第18話 初ダンジョン
「Dランクのヒルマ様ですね。確認完了いたしました。」
「ありがとうございます。」
僕は今、セグレタの冒険者ギルドに来ている。
プリマの冒険者ギルドも大きく立派に感じたが、ここはそれと比較しても段違いだ。
受付カウンターなんて、20以上あるんじゃないかな。
…ノノさん、元気にしているだろうか。
「では、ダンジョンに入られる際の注意事項等をご説明させていただきます。
ダンジョンの入り口はあちらに見えるダンジョン直通通路の先にございます。冒険者の方であれば入場料等は不要です。ご自由に出入りください。」
通行料とかは無いのか。これはありがたい。ただ、まれに貴族なんかが観光目的で来ることがあるらしく、その場合は入場料等が発生するのだろう。
「ダンジョン内の魔物は、討伐されると消滅し、その魔物由来の素材等をドロップします。ドロップ品の買い取りは買い取りカウンターで行っておりますので、ご活用ください。」
(どういう理屈なんだろう…。解体しなくて済むのは助かるけど、活用できる素材は減っちゃってるよなぁ。でも、まれに装備品がドロップすることもあるらしいし、トントンなのかな?)
「また、本ダンジョンは5階層ごとに転移装置がございまして、入り口と双方向で転移が可能です。未踏破の階層に転移はできません。ダンジョン内外の依頼については、あちらの掲示板にございます。説明は以上です。何かご質問はございますか?」
(転移か、便利だな。)
「分かりました。このあたりでおすすめの宿はありますか?」
「このあたりですと、当ギルドと同じ並びにございます、“おしりふわふわ亭”がおすすめです。」
「お、おしりふわふわ…?わ、わかりました。ありがとうございました。」
「よき冒険を。」
イケメン細めがねの受付さんにおすすめされた宿へ向かう。
五分ほど歩くと、ふわふわな素材でできた、何かの動物のおしりを模した看板が見えた。
「ほ、本当に“おしりふわふわ亭”だ…。」
これまた渋いイケオジ店主さんに鍵をもらい、部屋に荷物を置いた。
魔道具を使った簡易シャワーまである。すごいな…。
軽く装備の点検を行う。
魔族との戦いにおいてボロボロになってしまった皮鎧はすでに卒業し、旅の途中で寄った街で新しい皮鎧を購入していた。
そこまで良い品ではないが、ホーンボアと呼ばれる猪型魔物の皮で作られた、丈夫なものだ。
剣は…うん、まだ大丈夫そうだ。
シャワーを浴びてさっぱりした僕は、早々にベッドに入った。
いよいよ明日からダンジョン探索開始だ。
「朝からすごい人だな。」
早朝、ダンジョンにやってくると、ものすごい数の冒険者たちが列を成していた。
入り口で次々と人が消えていく。みんな転移してるんだろう。
僕は初挑戦なので、コツコツ一階層からだ。
「よしっ!」
気合を入れていると。
「邪魔だ、ガキ。」
「あ、すいません。」
全身入れ墨で、金属製のメイルを装備した冒険者の一団に押されてしまった。
その一団は舌打ちしながら僕をにらむと、転移で消えていった。
「…感じ悪いな。ま、いいや。行こう。」
ダンジョンに踏み入ると、中は草原となっており、天井(?)には青空が広がっていた。地下なのにこのような光景が広がっているのは驚くべきことだが、どのような原理でこうなっているのかは未だに謎らしい。
「外との見分けがつかないな。とりあえず、今日は様子見ってことで、軽く探索しながら5階層を目指そう。」
1-10階層は、この草原が続くらしい。出てくる魔物も、低級の魔物がメインになっているようだ。
「「ギギャギャッ!!」」
さっそくゴブリンたちのお出ましだ。
「…う~ん。やっぱり村周辺のゴブリンと違うな。」
村周辺のゴブリンはもっとこう、余裕がなくてガツガツしてるような感じだった。
あの村のあたりには、やはり何かがあるのだろうか?
こんなことを考えながら、ゴブリンを“処理”した。
死んだゴブリンは数秒ほどで黒い霧になり、消えていった。
「おお…こんな感じなんだ。あ、ドロップ品。」
ドロップ品は小さな魔石と牙、こんぼうだった。
「…いらないかな。魔石だけ回収しよう。」
その後もゴブリンやスライムなんかと遭遇するも、今更苦戦するわけも無く。
「おっ?コボルトだ。」
初めて見た。めちゃくちゃ凶悪な顔をした、二足歩行の犬?といった感じだ。
以前、プリマの街でアクトゥと共に受けた一番最初の依頼のことを思い出す。
「…アクトゥ、元気にしてるかな。」
置きざりにするような形になってしまったのは、申し訳なく思っている。
ディーさんもいるし、大丈夫だと思うけど…。
「「ギャウギャウッ!!」」
完全にコボルトたちのことを失念していた。
「キャヒッ!?」
う~ん、ゴブリンより若干すばしっこいくらいで、特に強くもない。
数分も経たないうちに、コボルトたちは魔石へと姿を変えた。
「よし、サクサク進んでいこう。」
それは5階層でのことであった。
「うん?あれって、オーガだよな…?」
5階層までは弱い魔物しか出ないはずが、オーガが一匹、鎮座していた。
「初心者冒険者が犠牲になるかもしれないし、倒しておこうか。…素手だけでいけるかな?」
久しく鑑定をしていないためヒルマは知らないが、この時すでに、ヒルマは拳戦士の3級スキルを獲得していた。
剣だけでなく、拳も交えた泥臭い戦いにより、その才能を開花させていたのだ。
「魔力で拳を覆えばいけそうだな。よし、いっちょやってみますか!」
オーガに向かって走りだす。
「グガッ!?ガァアアッ!!!」
気づいたオーガが立ち上がり、ヒルマに向けて拳を振るう。
オーガはCランク帯の魔物。その一撃は容易に「人」を破壊する。
「ふんッ!!」
「グギッ!?」
ヒルマ、真正面から殴り合う。
オーガの拳を、己の拳で迎え撃つ。
魔族との死闘を経て、ヒルマはすでに人外の領域に片足を突っ込んでいた。
魔力が全身を淀みなく流れ、身体強化は魔力操作と一つになり、3級スキルの纏魔へと昇華した。
チクビームに頼らず戦い続けてきたヒルマは、その実力だけで圧倒的な成長を遂げていた。
「ハァッ!!!」
ぼぎっ!!
「ギガアアアアアアアッ!!?」
オーガの拳が砕けた。
「もう十分かな。消えていいよ。」
ヒルマの姿がかき消え、オーガの眼前に突如現れた。
「ハッ!!」
バキッ!
「がひょっ」
回し蹴りで、オーガの首が回った。
ゆっくりとオーガの体が倒れ、同時に黒い霧となった。
「お、さすがCランク魔物。魔石も大きいな。それに、これは牙かな?回収しておこう。いくらで売れるか楽しみだなぁ。」
ほくほく顔で、ヒルマはその場を後にした。
その、少し離れた場所にて。
「う、嘘だろ。す、素手でオーガを倒しちまった…。」
「ば、化け物…。」
新人冒険者パーティにしっかりと見られていたヒルマ。
この後、新人たちの間で、「オーガと素手で殴り合って勝った化け物」の噂が流れることになる…。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




