第17話 ダンジョン都市
「…あれが、ダンジョン都市。」
魔族との戦いから二ヶ月。
僕は徒歩と乗合馬車を乗り継いで、ダンジョン都市と呼ばれる巨大な街、セグレタに向かっていた。
ダンジョン。
誰しもが聞いたことがあるだろう、冒険の舞台。
地下深くまで広がり続ける広大な迷宮。
多くの魔物がひしめき合い、これまで数々の冒険者たちが犠牲となった。
なぜ、命の危険があるダンジョンに潜る冒険者が絶えないのか。
それは、ダンジョンには貴重な素材や薬草、魔物の素材、そして財宝が眠っているからだ。
ある説に寄れば、ダンジョンとは巨大な生き物であり、財宝や貴重な素材で人々を誘惑し、斃れた者の魂を捕食しているとか。
またある説に寄れば、ダンジョンとは神が与えた試練であり、これを乗り越えようとする者、乗り越えた者に、褒美として財宝が与えられるのだとか。
そんな夢とロマン溢れるダンジョンに、僕は挑むことにした。
ディーさんも強くおすすめしてくれたしね。
「お客さんら、もうすぐ着きますからね。ご準備を!」
乗り合い馬車の御者のおじさんが声をかける。
僕以外にも二人、人が乗っていた。
「ふぇあ~、ねむい。ようやく到着か。」
一人はこの人。
その名も、“お姉さん”。
いや、その、本当なんです。そう呼べと言われたんです。本名は教えてくれないんです。
黒くツヤツヤとした長髪で、前髪はパッツン。
ローブマントを羽織っており、下の装備は見えない。武器は何も持っていないそうだ。
いつも気だるげだが、言葉遣いは割と丁寧な、“ドラゴニアン”のお姉さんである。
そう、ドラゴニアン。
竜人とも言われる彼らの種族はエルフと同じくらい長命で、屈強な体を持つ希少種族だ。
そんな人がなぜこんな乗り合い馬車に乗っているかもまた、謎である。
「どうした、僕くん。そんなに私を見つめて。残念だが、期待に応えてやることはできん。私とツガイになる雄は、私t」
「いや、思ってないです。大丈夫です。落ち着いてください。」
「アンタら、まぁ~た乳繰り合ってのかい?見飽きたぜ~まったく。」
「ち、乳繰り合ってなんかないです!!」
そう、もう一人がこの人。
ドワーフの女性、グレラさんだ。赤褐色の髪を三つ編みにしている。
ドワーフは背が低く、力持ちで手先が器用な種族だ。
お酒も大好きで、グレラさんは常にお酒を飲んでいる。でも、酔ってるところは見たことない。
「わかったわかった。そっちのアホがアホみたいなこと言い出したんだろ、どうせ。あ~これからこの街でも別のアホの相手をしなけりゃならねぇのに、ったく…。」
「む、私をアホだと言ったのか?おい。聞き捨てならんな。いいか、そもそもアホというのはk」
「グレラさん、探し人がすぐ見つかるといいですね。」
「僕くん、さすがにひどすぎないか?お姉さん、そろそろ泣くぞ?」
「ありがと、ヒルマ。まぁ、騒がしいヤツだからすぐ見つかるとおもうんだけどねぇ。」
「私は、空気だったのかもしれない。」
「お姉さんはセグレタに着いたらなにかするんですか?」
「僕くん、ちゅき。私はだらだらした後適当に冒険者ギルドに顔出して、後はまた適当にブラブラするだけだな。」
「え、お姉さん冒険者だったんですか?」
「うむ。あれ、言ってなかったか?」
「初耳です。」
「そうか。なら、また会うかもしれないな。そのときはよろしく頼むぞ、僕くん。」
「こちらこそ。グレラさんも、ギルドでお会いできたらそのときはよろしくお願いしますね。」
「もちろんだよ。あ~、お前らとの旅もこれで終わりかと思うと、不思議と寂しさを感じるな。」
「一ヶ月も一緒に旅をしましたからね。」
「いろいろあったなぁ。」
「ええ。いや、本当に、いろいろありましたね…。」
お姉さんが寝たまま歩き出して森に突撃するとか、お姉さんがグレラさんのお酒を勝手に飲んで酔っ払い、穴を掘り出してヒュージワームを怒らせてしまい、戦闘になったりとか、お姉さんに火起こしを任せたら、食料まですべて消し炭になったりとか…。
あれ、全部お姉さんが悪いのでは?いろいろって、全部お姉さん発出では?
僕とグレラさん、ついでに御者のおじさんが遠い目をしていると、いよいよセグレタの街に到着した。
「さ、着きましたよお客さん方!!いやぁ~長いこと御者をやってますが、こんなに愉快な旅は初めてだったかもしれませんなぁ!!」
「一ヶ月の長旅、ありがとうございました!初めての長期旅でここまで無事に来れたのは、おじさんのおかげです。」
「うれしいことを言ってくれますなぁ…!この次も是非、お願いしますよッ!!」
「もちろんです!お達者で!!」
御者のおじさんと別れて、街の入り口に進む。
この街も、巨大な壁に覆われている。
しかしこの壁は、外敵から街を守るためではない。
“ダンジョンから外を守るため”にあるらしい。
ダンジョン内部には様々な魔物が潜んでいる、
深層においては、ドラゴンやリッチなど、伝説上の存在も跋扈しているそうだ。
そんな存在が万が一にでも外に出てこないよう、閉じ込めるために壁が存在しているとのことだ。
「…もうスタンピードはこりごりなんだけどなぁ。」
「ん?どうしたヒルマ。何か言ったか?」
「い、いや、何でも無いよ。」
衛兵さんにギルドタグを見せると、すんなり街に入ることが出来た。
「ここでお別れだね。」
「うむ、そうだな。楽しかったぞ、またどこかで会おう、僕くん、グレラよ!」
「おう!ま、なんだかすぐに会える気がするけどな!あばよ!ヒルマとアホ!」
「おい!!良い感じに別れられそうだったのに、最後の最後で台無しではないか!!いいか?別れというのはだな、とてもd」
「お姉さん、グレラ!ありがとうございました!また会いましょう!」
「ちょ、待て僕くん、まだ話g」
こうして、僕はダンジョン都市、セグレタにたどり着いた。
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どうも、おしり炒飯です。
と、いうわけで第二章、開幕です!
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本作、カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




