第19話 一触即発
「ゴブリンの魔石が24個、コボルトの魔石が8個、オーガの魔石が1個と牙が2本で、ニフル金貨1枚とニフル銅貨8枚となります。」
「ありがとうございます。」
あの後5階に到達し、魔方陣に魔力を登録、ギルドまで転移で帰ってきた。
明日からは本格的にダンジョン攻略に乗り出すつもりだ。
「明日からに備えて今日はもう帰って、道具とか装備の調達に行こうk」
「このグズが!!テメェのせいで死にかけたじゃねえか!!!」
ギルドに怒鳴り声が響いた。
「あうっ…!」
白いローブを纏った、桜色の髪の女性が突き飛ばされた。
「このゴミ、治癒魔法が使えると思ったら、擦り傷が治せる程度じゃねえか!!このクソアマ、騙しやがってッ!!」
「ち、ちがっ本当に使えッガッ」
「!?」
金髪マッシュヘアの冒険者に、その女性が殴られた。
よく見ると、その冒険者の背後には入れ墨の冒険者たちもいる。
「オラ、得意の治癒魔法で治して見ろよ。あ?」
「う、ぐぅっ…うがっ…。」
「おら。どうした?早くしろよ。」
ゴッ
女性が叩きつけられた。
「がっ!」
「オラ。」
殴りつけられる。
「うぐっ。」
「オラ。」
べきっ
血が流れる。
「あぎっ!」
「オラッ!!」
バキッ
カラカラッ
歯が、飛んでいった。
誰も、助けない。
この男、Bランク冒険者であった。
それも、Aランク目前と噂されるほどの男。
誰も、揉めたくない。
この場にいるギルド職員では太刀打ちが出来ないため、ギルドも手を出せない。出さない。
「はぁ、もう死んでいいよ。お前。使えない《《ゴミスキル》》持ってたって、生きる価値なんかないよ。」
再び拳が振り上げられた。
「はい、さよなr。」
「いい加減にしろよ?」
「…あ?」
ヒルマが立ちはだかった。
その目は、殺意に染まっていた。
「なんで、誰も助けないんだ?」
怒りで拳が震える。
「なんで、見て見ぬふりをするんだ?」
かつての記憶が蘇る。
村での記憶が。
「なんで、“憐れみの視線”を向けるだけなんだ?」
怒りが、蘇る。
村での怒りが。
「…なんだ?ガキ。急にしゃしゃり出てきて王子様気取りかな?それならなぜ、もっと早く出てこなかったんだ。この偽善者のクズが。」
男がニヤニヤと笑う。
「それはこの子が、冒険者として誤った選択をしたからだ。お前のようなクズ、依頼を受ける前から分かるだろう?なのにこの子は、受け入れた。冒険者としての自覚がなさすぎる。…だが、これ以上はダメだ。」
「ダメならどうすんだ?俺はそいつを殺すか、性奴隷にでもしてやろうかと思ってるんだけどね?」
「…その前にお前を殺してやるよ。」
交差する視線。
「やってみな?雑魚が。」
ギルドに殺意が満ちる。
双方、人外に一歩踏み込んだ存在。
建物が軋み、弱き者は気絶する。
大勢が冷や汗を流して動けない。
緊張の糸が、切れる..。
「お?なんだ?ずいぶんと静かだな。ん?おお、僕くんではないか!」
糸が、切られた。
お姉さんの登場によって。
「…お姉さん、今真剣なんです。邪魔をしn」
「ギルド内での刃傷沙汰は処罰の対象だぞ?まさか、“ギルドが見て見ぬフリをする”とは思えないがな?」
「…。」
ギルド職員たちが気まずそうに目をそらす。
「おいミカシュ、もう行こうぜ。“機会はまだある”。」
「はっ、命拾いしたな?ガキ。」
ミカシュと呼ばれた男が去り際に、ニヤつきながらささやいた。
「女に守られて、情けねえな。お前は殺して、女は性奴隷。けってーい。」
再び怒りがわき上がり、殺意に飲まれそうになる。
「う、うぅっ…。」
すんでの所で耐え、意識を取り戻した女性にかけよる。
「大丈夫ですか?」
「これはひどい。さ、君。これを飲みたまえ。」
お姉さんがポーションのような物を飲ませると、殴られた傷がスーっと消えていった。
安心したのか、女性は再び意識を失ってしまった。
「やれやれ僕くん。再会早々こんなことになっているとは。」
「な、なんかすみません…。」
「まぁ、僕くんは悪くないだろう?悪いのはさっきのゴミカスと、ギルドだ。まさか見て見ぬ振りをして、冒険者の横暴を許すとは。セグレタギルドも地に堕ちたものだな!」
お姉さんが周囲に聞こえるように叫んだ。
ギルド職員たちはみな、唇を噛んで下を向いていた。
「お姉さん、ありがとう。とりあえず彼女は僕が引き取って、面倒を見ます。奴ら、また何かしてきそうですし。」
「分かった。私はこのままギルド長室に突撃する。任せておけ、このギルドの膿は、お姉さんが出し切って見せようッ!!」
そう言うとお姉さんは肩で風を切って、ダンジョンがある通路へ進んでいった…。
ギルド長の部屋は、3階なんだけどなぁ。
「こ、ここは…?」
「よかった、目が覚めたみたいですね。」
「ひっ、あ、あなたは…?」
「ギルドであなたと、あのカスどもの仲裁に入った者です。覚えてませんか?」
「ご、ごめんなさい…怖くて、よく…。」
女性はぶるぶると震えている。
「そうですか…。はぁ、一つ聞いてもいいですか?」
「は、はい…。」
「どうして、あんな危険な男とパーティを組んでいたんです?」
「え、えと、そ、その、誰も私とパーティを組んでくれなくて…それで、回復系の魔術が使えるなら、パーティに入れてやるって言われて…。」
「え、それで嘘ついてパーティに入ったんですか…?」
「ち、ちがいますっ!!つ、使えまするもんっ!!!」
「ま、まする…?」
「た、ただ私の魔法は発動方法が特殊で…おいそれと使えないんです…。なので、簡単な補助回復魔法だけ使っていたのですが...。」
「発動方法が特殊?具体的には、どんな発動方法なんです?」
「い、いえませんっ!!!!」
「あの~、助けたのは僕ですよ?僕がいなければ、殺されてたかもしれません。あなた自身のためにも、教えてください。」
「う、うぅ~~~~~...。」
「特殊なスキルなんですか?もしかして、1級のスキル?」
「う、うぅぅうう~~~~…違います…。」
「え、ま、まさか、特級…?」
「(ブンブン)」
「…ユ、ユニーク…?」
「…(こくり)。」
(う、うそぉ~~~ん。僕以外でユニークスキル持ってる人、初めて見た…!)
「す、すごいじゃないですか!!ユニークの治癒魔法スキルなんて…!!」
「…治癒じゃないです。」
「え?じゃ、じゃあなんなんです?」
「…ゅ…です…。」
「…ん?」
「で、ですからっ!…ゅ魔法です…。」
「す、すみません、聞き取れないんでs」
「だ、だからぁっ!!!治癒魔法じゃなくて、“ちゅー魔法”なんですっ!!!!」
「…え?」
え?
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
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