第21話 10層のボス
「ネシュカさんっ!!今ですッ!!」
「炎よ、敵を焼けっ!ファイヤーボールッ!!」
「ブゴオオオオオーーーッ」
ネシュカさんとパーティを組んで一か月が経った。
この一か月でネシュカさんはかなり成長し、初級の攻撃魔術まで習得できた。
ただ、肉弾戦はてんでダメだった…。
「お疲れ様です。ネシュカさん一人でも10層までだったら大丈夫そうですね。」
「そ、そうですかね…?あまり自信ないです…そ、それにちょくちょく強い魔物が徘徊してますし…。」
僕たちは今9層でオークと戦っていた。
この一か月、何度もダンジョンアタックをしているが、時たまオークやゴブリンソルジャー等の、初心者層に似つかわしくない魔物と遭遇していた。
「ギルドにも報告してますが、よくあるみたいですよ。まぁそれでも、最近増加傾向にあるみたいですが。」
「そ、そうなんですね。」
「そろそろ僕たちも次の段階に進むべきかもしれません。」
「次の段階、ですか?」
「ええ。10層のボスに挑みましょう。」
「つ、ついにやるんですね…!」
「ええ。十分やれると思います。」
そう、以前にも話したが、このセグレタダンジョンは10層ごとにボスが存在する。
10層のボスは何パターンかあるが、どれも余裕をもって突破できると思う。
そもそも、僕だけならいつでも簡単に突破できた。
この一か月でネシュカさんも実力を上げたし、ちゃんと戦力として換算しても問題ないだろう。
「今日はもう少しこの辺で狩りをして、金策しましょう。いつもより早めに切り上げて、明日に備えます。」
「り、りょーかいです…!」
翌日、いよいよ第10階層に挑む日が来た。
現在、ボス部屋の前にて、装備や道具の最終チェックをしているところだ。
「10階層のボスは3種類からランダムで一体召喚されます。オークソルジャー、ゴブリンナイト、コボルトリーダーです。コボルトリーダーの場合のみ、追加でコボルトが5体召喚されます。」
「な、なるほど。」
「どれが出てきたとしても、開幕と同時にフラッシュをお願いします。僕が前に出るので、隙を見て攻撃か妨害を。コボルトリーダーの場合、何匹かそちらに行くかもしれませんが、慌てずに魔法で対処をお願いします。」
「わ、わかりました…!」
「では、行きましょう。」
ボス部屋の扉に手をかけ、力を籠める。
ゴゴゴッという重厚な音と共に扉が開いた。
部屋の中心、魔法陣が光り魔物が召喚される。
召喚されたのは…。
「コボルトリーダーですッ!!フラッシュを!!」
「光よッ!フラッシュッ!!」
「「キャヒッ!?」」
怯んだすきに接近する。いつもの流れだ。
「ギャウギャウッ!!クヒョーンッ!!」
くっ、リーダーが素早く立ち直り、コボルトたちに指示を出した。
「フンッ!!」
すれ違いざま3体斬り伏せ、リーダーへと迫る。
「クヒャーーンッ!!」
リーダーとのタイマン、鋭い爪が振るわれる。
爪は非常に鋭く、分厚いローブであっても容易く斬り裂いてしまうだろう。
しかし、そんなことはヒルマに関係ない。
「ハァッ!!」
「クヒョッ」
迫る爪を横目に躱し、ただ一閃。
そう、一閃だ。
どちゃっ
リーダーの上半身と下半身が分かたれ、
地面に落ちて消えていく。
一閃。
もはや、ヒルマにとってそれは「技」ではなく、「通常の斬撃」となっていた。
「ファイヤーボールッ!!」
2体のコボルトがネシュカに向かう。
「ギャッ!!」
1体はファイヤーボールが直撃し、地面をのたうち回る。
しかしもう1体は、ネシュカへと肉薄していた。
「クラックッ!!」
パァンッ!!
「ギャヒッ!?」
コボルトの耳元で大音量の爆発音が鳴り響き、思わず動きが鈍る。
「よいせーっ!!」
「ギャウッ!!」
ネシュカが両手杖で足払いをかけ、コボルトが転倒した。
「ふんっ!!ふんっ!!ふんっ!!」
「ぐぎっぎぎゃっぎゃひっ」
撲殺。哀れなコボルトは魔石へと姿を変えた。
ファイヤーボールを食らったコボルトも、苦しみ抜いた上で魔石になった。
「う~ん、絶対あんな殺され方はしたくないな。」
「ほえ?ヒルマさん、何かいいましたか?」
「いや、なんでもないです。接近されてもうまく対処できましたね、えらいですよ!」
「にひぇひぇ、ありがとうごぜえやす…。」
「すごい顔になってるよ。よしっ!ボス部屋クリアだ。」
「そ、そうですねっ!やったーっ!」
割と余裕をもってボス部屋をクリアすることができた。
明日からは11階層以降をメインで活動していける。
…ただ、気を付ける必要がある。
ネシュカさんとパーティを組んでから1か月、ミカシュたちは不自然なほどに静かだ。
仕掛けてくるなら、そろそろだろう。
「今日はこのまま11階層を少し見て回ってみましょう。雰囲気だけでも知っておいた方がいいと思います。できたら数回くらい、戦闘もこなせたらベストですね。」
「わかりましたっ!!」
11階層からは洞窟のようなエリアになっている。
通路幅は今までとは比較にならないほど狭くなっており、戦い方にも更なる工夫が必要になってくる。
「なるほど、これは慣れるまで少し時間がかかりそうですね。」
「ま、魔法とかもむやみに撃てないですね…。」
確かに。音も響くため、クラックなんかの大きな音が出る魔法や、その他魔法についても射線等より一層注意する必要がある。
また、洞窟内の光源についてはヒカリゴケやヒカリタケ、ライトクリスタルやその成分を含む鉱石によってある程度照らされている。
「少しこの周囲を歩いてみましょうか。」
「はいっ」
5分ほど歩いていると。
カタッカタッカコンッ
「な、なんの音でしょうか…?」
カタンッカタンッ
「前方から聞こえますね。気を付けてください。」
カタンッカタッ…
「…止まった…?」
カタカタカタカタカタカタカタッ!!
暗闇から突如、錆びついた剣を持ったスケルトンが走り寄ってきた!
「ひっひいいいいいいいいいいいいいっっ!!!!!」
「ちょっ!!ネシュカさん危ないですっ!!!」
くそっこういうのダメなタイプか!僕もちょっとびびったけど!!
「ホラーは求めてないんだよッ!!」
錆びついた剣が振り降ろされる。
しかし、スケルトンは骨だけの存在だ。剣筋はブレブレで回避は容易い。しかし真に注意すべきは、筋肉や筋にとらわれない動きだ。
「うおっ!?」
剣を避けた瞬間、人間ではありえない軌道で剣が跳ね上げられ、鞭のようにしなりながら迫ってきた。
ガインッ
自らの剣ではじきつつ、反撃。
ズパッ!!
ガシャガシャンッカラカラッ
魔力が籠った剣激は、斬撃耐性を持つスケルトンであろうとも一撃だった。
「ふぅ。初見の魔物はやはり要注意ですね。ネシュカさん、大丈夫ですか?」
「ひっひぃっ!で、でえじょうぶだすっ!」
「ダメそうですね。仕方ない、何度も戦って慣れていくしかないでしょうね。頑張りましょう、ネシュカさん。」
「ひ、ひぃいいいいいいっ!!!!!」
先が思いやられる…。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




