします。」
「承知しました。」
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説明が連続してしまって恐縮だが、ここでこの世界における貨幣について以下の通り説明させていただく。
ニフル大金貨 100万円
ニフル金貨 10万円
ニフル銀貨 1万円
ニフル銅貨 1000円
ニフル鉄貨 100円
ギルドタグ再発行はニフル銀貨3枚であるため、日本円にして約3万円となる。
地味に痛い。
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「お待たせいたしました。こちらがギルドタグです。現在はFランクで登録させていただいております。明日10:00頃よりFランク認定試験が開催されますが、参加を希望されますか?」
「希望します。」
「では、明日10:00にギルド併設の修練場までお越しください。何か質問はございますか?」
「このあたりでおすすめの宿はありますか?」
「このあたりですと、二本先の通りにある“犬のおしり亭”がかけだし冒険者にはおすすめです。少し手狭ですが、個室で、朝食と夕食がついてきます。」
「い、犬のおしり…?わ、わかりました。ありがとうございます。」
騒がしいギルドを出て、教えられた場所に向かうと、お尻を見せてこちらを振り返る犬の看板が見えた。本当に犬のおしり亭だ…。
「いらっしゃい。」
まさかのダンディーなおじさんが店主だ。
「部屋、空いてますか?」
「空いてるよ。何泊だ?」
「とりあえず一週間で。」
「ニフル銀貨1枚だ。一階が食堂、二階が部屋になってる。あんたの部屋は二階の一番奥だ。荷物置いたら食堂に来い。メシを出してやる。」
「ありがとうございます。」
部屋はベッドと小さな机がある。簡素だが寝るだけなら十分だ。
荷物を置いて食堂へ向かう。今日の夕食は野菜多めのシチューと、黒パンだ。
「うん。おいしい。」
「そうか。宿の裏が広場になってて、そこに井戸がある。水浴びならそこでしな。部屋に桶とタオルがあるはずだ。」
「わかりました。ご丁寧にありがとうございます。」
「おう。」
部屋に戻り、剣の手入れをする。
この剣は僕が8歳のころ、気の早い父さんが僕のために村の鍛治士に打たせたものだ。
名剣ではないけれど、よくできている。
(ヒルマ、いつかその剣を使うときが来たら、躊躇うな。それは命を奪う道具であると共に、お前を守る道具なんだぞ。)
父さんの言葉を思い出す。
明日からいよいよ、冒険者としての生活が始まる。
大丈夫、必死に修行してきたんだ。ユニークスキルを使わなくても、十分戦える。
少しの不安と大きな期待を胸に、僕は眠りについた。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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