第1話 スキル鑑定の儀
「これより、鑑定の儀を始める。」
静かな教会に、厳かな声が響く。
今日はこの村で10歳を迎える子供たちの、スキル鑑定が行われる日だ。
もちろん、この僕もその子供のうちの一人だ。
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スキルとは、すべての人類種に与えられる、個々人の才能のようなもので、強さや利便性、希少性等の観点から以下のような等級に分けられている。
ユニーク(世界に一つ)
特級(国に一人か二人)
1級(かなり少ない)
2級(少ない)
3級(普通)
4級
5級(誰でも一個は持ってる)
また、先天性のものと後天性のものに分けられる。
先天性のスキルは、個々人が生まれながらにして一つだけ持っているスキルのことで、大体3級以上のスキルであることが多い。
一方で後天性のスキルは、当人の努力によって後天的に獲得できるスキルのことだ。
ほとんどの人は4級くらいまでのスキルを、一つか二つ獲得する。
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僕はヒルマ・イトラーク。この村を治めるイトラーク騎士爵家の次男だ。
イトラーク家はうんと昔、魔族との戦いにおいて活躍した騎士の一族で、ご先祖様が魔族の幹部の一人との戦いにおいて大きく貢献し、その褒美としてこの地を任されることになったそうだ。
この村周辺一帯はモンスターが跳梁跋扈する暗黒の森の近くにあり、国王陛下より森の監視とモンスターの間引きが命じられている。
つまるところ、人外魔境との緩衝地点だ。
そんな場所なので当然危険は多い。年に数人は村人に犠牲者が出る。しかし、超危険地帯である暗黒の森に隣接しながらも、年に数人の犠牲で済んでいるのには、理由がある。
この村の住民が皆、戦えるからだ。
村人全員が戦士である村。それが、僕が育ったこのイトラーク村だ。
そんな戦士の村でも、とびきり強いのが僕の父、ダンテ・イトラークだ。
父さんは生まれながらにして剣豪のスキルを持っており、巨大な太刀で魔物を一刀両断にしてしまう。剣豪のスキルは1級スキル。とても貴重なスキルで、この国において父さんの名を知らない者は少ないだろう。
父さんに続く実力者は、僕の兄であるガルマ・イトラークだ。
ガルマ兄さんは魔法剣のスキルを持っており、双剣に魔法を纏わせて戦う。
魔法剣は2級と、なかなかレアな戦闘専門スキルで、王都でも兄さんの名を知るものはそれなりにいるらしい。
僕も父さんや兄さんのような、国に名が知れた戦士になりたい!
兄さんの魔法剣は母さん、アリア・イトラークの先天性スキルである魔術士の色を受けて生まれたのかもしれない。剣に魔法を纏わせて戦う姿は、本当にかっこいいんだ。特に炎を纏わせた斬撃はとても鮮やかかつ高威力で、植物系の魔物に対しては効果てきめんだ。
僕も兄さんのような、かっこよくて強いスキルがいいなぁ。
こう、剣の先から電撃を放ったりしてみたい。そんなスキルがあるかは分からないけど…。
「では、呼ばれた者は前へ出て、この水晶に触れなさい。その後私がスキル名を読み上げる。」
各村や街に一つはある教会には、必ずこの鑑定水晶がある。この鑑定水晶に触れると、当人の魔力を読み取って、スキルを判別してくれるらしい。なお、スキル名は水晶の持ち主として登録されている神官にのみ、脳内へ直接伝えられるそうだ。
「農家の息子、ビリー。」
男の子の名前が呼ばれた。ビリーと呼ばれた元気そうな少年は、水晶の前へと進み出た。
ビリーが水晶に触れると、水晶が光り出した。
「斧術士ッ!」
神官にスキル名が伝えられる。斧術士は3級スキルだが、戦闘にも木の伐採にも使える有用なスキルだ。ビリーも満足そうにしている。
「よろず屋の娘、アンジェ!」
続いて女の子が呼ばれた。アンジェが水晶に触れると、先ほどより少し強い光が水晶から放たれた。
「…鑑定ッ!!」
おおっ!と歓声が上がる。鑑定は非常に有用な2級スキルで、人物や物に対して意識を集中することで、それがどのような物なのか、またはどのような人物なのかがぼんやりと分かる、というものだ。毒物の判別や贋作の看破、危険人物の判別など、用途は無限大だ。しかし人に使う場合、鑑定された人間は違和感を覚えるようなので、注意が必要でもある。
それから何人かが呼ばれた。弓術士、魔術士、裁縫など、有用なスキルばかりだった。
「イトラーク騎士爵家次男、ヒルマ・イトラーク!!」
来た…!ついに僕の番がやってきた。
ドキドキしながら、僕は前へ進み出た。
今、目の前に水晶がある。近くで見てみると、ゴツゴツしていて尖ったところがあり、加工された物と言うよりは、自然界にあったものを削り取って持ってきた、と言った方がしっくりくる。美しい白い結晶だ。
恐る恐る水晶へと触れる、ひんやりとしていて、見た目の通りゴツゴツしている。あ、なんだかほんのり暖かくなってきたなぁ、と思った瞬間。
カッ!!!!
閃光が部屋を真っ白に染め上げた。
部屋にいた子供たちやその親は皆、一様に目を覆った。
「こ、これは…ッ!!!ユニーク、スキル…!」
神官の驚愕した様子の声が、僕に届いた。
それと同時に、部屋中の人間が騒然とする。
まばゆい閃光は次第に落ち着いていき、部屋の中は未だざわざわとしている。
まさか僕に、ユニークスキルが発現するなんて…!一体どんなスキルなんだろう…!伝説に謡われる勇者や剣神、もしくは母さんの魔法色を継いで、賢者…!?
期待に胸を躍らせ、神官の顔を見た。
神官の顔は、喜んでいるわけでもなく、落ち込んでいる訳でもなかった。
ただ、困惑しているようだった。
「…ムだ。」
「は、はい?」
「…―ムだ。」
聞き取れない。
「す、すみません。聞き取れなくて…。」
「ち、チクビームだ!!!!」
「…え?」
な、何…?ち、チク、ビーム…?
「ブフッ!」
誰かが吹き出す声が聞こえた。
「クフッ」
「クスクス」
「フフッ」
あちこちから、笑いをかみ殺す声が聞こえてくる。
僕は恥ずかしさのあまり、泣き出してしまいそうになった。どうしようもなく恥ずかしくて、情けなくて、涙で滲む視界で、助けを求めるように父さんの顔を見た。
父さんは、失望しているような顔だった。
兄さんは、笑いをこらえていた。
その後のことは、ほとんど何も覚えていない。
ただ呆然と、父さんと兄さんの後に続いて、家に帰った。
何か声をかけられた気がするけれど、僕の耳には届いていなかった。
その日から、僕の地獄は始まった。
作者のおしり炒飯と申します。
初めての長編作品のため、至らぬ点多いと思いますが、
どうぞよろしくお願いいたします。
カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




