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ある王宮の日常とささやかな非日常について(シリーズまとめ版)  作者: あいの あお
第八章 王子殿下の冒険と王家男子の事情について

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66.会いたい


 頭をよぎった面影に視線を落とせば、風もないのに燭台の灯が揺れているのかフレデリックの影がゆらゆらと揺れている。


「…………叔父上、僕はまた、アイザックとレナードに会えるでしょうか」


 影を見つめたまま俯いていると、叔父がまたフレデリックをひょいと抱え上げ、そのままフレデリックを左腕に座らせるように抱き上げた。


「フレッド、会いたいか?」

「僕は………」


 俯いたままでじっと唇を噛みしめていると、とん、とん、とゆっくりと叔父が背を叩いた。あやすような宥めるようなその速度が心地よくて、フレデリックは目を閉じると小さく息を吐いた。


「僕はずっと、レナードのことも、アイザックのことも、信じることができていませんでした。ずっとずっと、思い込みでふたりを判断して……ちゃんと真っ直ぐに見ようともしなかったんです」


 ぐっとフレデリックの胸が重くなる。見ようとしなければ、何も見えはしない。気付いてしまえばあまりにもいたたまれなくて、いつも心のどっかでふたりに謝っていた。


「レナードもアイザックも、いつだって目の前にいて僕に向き合ってくれていたのに、僕が見ていたのは、聞いた言葉を鵜呑みにして……分かった気になっていた、ふたりの影だったんです。ちゃんと目を開いてみれば、すぐに違うと気づけたはずなのに。だからそんな……そんな酷い僕にこんなことを言う資格なんて無いかもしれないけど………」


 今ではもう朧になった影に、フレデリックは目を背けるように顔を横に向けた。ゆっくりと首を横に振り、フレデリックはぐっと顔を上げて叔父を見つめた。


「だけど、会いたい、です。ふたりに」


 目が合って「そうかよ」と笑った叔父は、今までで一番優しい目をしてフレデリックを見つめていた。


「あいつらが居ないのは、嫌か?」

「はい、嫌です」

「そうか。嫌なこと、ひとつ見つけたな?」

「嫌な、こと」

「おう」


 頷いて口元に笑みを浮かべた叔父はフレデリックを抱えたまま寝台まで行くと寝台の端に腰かけ、そのまままたフレデリックを椅子に座らせるように膝に乗せて後ろから包むように抱きしめた。


「だったら、頑張らないといけないな。お前の側に残るか去るか、決めるのはあいつらとあいつらの家だ。お前にできるのは、誠心誠意『あいつらが居ないのは嫌だ』と伝えることだけだ。………できるか?」


 ごつり、とまたフレデリックの頭に叔父の顎が乗った。先ほどと同じ重さに、今度はうっかりと上を見ないようにしようと、フレデリックは少しだけきゅっとお腹に力を入れた。


「分かり、ません。でも、叔父上は、何でも、できるのではなくて、何でも、やるんですよね?やらなきゃ、できるかどうかも分からなくて。でも、やらなきゃ、できる日は来なくて」


 とても、単純明快だと思う。ただ、実際に動くのはとても怖い。駄目だったらどうしよう、できなかったらどうしよう、逃げたい気持ちがどんどんと湧いてきて、フレデリックの背中がどんどんと丸くなってしまう。それでも。


「僕は、ふたりと一緒にいたい。だから、やります。できなくても、僕はやらなきゃ。恐くても、やらなきゃ………」


 フレデリックはふたりがいないのが嫌だ。フレデリックは、叔父のようになりたい。だから、やる。それだけのことなのに、フレデリックの体がまるで怯えるようにふるりと震えてしまった。


「………そうかよ」


 そんな自分が情けなくてフレデリックが唇を引き結んで俯いていると、フレデリックを抱える叔父の腕にぎゅっと力がこもった。


「お前は凄いやつだなぁ…」


 頭上から笑い混じりに呟く叔父の声が聞こえる。何だかとても嬉しそうに聞こえて、フレデリックはぱちりと、目を開いた。


「そうだな。できないからやらないんじゃ、何も変わらないな」

「叔父上?」


 フレデリックを抱えたまま、叔父が囁くように言った。背中越しに低く柔らかく響く声にフレデリックの顎が少し上を向く。叔父が頭上で顔の位置を変えたのか、ほんの少し重さのかかり方が変わった。


「まずはお前の力でやってみろ、フレッド。助言はしてやるが、助けはしない。忘れるな、フレッド。これはお前自身が築くべき信頼であり絆だ」

「っはい、叔父上」


 叔父の言葉にフレデリックが思わず上を向くと、叔父は「おっと」と今度は頭と顎がぐりっとなる前に頭を浮かせた。


「あ、すいません」

「はは、危なかったな」


 笑った叔父はフレデリックの顔を覗き込むとにやりと笑ってぽん、と頭を撫でた。


「さすが叔父上……同じ失敗はしないんですね」

「いや、しょっちゅう似たことをやらかして小言を貰うけどな?」


 フレデリックが感心して目を見開くと叔父が困ったように眉を下げ、へらりと笑ってフレデリックの頭に軽く額をこつん、とぶつけた。


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