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ある王宮の日常とささやかな非日常について(シリーズまとめ版)  作者: あいの あお
見世物騎士の日常と一目惚れについて

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2.見世物騎士

 ポーリーンの夫となったアンソニーは国内でも指折りの貴族、オブライエン侯爵家の三男だ。ポーリーンとの結婚に際して侯爵家が持っていたいくつかの爵位の内、スタンリー子爵を継いでいる。

 ゆえにポーリーンはスタンリー子爵婦人なのだが、そもそも本人が騎士爵を持っているので普段はそちらで通している。スタンリー子爵夫人と言われるのはどうも背中が痒くなるらしい。


 そんなポーリーンは第二騎士団に所属しており、第三隊の分隊長を拝命している。戦場に於いて真っ先に切り込み血路を開く先駆けの騎士であり、職位は高くないが正真正銘の実力者である。

 対するアレクシアは第一騎士団の所属。実戦を主とする実力主義の第二騎士団とは違い、第一騎士団は家格と容姿を重視する。その職務は主に王宮内における王族の警護や式典等での警護…というか、様々な場面で花を添えるお仕事である。 


 ポーリーンの事件とは、とある夜会でポーリーンに危ないところを助けられてポーリーンに恋をしたお気に入りの秘書官アンソニーが婚約を望んだため権力でねじ込んではみたが気に入らず、結局自分のおもちゃが取られるのが嫌な駄々っ子王弟殿下があの手この手でチマチマとポーリーンに嫌がらせを繰り返した。

 それに乗じて調子に乗った周囲がポーリーンに更なる嫌がらせを繰り返し、第二騎士団及び第三隊に多大なる被害を出した結果、ポーリーンが婚約解消のうえ騎士を辞すと言い出した…というものだ。


 そんなことはあの秘書官が許すわけはないので、普段の愛嬌たっぷりの可愛らしい仮面を脱ぎ捨ててポーリーンに嫌がらせをしていた連中を冷え切った笑顔で次々と追い落とし、婚約解消どころか国王陛下直々に婚姻の勅令と御璽を出させるに至ったものだ。

 小耳にはさんだだけだが、騎士団のみならず騎士団と関わりのある複数の部署の顔ぶれが上層下層関わらず二割ほど変わったらしい。子犬秘書官、恐るべしだ。

 この件で王弟殿下はまたも各方面からこってりと絞られ国王陛下にも何かあったようだが、下々が知るべきことでもなく下々が伺い知れるものでもないので、様々聞こえる噂にもアレクシアは耳を塞ぎ沈黙を貫いた。


 かく言うアレクシアも少しだけ手を回した。秘書官殿がいかようにもやるだろうと思ったので『掃除』にはあまり手を出さなかったが、第二騎士団が困らないように物資や裏方の部分でこっそりと伝手を使った。王弟殿下にばれると面倒なのでこっそりと、だったが。


 ちなみに、ポーリーンに嫌がらせをして姿を見かけなくなった者は実は第一騎士団にもそれなりに居た。ほとんどがポーリーンの実力への嫉妬や秘書官殿への横恋慕(一部令息も含む)だったが、最も多かったのはポーリーンにお目当ての令嬢が熱を上げているから便乗したという、情けないほど完全な逆恨みからだった。いや、他の理由も結局逆恨みからなのだが。


 第一騎士団に所属する見目麗しく家柄も大変よろしい高位貴族家の令嬢令息方は、御多分に漏れずそのプライドも非常に高い。それがどんな内容であっても、第二騎士団所属で自分より爵位も低く容姿も劣るはずのポーリーンに負けることそのものが許せないのだ。

 アレクシアからすればどいつもこいつも実力も内面も比べることすらおこがましいほど完敗だと思うわけだが、それが分かる人材ならばたとえ所属が第一騎士団だったとしても、ポーリーンに負けぬよう剣技にも自分磨きにも努力を惜しまないだろう。アレクシアのように。


  とはいえ、その努力に気が付いてくれる人と言うのもまた多くは無いわけで。大抵の場合、第一騎士団の騎士は実力のないお飾りで、ただただ王家と王族に花を添えるだけのいけ好かない集団だと一括りにしてくれる。第一騎士団には実際にそういう騎士も多いのでアレクシアとしてもあまり強いことも言えないのが悲しいところではあるのだが。


 その玉座を飾る第一騎士団の花々の中でも特に見目麗しく、剣舞の名手であり、ポーリーンと共に数多の御令嬢方の視線を二分して欲しいままにする女騎士アレクシア・ガードナーは、やっかみや羨望、侮蔑などの感情をない混ぜにしてある一部からはこう呼ばれている。


―――『見世物騎士』と。


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