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【第一章完結】ユニークスキルは【チクビーム】~最悪な名前のスキル、ただし最強~  作者: おしり炒飯


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第16話 撃て、討て、チクビーム。

ヒルマが抜刀し、魔族へと近づいていく。

 すでに魔族はほとんど再生を終えていた。

 しかし、その顔は憤怒の形相であった。


「つ、次かラ次ヘト小バエが湧いてくるナぁ~~ッ!!いい加減、キれちまったゼ。りひひ、決めたゼ。この国ハ、滅ぼすことにシタぞ。」


「…させませんよ、そんなことは。」


「なんだァ~?さっきまデ縮こまってたガキが、ずいぶん偉そうな口をきくヨうになっt」


「――一閃。」


「ッ!?」


 気づけば目の前にヒルマがいて、すでに剣を振り終えていた。

 魔族の体が縦に大きく裂ける。


「てめェッ!!卑怯なヤツメッ!!」


「あなたがそれを言うんですか…?」


「ガァアッ!!!!」


 大量の触手がヒルマを襲う。

 四方八方から迫る触手の軍勢。その数は、数え切れない。鋭い先端がヒルマを狙い、まるで蜘蛛の巣のように囲んでいく。

 ヒルマの視線が瞬時に左右に動く。

 そして、目にもとまらぬ連撃で斬り落としていく。


 緑色の体液をまき散らしながら、ぼたぼたと触手が地面に落ちる。


「ぎゅぎいぎGIIIIIIIIッ!!!!!!」


 触手が一塊となり、1本の太い触手となる。

 やがてその先端が大きく膨らみ、真っ赤な手のひらが、子葉のように開いた。


「りひひ、――魄手はくしゅ。」


 二つの巨大な手がヒルマに襲いかかる。

 拍手をするように、まるで小バエを潰そうとするように、巨大な手のひらが何度も叩かれる。

 圧倒的質量を持つその攻撃を回避するために、ヒルマは跳躍した。


「そコだァアアアア~~~~~~ッッ!!!!」


 回避不能な空中において、大量の触手が襲いかかる。


「ぐっ!!」


 無理な体勢から放たれた斬撃は、すべての触手を抑えることができなかった。

 触手の波に襲われ、地面に叩きつけられる。


「ぐぷっ」


 ヒルマの口から血が流れ落ちた。

 全身を魔力で覆うことで、ダメージを最低限に抑えた。


 抑えた上での、致命傷。

 あまりにも絶望的な差が、そこにはあった。


「やっぱり、だめだな。」


 ヒルマは観念した。


「今の僕では、倒せそうにないや。」


「りひひひィッ!!どうしタぁ??急にしおらしくなって。命が惜しくなッタのかぁ~~~???」


「うん。命は惜しいよ。でも、それより悔しいんだ。」


「悔しイ~??」


「ああ、悔しい。本当は僕の力だけでお前を倒したかった。これまで積み上げてきた、僕だけの力で。オーガを倒し、ワイバーンと戦い、強くなれたと思った。思い込んでいた。でも上には上がいる。ディーさんや、お前のような存在が。」


「りひひッ!!今更何を言ってモ無駄だぜェ~~?この国ハ滅ぼす。これは決定事項ダ。」


「うん、そうだろうね。でも、それを許すことは出来ない。この街には、僕が守りたいモノがたくさんある。ギルドのノノさんや、宿屋のおっちゃん。デランさんや親切な衛兵さんたち。そして、アクトゥも。」


「さっきから黙って聞いてリャ、まるでお前ガ勝てるみたいな口ぶリだなぁ?イライラしてきたゼ。」


「たぶん勝てるよ。でも僕は、この力を使うのが嫌なんだ。ここにいられなくなってしまうと思うから。僕が、僕自身が、耐えられないから。でも、大切な人を守るために。僕は――。」




「使うよ。」




「死にさらセ、ガキ。」



 触手の波と、巨大な手が迫る。

 ヒルマは回避しない。回避できない。



 いや、回避する必要がない。



「――氷獄で、お眠りなさい。」



 すべての触手が、巨大な手が動きを止める。


「なッ!??」


「アクトゥのおかげで、“彼”を助けることが出来ました。ありがとう、ディーさん。もう大丈夫、後は僕が、やります。」


「少年。何をするかは分かりません。でも今は君に賭けるしかない。――頼みましたよ、《《ヒルマ》》少年。」



「この、死に損ないガァーーーッ!!!」




 ヒルマがゆっくりと、歩みを進める。



 人差し指と親指で、乳首をつまむようにして構える。

 思考と視界がクリアになり、どこを狙えば良いか、ハッキリと分かる。


 魔族は凍結して、動けない。

 後は、発動するだけ。


 ドクドクと、鼓動の音だけがやけにうるさく聞こえる。

 戦場に吹き抜ける風の音も、踏み砕かれる霜の音も、魔族のわめき声も、聞こえない。


 聞こえるのは、ただ自らの鼓動の音だけ。


 魔族が無理矢理触手を動かした。

 鋭い棘のような触手が数本、ヒルマの心臓に迫る。


 だが、もう遅い。




「チク、ビームッ…!!」




 胸部で、白い光が明滅した。

 周囲に舞う氷の結晶が、その白きを反射して、キラキラと輝いていた。


 そして、ジュッと、すべての氷が蒸発する。



 パウッ



 二条の閃光、迸る。

 すべてを消滅せしめる、断罪の光。


 およそ5年ぶりに放たれたそれは、かつてより威力を増していて。



「りひひっ、あぁ、そうカ。お前ガ、あノ――。」








 戦場に残されたのは、巨大な跡。

 地面はうがたれ、彼方の森まで、その動線上のモノを一切消し飛ばして。


 魔族は跡形も無く消え去り、もう二度と、復活することはなかった。






~Sideアクトゥ~


「うっ!?ここは…。」


「おや、ようやくお目覚めかい?」


「あ、あんたは、氷結…!」


「ディーでいいよ、アクトゥ青年。」


「いや、青年は恥ずかしいんで、無しでおねがいしやす…。」


「おや?そうかい?わかったよ、アクトゥ君。」


「それで、ここは?」


「ああ、ギルドの併設病院さ。あの戦いの後、負傷者はみんなここに運び込まれてね。僕も同じさ。つい三日前、目が覚めたところだ。」


「へぇ~、三日…三日!?ちょ、ちょっと待ってくだせぇッ!!あれから何日経過してるんですかいッ!?」


「一週間さ。」


「一週間も…。 ッ!!ぼっちゃんは!?」


「彼なら無事さ。それに魔族を倒してしまったのも彼だよ。まったく、あんなふざけた力を持っているとはね…。」


「ぼ、ぼっちゃんが魔族を…?一体どうやって…。」


「…ムさ。」


「え?」


「..―ムだよ。」


「な、なんでやすか?聞こえないんでy」


「チ、チクビームって言ったんだッ!!!」


「…はぁ?ちょ、急に何を言ってるんでやすか?まだ寝てた方が良いんじゃ…。」


「ぐ、ヌゥ、そう言われても仕方が無いとは思う。だが、事実なんだ。」


「えーとつまり、ぼっちゃんが乳首からビームを放って、魔族を倒したと?」


「…そうなるね。」


「な、何をアホなことを…。」


「事実なんだけどねぇ...。」


「それで、ぼっちゃんはどこに?」


「彼なら、もうここにはいないよ。」


「は?いない?どういうことでやすか!?」


「例のスキルについて、思うところがあるみたいでね。見られてしまったからには、もうここにはいられないと言って、そのまま去ってしまったんだ。」


「な、バカなっ!!一体どういうことでやすかッ!!」


「考えても見て欲しい。乳首からビームを出して街を救ったなんて、いったい誰が信じる?その場を見た冒険者が街でその話をしたんだ。どうなったと思う?」


「…どうなったでやすか?」


「一笑にふされたよ。なんなら、彼をバカにする者まで現れて、吟遊詩人たちがやりたい放題さ。命を救われたというのに、許せないね。」


「殺すか、そいつら。」


「それには及ばないよ、街に何体か氷像が増えることになったし、デランっていう冒険者が、少年をバカにする輩をことごとくぶっ飛ばしてしまってね。もう大騒ぎさ。さすがに市民にまでは手を出せないから、広がってしまった噂についてはどうしようもないんだけれどね…。おそらく少年はこうなることを予期して、この街を去ったんだろう。彼がこれまで、どんな人生を歩んできたのか、わかるようだよ。過去にも同じようなことがあったのかもしれないね。」


「ヒルマぼっちゃん…。 次の行き先については、何か聞いてないでやすか?」


「ああ、それなら《《ダンジョン都市》》に向かったと思うよ。僕がおすすめしたんだ。」


「ダンジョン都市、でやすか?」


「ああ。強くなるなら、ダンジョン都市がいいだろうと。それにあそこには、僕の身内もいるからね。」


「そうでやすか…。」


「…行くんだね?アクトゥ君。」


「もちろんでさぁ。ヒルマぼっちゃんを一人にはできねえ。それに、何かと危なっかしいですから、ちゃんと見ててやらねぇと!」


「フフフッ、それがいい。僕も同行したいところだけど、ここから離れられなくてね。もし少年に会えたら、よろしく伝えてくれるかい?」


「了解でさぁ。こうしちゃいられねぇ、早速追いかけt」


「あ、アクトゥさん!気がつかれたのですね!」


「ノノさん!ご心配をおかけしやした…。」


「まったくです。ヒルマ君は勝手にどこかに行ってしまうし。まぁ、噂のことを考えれば仕方ないかもしれませんが…。」


「えぇ、えぇ、せめて一言くらい言って欲しかったですなぁ。でも大丈夫ですぜ!あっしがノノさんの分まで、ガツンと言ってやりまさぁ!!」


「ふふ、ええ。お願いします。」


「よっしゃ!今度こそぼっちゃんを追いかけt」


「何をおっしゃてるんですか?アクトゥさん、瀕死の重傷だったんですよ?まだ入院が必要です。」


「え。」


「あと二週間はここにいてもらわないと困ります。それに、魔族についての報告もしてもらわないとですし、ヒルマさんの依頼完了分の報酬についてもご相談が~」


「…これ、ヒルマぼっちゃんに追いつけるんでやすかね??」


「…幸運を祈るよ、アクトゥ君。」


「はぁ~~~…。」


「ちゃんと聞いてますか?アクトゥさん。」


「あ、はい。すいやせん…。」





 第一章 完

作者のおしり炒飯と申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

本作、カクヨム様にて、先行公開しております。

続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。

https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614

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