第2話 ビーム、炸裂。
鑑定の儀から数日。
今日、僕は一人で村の外れに来ていた。
このままではダメだ。ぼくは強くなって、将来この村を守っていくんだ。
ユニークスキルが変でも、必死に修行を積めば後天的にスキルを取得することができる。
今日から僕は、ユニークスキルを使わずに強くなるための修行を始めることにした。
村には、村の戦士たちが修行するための修練場があるけど、
僕を馬鹿にしたような笑い声が耳にこびりついて離れず、行きたくない。
一緒に鑑定の議を受けたビリーたちもいるだろうし…。
「よしっ、始めるか。」
村はずれの畑の横、少し開けた場所で、僕は木剣の素振りを始めた。
鑑定の議の前から、僕は父さん、兄さんに剣術を教えてもらっていた。
素振りくらいなら一人でもできるし、森の浅い層に出てくるゴブリンや、ホーンラビット程度であれば、倒せるんじゃないかなと思う。
「フッ!フッ!」
ブン、ブンと、木剣が空を切る音が響く。
幼いながらに真剣に振られるその剣筋は、まっすぐしたものだった。
「うん、準備運動終了かな。」
次は型の練習だ。ただ剣を振るだけでなく、決められた動きはなぞっていく。
これを繰り返すことで、実戦においても淀みない太刀筋を実現することができるのだ。
浅い息で型を繰り返す。
修行を開始した時に低い位置にあった太陽が、いつの間にか天頂近くまで昇っていた。
「そろそろ、休憩にしよう。夢中でやりすぎちゃったし、喉渇いたな…。」
水筒を置いた雑木林の木陰に近づいた、そのとき。
「…え?」
目の前に、それはいた。
猪のような頭、充血して赤くなった目。
全身は毛皮に覆われ、両手には石でできた斧のような物を持っている。
オーク。
この世界においてそう呼称されるこの魔物は、初級冒険者が最初にぶつかる壁、と言われる程度には強力な魔物であった。
「ッ!?」
まずい!オークはすでに僕を視界に捉えている。どうやら攻撃対象として認識されてしまったようだ。オークは群れで行動する習性があり、危機に陥ると鳴き声をあげて仲間を呼ぶ。このまま僕が村内に逃げ込めば、オークは着いてきてしまうだろう。村の中で鳴き声をあげられてしまえば、この村は戦場になってしまう。
戦える人間は、僕しかいない。
「こっちだ!」
僕は森の中に向けて走り出した。
「ブフッブフッ!」
鼻息荒く、オークが追ってくる。
よし、釣り出すことには成功した。
あとは森の中でうまく撒いて、逃げ切るしかない。
森の中を疾走する。
後ろからはバキバキと枝や草木を踏み降りながら、オークが迫ってくる。
が、図体が大きく、徐々にその距離を離すことに成功している。
「このままうまく撒けそうだ…!」
と思った、その時。
「ブオッ!ブオッ!ブォオオオオオオオオオオッッ!!!!!!」
後方から、オークの雄叫びが聞こえた。
「ブオッ!ブオッ!ブォオオオオオオオオオオッッ!!!!!!」
二度。
それは明らかに、何かを知らせるような規則性のある鳴き声であった。
生き物の気配が、増した気がした。
やがて、四方八方から、バキバキと草木を踏み折る音がし始めた。
「まずい…!仲間を、呼ばれたんだ…!」
木立の中、何かが僕と併走しているのが分かる。
それが一つ、二つと増えていく。
無我夢中で走るうちに、開けた場所に出た。
「ハァッ…ハァッ…。」
もう、これ以上は走れない。
膝がぶるぶると震え、視界が明滅する。
ガサガサッバキバキッ
四方八方から、何かが近づいてくる。
いや、それが何かは見なくても分かる。
「フゴッフゴッ」
「ブフッブフッ」
オークだ。オークたちが現れた。
その数、7体。
「ははっ…。」
絶望的だ。一体でも、戦い慣れ始めた初級冒険者と同等。
それが7体ともなれば、ベテランの中級冒険者でも苦戦は必至だ。
武器は木剣、防具はただの布の服。
勝ち目は万に一つも無い。
僕の命は、今日ここで終わる。
いや、まだ、ある。
あの、忌まわしいスキル。
ユニークスキル。それはどのようなものであれ、歴史上に名を残すほど強力なものばかりである。
チクビーム。ふざけた名前だが、この状況を打破するためには、これを使わざるを得ない。
「ふぅ…。」
覚悟を決める。
使い方は、分かる。スキルが判明したあの日、自然と使い方を理解した。
「ブヒッブヒッ」
オークが迫る。もう、時間はない。
人差し指と親指で、乳首をつまむようにして構える。
思考と視界がクリアになり、どこを狙えば良いか、ハッキリと分かる。
後は、発動するだけ。
ドクドクと、鼓動の音だけがやけにうるさく聞こえる。
オークの鳴き声も、枝を踏み折る音も、鳥のさえずりも、森のさざめきも、何も聞こえない。
聞こえるのは、ただ自らの鼓動の音だけ。
「ッッ!!!」
オークが石斧を、振り上げた。
今。
今ッ!!!!
「チク、ビィィィイイイーーーーーームッッッ!!!!!」
視界が白く染まる。
胸部に強烈な熱量が集約されている。
突然のことに、思わずオークの攻撃が止まる。
次の瞬間。
パウッ
それは放たれた。
白い閃光。二筋の光。
圧倒的な熱量と威力を持って放たれたそれは、眼前のオークを数瞬でこの世から消し去った。
それだけではない。
その後方に控えていたオーク3匹をも消し去り、森の深部に向かってまっすぐと「道」を作り出した。
音はない。あるのは静寂と、残光だけ。
「ハァッ…ハァッ…。」
光が完全に消えると、残されたオークたちは逃げ出した。
脱兎のごとく、必死の形相でその場から走り去ったのだ。
「う、ウッ」
胸部からジクジクとした痛みを感じる。
どうやらむやみやたらに連射はできなさそうだ。
よりスキルに習熟すれば、変わってくるのだろうか…?
「ハァ…ハァ…や、やった…!」
よかった。よかった…!僕は、僕は生き残った!
そして、村のみんなを守ったんだ!
よたよたと歩きながら、村の方向へと歩き出す。
森を抜けて村にたどり着いたのは、夕方頃だった。
「よかった。村に被害はなさそうだ。僕が、僕が村を守ったんだ!」
「ブッ!あはははははははっ!!!」
「え…?」
振り返ると、そこには修練場帰りのビリーたちと、大人たちがいた。
「な、なんだよその格好!!!!ひーっ!ち、乳首だけ、乳首だけ出してっ!」
言われて初めて気づいた。僕の服は、乳首の部分だけ丸く切り抜かれているような形になっていたのだ。
「む、村を守ったって?何から守ったんだよ!チクビームのチクビナイトさんよぉ!!」
「ブフォッ」
「グフッ」
笑い声が響き渡る。
嘲笑が響き渡る。
視界が滲む。
ポタポタと、地面に涙がこぼれ落ちる。
その日から、僕は本当の意味で、村の笑いものになった。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




