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ある王宮の日常とささやかな非日常について(シリーズまとめ版)  作者: あいの あお
第六章 アマリリス令嬢の恋と友情、ぬいぐるみについて

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143.グローリアの大切な三人(終)


 ふふ、と少し声が出てしまう。そんな自分に苦笑しつつも今日の訪問のことを話た。

 本当に、情けないほど甘やかされただけだ。アンソニーに庇われ、ジェサイアに気遣われ、ベンジャミンには至れり尽くせり世話を焼かれただけ。結局、グローリアは今日何のために王弟執務室に行ったのだろう。そもそもなぜ呼ばれたのかも分からないのだが。


「わたくし、ベンジャミン様のことを兄よりも兄らしいと思っておりましたけれど、どちらかというと兄というより父らしいと認識を変えましたわ」


 グローリアが思い出し笑いをしつつ言うと、モニカが何とも言えない顔で首を傾げた。


「ねえちょっと、フェネリー様はそれで良いの?」

「自称、第二のお父様だそうですわ」

「その通り過ぎてむしろ笑えないわね」

「ええ、ふふふ」


 ひとしきりベンジャミンの話題で盛り上がると、話が途切れたところでグローリアは紅茶をひと口飲み、小さくため息を吐いた。


「わたくし、思い知らされましたの」

「ん、何を?」


 焼き菓子を口に入れたばかりのモニカが手で口を抑えつつ首を傾げた。


「わたくしはまだ、子供なのだと」

「どういうこと?」


 紅茶で焼菓子をしっかりと飲みこむと、モニカがさらに首を傾げた。


「わたくしではまだ同じ舞台に立つことすらできないのですわ。初めから、勝負になどなるはずもございませんでしたのよ」

「諦めるってこと?」

「まさか」


 グローリアが首を横に振る。


()()、同じ舞台に立てないだけですわ」

「ああ、なるほどね」


 モニカが胸の前で両の掌をぱちりと合わせた。


「勝負の時は今では無い、ですね」


 ドロシアが静かに頷くと、サリーがぱっと嬉しそうに頬を染めた。


「目指すのね?」


 モニカがにやりと悪い顔で笑う。


「わたくし、必ず良い女になりましてよ?」


 グローリアもにやりと、悪い顔で笑ってみせる。


「ウィンター商会がお役に立てますか?」

「もちろん。頼りにしておりますわ、ドロシア」

「私、何もありませんがいつでもお側にいます!!」

「何を言うのサリー。あなたが泣いて笑ってくれることがどれほど力になると思いますの?」

「わたくしも側にあるわよ。わたくしの時間が許す限り」

「側にあれずとも、わたくしたちはみな、いつもそれぞれの傍らにおりますわ」


 顔を寄せ合いお互いの顔を見合わせると、誰からともなく破顔した。 

 

「まずは成人までにできることをいたしますわ」

「そのまま育てばいいんじゃないの?グローリアは」

「変わらずにいて欲しいです、グローリア様には!」

「そうですね、変わらずともできることは沢山ありますから」

「あら、頑張るのはわたくしだけではありませんことよ?」


 とたんに部屋が華やかに騒がしくなる。父の言っていた通りだ、今日もきっと遅くまで騒がしい。 


「あ、そうだドロシア。あなたを紹介して欲しいって家が何家かあるんだけど紹介しても良いかしら?」

「モニカ、確かなお家ですの?」

「当たり前でしょう?わたくしが紹介するのよ、徹底的に厳選してるわよ!」

「でしたら良いのですわ。ベルトルト様やセオドア並で無いとわたくし、潰して回りますわよ」

「ちょっと怖いわね!ベルトほどなんて中々いないけどたぶん大丈夫よ!!問題はドロシアの好みだけ…のはず……」

「ドロシアの好み……私、想像つきません……」

「わたくしも想像がつかないからそこだけは怖いのよね……」

「ご安心ください、私自身が分かっておりませんので」


 誰かが笑えば皆が笑い、誰かが眉を下げれば皆が体を寄せ合う。夕食の時間が来るまで、いや、夕食が終わった後もグローリアたちの華やかな笑いはおさまるところを知らない。アマリリスとはよくぞ言ったものだとグローリアは思う。もちろん、嫌味などではなく。


 グローリアの残り時間は少ない、だが無いわけでは無い。いざとなればベンジャミンもいるし、イーグルトン公爵家の公女グローリアならば多少嫁き遅れたところでそう問題では無いだろう。ぎりぎりまで足掻いてみる価値はある。首を縦に振らせてしまえばこちらのものだ。


 グローリアたちはまだ十代の少女だ。これからいくらでも伸びしろはある。今はまだ届かなくともずっと届かないとは限らない。まだ時間はある。諦めるには、早い。


――――覚悟してくださいませ、殿下。


「わたくし、良い女になりましてよ」


 ぽつりと呟いたグローリアにぴたりと動きを止めると、三人三様笑いながらグローリアに抱き着いた。幸い客室の寝台は広い。四人で団子になって眠っても十分な広さがある。


 グローリアたちが大人と呼ばれるまであと少し。おしゃべりな少女たちではいられない日がもうすぐ来る。今だけだと知っているから、グローリアは今この時を大切にしたいと願う。


 話し疲れて大切な友人と大切な思いをしっかりと抱きしめて眠る少女たちに、様子を見に来た侍女たちがそれぞれに掛け布を掛けて微笑み合い、起こさぬよう静かに燭台の火を消した。




ここまでお読みいただきありがとうございました。


十六歳のグローリアの物語はここまで。グローリアが大人になればまた大きく動き出します。

このあとも視点を変えながらまだまだ続きますので、ぜひまたお読みいただければ幸いです。


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