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Dragonute





「この石を、飲み込んでほしい」




私は手のひらに収まる小さな黒い石を、目の前の巨大な竜に差し出した。

竜は瞳だけ動かして、怪訝そうに石と私を交互に見やる。当たり前の反応だ。


「見ての通り、怪しい石だ。いくら私が、連れ去られた貴方の子を取り返してきたからと言って、こんな願いをやすやすと聞く必要はないと思う」


そうは言いつつも、私は手を下げたりはしなかった。竜に石を差し出し続けたまま、もう片手で目深に被っていたフードを取り払い、ゆっくりと目線を合わせて竜を見つめ返す。


『…真意を』


竜特有の、言葉を使わず相手の心に直接語り掛ける「声」が響いてきた。「声」は女性特有の音域の高さと、柔らかい雰囲気があり、少しホッとする。

そこで初めて、私は自分が緊張していたことに気付いた。竜との対話。生を受けてから300年の間、成そうとすらしなかったことを、今しているのだ。

私は一度目を閉じ、深呼吸をすると目を開け、竜に人の言葉で語り掛けた。


「この石は「賢者の石」と呼ばれている。私が錬金術師時代に製法を編み出したものだ。

その中身は、100人の赤子の命を奪って凝縮したゲテモノであって、石ですらない。

「これ」には、私の魂が死後乗り移るよう、魔法で仕掛けが施されている。

本来はこれを妊娠可能、もしくは妊娠初期の人間の女性に飲ませて、生まれる赤子の肉体と私の魂を結び付け、私自身が「転生」するために作ったものだ。

すべては竜との戦に、四大元素の大魔導士率いる人類が勝利し続けるために…」


竜が機嫌を損ねたのが伝わってきた。表情が変わったわけでもなく、何か「声」を発したわけでもないが、周りの空気がずしりと重くなったのを感じた。


『…そんなゲテモノを私に飲み込めとは、いかなる了見か』


竜の「声」にすごみが増している。柔らかさが一切なくなった。私が知っている「討伐すべき」竜の醸し出す、危険なオーラが辺りに満ち、ビリビリと肌を刺激する。

「竜の威厳」 人間ごときちっぽけな存在が、真正面から食らえばひとたまりもない、悠久の時を生きる生物の持つ、他を圧倒する力。

それを一身に浴びて、思い出す。遠い昔の記憶。

はじめて、生まれてはじめてこの力を全身に浴びた時、私は身が竦みながらも、心密かに感じたのだ。

この圧倒的な力、強さを、美しい、と。


「…つかれたんだ」


口をついて出たのは、考えていた台詞とは違う本音。呟くように発されたその響きに、竜の威厳が弱まる。

出てしまった言葉は引っ込められない。私は上辺の自分を取り払い、ちっぽけな人間のひとりごとを語り始めた。


「石の力を使って300年、ずっと竜と戦い、殺し続けてきた。いつの間にか私は人類の筆頭。石用の赤子を喜んで捧げられる身になった。

最初の石を作ったときのことは、もやがかかったかのように思い出せないが、無我夢中だったのは覚えている。

守りたかったものを守るために、強引な手をいくつも使ったことも…。

やがて、私が戦わなければ人類は死滅するとまで言われるようになり、いまだ戦い続けているこの事実に……とても、つかれたんだ」


竜は警戒を解きはしないが、威圧をやめて黙って私の話を聞いてくれていた。傍らには丸くなってすやすやと眠る、桃色の鱗の子竜がいる。

その寝顔は撫でたくなるほど愛らしい。どんな生き物の子でも、赤子というのは本当に愛らしく、神聖だ。

自分はずっと、その神聖さを汚し続けてきた。私は、そういう命なのだ。

だから


「せめて、竜を知りたいと思った。

竜を知れば、この戦いの、己の戦いの意味が知れると思った。

人と竜の戦いの終止符を探したいとか、そんなところまで行けるかはわからない。

ただ、私はあまりにも、殺し続けてきた「竜」のことを、何も知らない。それに気づいた。

だからせめて、この転生の旅の終わりに「竜」を知りたい。

竜として生まれ、竜として生き、知ってみたい。

…いわば、私の単なる欲望だ」


石を差し出していることが、恥ずかしく思えてきた。手を引っ込めようとした途端、竜が動き出し顔を近づけてきた。ぬるりとした感触が手のひらを滑り、石が消えた。

驚いて竜を見ると、ごくりと大きな音を立てて、石を飲み込んだところだった。


「…私が言うのも難だが、よかったのか…?」


すると竜は目を細め、笑うかのような顔で私を見降ろしてきた。


『面白い。お前の話に乗ってやろう。

我が子として生まれてくるのが、元竜殺しというのは気に入らないが、お前が竜に生まれ変わるなら、人間の戦力を大幅に削れるのもまた事実。利点であろう?

竜に生まれる気があるのなら、生まれるが良い。知りたければ、知るが良い。

知識とは、何物にも代えがたい、甘美な褒美なのだ。それをとくと味わうがよい』


竜はグルル…と喉を鳴らし、機嫌の良さを伝えてきた。私の本音を気に入ってくれたようだ。


「………感謝する」


万感の思いを込めて、その一言を発した。

竜は眠る桃色の子竜をやさしく口で小突き、起こした。子竜は竜と少し見つめ合い、「会話」をしたようだ。寝ぼけまなこのまま、バサバサと翼を動かし、ふらふらと空に飛びあがった。

上空までなんとか飛んで行ったのを確認すると、竜は私を見つめて、やさしく語り掛けてきた。


『竜は子を産むと、次の出産までには100年かかる。

お前が次に生まれるとしても、早くて100年後だ。まあゆっくりしていろ。

それに、人の体ではうまくいった魔法の石でも、竜の体にも当てはまるとは限らない。うまくいくかどうかは賭けだ。

だから、お前はお前の「人生」を、まっとうしておくがよい』


それだけ言うと、翼を大きく上空に広げ、一気に振り下ろす。


バサッ!!


木々を傾がせるような風を起こし、竜は空に飛びあがった。バサ、バサと音を立てて子竜のいる空域まで飛び上がると、一度空で弧を描いてから、彼方へ向けて飛び去っていった。

月のない夜だ。星の瞬きは多いが、周囲が月光で明るく照らされない分、竜の親子も安全に棲み処まで飛んでいけるだろう。

私はフードを被りなおし、竜との対話のために用意した「魔光灯」たちがどうなったか、辺りを見回した。

刺激を与えると小一時間ほど光を放ち浮かぶ、魔力のこめられたアイテムだが、竜の翼が起こした風圧で彼方に吹き飛んだか、壊れたかしたみたいだった。

私はアイテムポーチから無事な魔光灯を一つ取り出し、こすって光を作った。とりあえず吹き飛ばされていない、目につくものだけでも回収し、森の一角で人と竜が話していた痕跡を消していく。

あらかた拾い終え、浮かぶ魔光灯を手元に寄せて、森の出口を目指そうとすると、進行方向に人影が見えた。

私に気付かれないほどうまく気配を消せる人間は、現代には一人しかいない。光を掲げて名前を呼んだ。


「いたのか、ギルバート」


光に照らされた彼の顔は、そこまで歪むかというほど不機嫌そうで、思わず吹き出してしまった。それも面白くなかったのだろう、彼のこめかみに青筋が浮かぶ。

ドスドスと足音を立てて私に近寄ると、その勢いのまま胸倉を掴んできた。被っていたフードが外れ、近い距離で思いきり睨まれる。

だが彼は、言葉を発しようと口を大きく開いて、ふと何かに気付いたように止まり、ゆっくり口を閉じた。そのまま、しばらく間近の距離で見つめ合う。

私はギルバートの、真ん中から左右に分けた赤くて長い前髪の一房を、何の気なしに眺めた。尻尾だ。先ほどの子竜の尻尾を思い出させるのだ。言ったら怒鳴られるので、口は噤んでおいた。

やがてギルバートは舌打ちをすると、胸倉を掴んでいた手を乱暴にほどき、私に背を向けて腕組みをした。衣服を正しつつ、彼の言葉を待つ。


「……………本気かよ」

「うん、本気だ、すまない」

「なんでっ…!?なんで、何も相談してくれないんだ、俺たち幼馴染だろう?!」

「それは私の「肉体」と君の関係の話だ。私自身は300年前の…」

「うるせーな知ったこっちゃねぇよ!!俺たちは幼馴染なんだ!!俺はお前の親友で、お前の理解者なんだ!お前を一人にはしない…!!」

「………ありがとう」

「…今からでも、考えなおせねーのか?お前が…竜になるなんて…」

「…ずっと考えて決めたことなんだ。私は、竜を知りたい」

「………そんなことで戦いを終わらせようなんてしなくていい。いつか俺が竜なんか根絶やしにしてやる!!

俺はパルドラス三国同盟が認めた、槍を極めし勇者だからな、これからもお前と共に戦って、人間の平和な世界を…」

「ギルバート」

「…何だよ」

「ずっと、誰にも言わないできたことだけれど、竜は、美しい生き物だよ」

「…は?」

「初めての転生をしたころは、私も竜を憎む気持ちでいっぱいだった。大切なものを奪われた復讐のために必死だった気がするよ。

…でも、私は心のどこかで、竜を美しい生き物だと思っていたんだ。それを思い出したよ」

「…だからなんだってんだ!!それで竜になるって、ふざけてんのか?!俺はそんな理由でお前を失っても納得できねーよ!!」

「ギルバート、石はもう、先程の竜が飲み込んでくれたんだ」

「は…?!石って、賢者の石か…?転生に必要だっていう…」

「そうだ。あの石は、今の私の魂とすでに紐づけがなされている。今の私が死ねば、私の魂は自動的にあの石に引き寄せられ、次なる命として生まれる。

もう、私が竜になる未来は、変えられないのだ。うまく転生できれば、の話だがな」

「…………………」


ギルバートが言葉をなくした。その背中から絶望が色濃くにじみ出る。

肩を小さく震わせ始めた「親友」を、さすがに申し訳ない気持ちで眺めた。


「…すまない、こんな思いをさせたかったわけじゃなかったんだが…」

「…じゃあどんな思いをさせたかったんだよ、お前はいつもそうだ…!強いからって何でも一人でやろうとして、やり遂げちまって、全然俺らを頼ろうとしねぇ…!

お前、俺らをどんな風に思ってたんだよ?!バカの若造か?死にやすい弱者か?そうだよな、親友って思ってたのは俺の方だけだったんだよなぁ!?」

「…すまない、もっと傷つけないように、話をしておくべきだった…」

「今更おせぇよ!!もう竜転生確定してから反省してんじゃねぇよ…。何なんだよ、バカ野郎…」


後半の声は尻すぼみに小さくなり、泣き声のようにも聞こえた。

転生を繰り返し、「人」でなくなった時から、私と「人」との間には距離ができていた。私も寄らず離れず、「人」も同じ。それが当然だと思った。

「人」を守るために化け物になった。魔法の腕を磨いた。なのに守るはずだった身近な「親友」すら泣かせてしまった。

いつも、いつまで経っても、自分は中途半端。今回も、中途半端なまま「人」をやめてしまう決断をした。何も成し遂げていないのに。

情けない。こんな自分から、こんな運命から、逃げ出したくなって竜に取引を持ち掛けたのかもしれない。

300年も生きて、それでもこんなにちっぽけな自分。他の人間が人類を導いた方がよかったんじゃないのか、何度もそう思ったことがある。

そのくらい、弱い私を…「親友」として、支えてきてくれていたのだ。彼は。


「………ありがとう」

「…うるせぇ、それじゃ何もかもが本当に終わりみてーじゃねぇか。感謝なんかすんな」

「…すまない」

「うるせぇ」

「………今まで生きてきて、初めての「親友」だ」

「…嘘つけ。300年も生きてんだから、大事な奴くらいいただろ」

「………忘れてしまったから、今は君が初めての親友だ」

「うるせぇよ…」

「ギルバート」

「何だよ」

「竜になっても、君を忘れないよ」

「…いや、お前それ絶対忘れるやつだよな?さっき言ってたみたいに」

「………」

「黙んなクソ野郎。…忘れんじゃねぇぞ、俺も忘れねぇから」


ギルバートは背を向けたまま深呼吸すると、私を振り返り、不器用な笑顔を浮かべた。


「絶対忘れねぇから。何百年経とうが子々孫々まで語り継ぐから。だから、またな、レイノルド」


私の名を呼ぶ彼を、目に焼き付けた。何百年も忘れずにいられるように。祈りながら。



彼が人里へ向かって歩き出したのを見届け、私は竜の森の奥深くへ入っていく。人にとっては禁忌の領域だ。

もう今の私に、竜と戦うことはできない。人里で暮らせば、力を求められ、人に戦うことを促されるだろう。だから人里に帰ることもできない。

竜の森、竜の暮らす地域は、「属性」の力が濃く、普通の人間なら踏み入っただけで気を失ってしまう。

過去に領域に踏み込み、転生できることを利用して、無茶な方法で属性の力を手に入れている私は、森の奥でも正気を保つことはできる。

だが、「属性の奔流(ほんりゅう)」、目に見ることすらできる、川のようなあの流れに身を浸せば、おそらく人の身など塵と化すだろう。

私の次の転生は、最短でも100年はかかると言っていた。なら人の身で有意義に過ごせることを見つければよいのだろうが、私の心は決まっていた。


人を知る身で、竜を知る。その先のことは、知ってから考える。


新たな世界への扉を前に、恐怖心と好奇心が混ざり合う。私の足は自然に「属性の奔流」に向かっていた。

人の生を終わらせ、竜の生を得るために。



新たな化け物、「竜人(りゅうびと)」になるために。























目を開けると、そこは真っ暗闇だった。

だがレイノルドは慌てない。本能が「殻を破れ!」と指令を出しているのが分かる。ここはきっと、卵の中なのだ。

「属性の奔流」に身を躍らせたのは、つい昨日か数時間前のことのような気がしているが、きっとあれから100年が経ったのだろう。外の世界がどうなっているか、気になった。

レイノルドは手で口元を触ってみる。固いくちばしのような形をしているのが分かった。これで殻を破ればいいのだろう。試しに手近な壁を小突いてみた。ぐらりと壁ごと揺れる。

外が急に騒がしくなった気配がする。言葉として聞き取れはしないが、誰か外にいるのだろう。レイノルドは、くちばしを今度は強く壁に突き立てた。パリ、と音がして、光が開いた穴から漏れてくる。

よし、このままゆっくり殻を破ろう、そう思った時----


「えーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!!」


バキバキバキバリバリバリ、とすごい音を立てて、レイノルドの周りの壁が一気に崩壊していく。破片が体に刺さりかけて、慌てて身を縮こまらせた。


「こらっ!!!エメ!!!!」


ゴヅンッ!!と固いものと固いものがぶつかったときのような、鈍い音があたりに響く。レイノルドがそっと目を開けると、そこには小さめの桃色の竜が、一回り以上大きい竜に頭突きをされている光景が広がっていた。


「何やってんのあんたは!!中の子が出てくるまで待てって言ったでしょう?!怪我したらどうするの!?」

「だってぇ~~~…待ちきれなかったんだもん!」


ゴヅン!再び鈍い音が響き渡り、桃色の竜は頭を押さえてうずくまった。

レイノルドは、とりあえず体に張り付いた殻の破片を手ではがしていく。そこで初めて気づいた。自分の手の指が5本あるのだ。まるで人間の手のような形をしている。

普通、竜の前足の指は前に3本、後ろに1本という形で伸びている。こんな、人間の手の形をした竜なんて、レイノルドは見たことがなかった。

しかも爪が出し入れ可能方式だ。竜の爪は常時出たままの状態のはず…不思議そうに、自分の爪を出したり引っ込めたりしているレイノルドに向かって、言葉ではない、優しい「声」が語り掛けてくる。


「…ああ、「人間の記憶」が手に宿ったのね。やっぱりあなたはあの時の魔導士なのね」


レイノルドが顔を上げると、眼前に目を細めた竜の顔があった。グルル…と喉を鳴らし、機嫌がよさそうである。


「初めまして、かな?お久しぶり、かな?えっと…」

「私はミトよ。今のあなたの母親にあたります。改めてよろしく」

「…ああ、よろしく。私は…」


名を名乗ろうとした時、視界にものすごい勢いで、桃色の何かが飛び込んできた。

ガバッと音付きで現れたそれは、目を爛々と輝かせながら、レイノルドの顔を覗き込んでくる。


「あたしっ!!!あたしエメ!!!あなたのお姉ちゃんよっ!!!!よろしくね!!!!

弟くんなのねっ!!どっちが産まれてくるのか楽しみだったんだ~!!!

お姉ちゃんね、水遊びが大好きなの!!!弟くんとも一緒に水遊びしたいなっ!!!

あと竜は「属性」の力で生きていけるから、普段は食べないんだけど、たまに食べるおいしいお肉も一緒に…」


レイノルドが思わず体を仰け反らせながら、その猛攻をしのいでいると、桃色の竜は接近時と同じくらいの勢いで視界からいなくなった。母竜の手により吹っ飛ばされたのだ。

ドズゥン…、重いものが地面に叩きつけられる音を立てながら沈んだエメは、気を失ったのか沈黙した。


「…ごめんなさいね、100年経ってもあの子は落ち着きというものをちっとも身に着けてくれなくて…」

「…元気なお嬢さんだ」

「…何の話だったかしら」

「私の名前の話だったかと。あと一つ気になることがあるのだが…」

「あら、何かしら?体重とか年とかは聞いちゃダメよ?」

「…竜の世界でも、女性にそれを聞くのは失礼なのだな。覚えておく。えっと、貴方の話し方だ。最初に会った時とまるで別の竜のようなのだが…」

「え?そう?…ああ、あの時は確かに、こんなしゃべり方してなかったかな?

ほら、あなた人間だったじゃない?だからこう、「竜っぽく」しゃべってあげようかなー、なんて、サービスだったのよ?こっちが本当の話し方だから」

「…竜の世界にもサービスはあるのだな。覚えておく。そうか、こっちが貴方の本当の口調なのだな…」

「なんかいちいち堅っ苦しいわね。あなた友達からつまんない奴って言われたことない?」

「…私を親友だと言ってくれた人からは、「お前と話してると、たまに鳥や犬や猫の方がマシな返事してくれるなーと思うことがある」と言われたことが…」

「…ずいぶんなこと言われてるわね。少し身に着けた方がいいわよ、社交性」

「…覚えておく」


竜として生まれて、初めての教育が社交性についてだったことに、新鮮な驚きを覚えるレイノルドだったが、それを告げるとミトにさらに呆れられそうなので、黙っておくことにした。


「さて、名前だったわね。何がいいかしら…あなた、人間だった時の名前は何て言うの?」

「レイノルド・アンダーソンだ。…まあ、多くの人間は私のことを「魔導士様」と呼んでいたので、あまり呼ばれ慣れてもいないのだが…」

「じゃあルドにしましょう」

「早いな」

「竜の名前は2文字と決まっているの。レイだとちょっとかっこよすぎるから、あなたならルドくらいでちょうどいいんじゃない?」

「貴方が気に入ったのならそれで構わない」

「…ちょっと、社交性身につけろって言ったでしょ?少しは反抗しなさいよ、今私、あなたのこと結構バカにしたのよ?」

「そうか、だがルドも良い響きだ」

「…つまんない奴」

「300年も生きているのでな…。いや、もう400年になるのか?それだけ生きれば、まあこんなものだ」

「バカねー、今あなたは竜なのよ?竜の世界で300、400年なんて、ペーペーの若造なんだから」

「…この年で若造と言われたのは初めてだ。新鮮だな、覚えておこう」

「ほんと、我が子ながら、つまんなくて変わったやつね。まあいいわ、これからよろしくね、ルド。

ああ、それから…」

「おてってーー!!!!!ルドちゃん、おててかわいいねー!!!にんげんのかたちしてるよー?!?!?!

竜はねー、たまに「前世のかけら」を持って生まれる子もいたりしてねー、そういう子はちょっと変わった体の形してたりするんだよー!!!!」

「…竜は、思い願うことによっては、生まれてから姿かたちを変えることもある生き物なの。知らなかったでしょう?

あなたも今は竜の姿だけど、これから変わることもあるかもしれないわね…退きなさいエメ、お母さんルドと話してる最中でしょ」

「ルドちゃーーーん!!おいしいお肉、興味あるーー?!?!?水遊びできるおっきな湖がねー!!!近くにあって…」


こうしてレイノルド改めルドは、にぎやかでうるさい竜の家族のもとに、無事転生を果たした。

これからたくさんの、知らなかったことを知っていける。自分の手を見ながら、ルドは少しの高揚感を感じていた。

ズシーーーンドターーーーンと暴れまわる、にぎやかすぎる家族に踏みつぶされないよう気を付けながら、ルドの新たな「竜生(りゅうせい)」が始まった。









竜に生まれる、ということは、もちろん体の構造が何から何まで変わることを意味する。

産まれたばかりの時は柔らかかった翼や鱗は、時間が経つにつれ固くしっかりした形になっていく。ぴんと伸びた翼を動かしてみて初めて、ルドは気づいたことがあった。


「…竜は、羽ばたきだけで飛んでいるわけじゃ…ない?」


翼をどれだけ動かしてみても、浮く気配がないのだ。不思議に思い、ミトを見つめる。


「ああ、竜はね、生まれながらに身に着けている「属性」の力を、飛ぶときには使っているのよ。

羽ばたきだけじゃこんな巨体、浮かせられないからねー。

それと、浮くときには別に「風の属性」が必要ってわけでもないの。要は「属性」を体に巡らすことによって…」

「あ、飛べた」

「…かわいくない。なんで私の説明が終わる前にできてるのよ」

「…申し訳ない。「属性」…人間の言う「魔力」のコントロールは、魂に染みついているもので…」


魔力は肉体でなく、魂に宿る。それはルドが初めての転生の時に知ったことだった。

要は魔力の使い方、どのようにして魔力を得て、それを放出するのかを魂が「知って」しまえば、あとは肉体という器を通して、自然に扱うことができるようになるものらしい。

しかしそれは「感覚」のため、他の誰かに魔法の使い方を伝授する、ということができない。あくまで覚えた本人だけのものなのだ。

ルドも最初はそれを知らなかったため、転生したあとも自分が魔法を使えるように、と「肉体に魔力を下ろす薬」を開発したりもした。

後にそれが、人間側で大きな事件を巻き起こすことになってしまったのだが、薬は不完全だったため、事態は収束。魔法を使える人間も、今は受け継がれたりはしていない。

ルドが懐かしい己の愚行に浸りながら、ぼんやり飛んでいると、ミトが顔を近づけてきた。こっちの話に集中しなさい、と怒られた感覚、人間でいうところの「めっ」を感じる。


「空気読みなさい。年長者の教えは最後まで姿勢を正して聞くものよ」

「申し訳ない。今まで自分が最高年長者だったから…」

「言い訳しない、返事は「はい」」

「はい」


そのやり取りを、尻尾の鱗づくろいをしながら、少し離れたところで聞いていたエメが、グァッグァッグァッと笑いだす。


「うわー、なんかお母さんが珍しく「お母さん」してるーーー」

「黙んなさいエメ」

「あたしお母さんの話すこともお父さんの話すことも、いっつも寝そべりながら聞いてるよー?気楽にいこーよーーーー」

「エメ、最初が肝心なの!この子は私の子で、あなたの弟だけど、魂は竜殺しの…」

「はいはーーーーーーーい」

「返事は「はい」でしょ!」

「ルドちゃんかわいいでちねー♪たべちゃうぞー♪」


グァグァ笑う桃色竜に横やりを入れられ、ミトの「母の威厳計画」はあっけなく崩れ去ってしまったが、その会話内に、ルドはふと気づいたことがあった。


「…そういえば、父竜は?

私が産まれたことは、もう知っているのか?」


その疑問に、顔を見合わせた母娘竜が、ルドに向き直って「声」を紡ぐ。


「あなたのことは話してあるけど、そういえば挨拶に行かなきゃかしら」

「そういえばお父さん、最近会ってないなー。30年ぶりぐらい?」

「そ、そんなに会ってないのか?」

「え?そんなもんだよ、竜って。必要なければそんなに群れで暮らしてるわけじゃないしねー。

それにお父さん、光竜の長だし、ほら、忙しいんじゃない?知らないけど」

「………初めて聞いたぞ、光竜の長って…」

「言ってなかったかしら?あー、言ってなかったかも。まあ、そういうことだからよろしく」


こともなげにそう告げる母娘に、ルドは驚きを隠せず呆然としてしまう。まさか上級竜の息子に転生してしまうとは…。

人間時代にも、「長」と呼ばれる竜とは対峙したことがなかった。ルドの心に少しの興味が湧く。


「やはり、挨拶に行こう。年長者に教えを請いたい」

「…なんでお父さんに対しては、言われなくても姿勢を正すのかしら。かわいくないわー」

「お母さんの負けーーーー」

「黙んなさいエメ」


母娘の様子に、ふふ、と笑みをこぼしたつもりのルドだったが、自分の喉から出た「グルルル…」という響きに、思わず驚いてしまった。

まだまだ慣れない竜の体をもてあましながら、ルドはミトたちと父竜のもとへ、出生の挨拶に出向くことにした。










そこは、長と護衛の何体かの竜が共に暮らす、巨大洞穴を使った、大きな竜のねぐらだった。

日の光が差し込まずとも、竜の目は物体を捕えることができるようだ。新たな発見に感心するルドを、洞穴の竜たちがじっと見つめている。

そこであることに気付いた。「光竜」の鱗の色だ。皆明るめの緑色の体なのに、エメだけが桃色という珍しい色をしている。

これまでの戦いで、ルドはあまり前線に出るタイプではない光竜と戦ったことがほとんどなかった。記憶している限りでは、どの光竜も奇抜な色のものはいなかったような気がする。

不思議に思い、前を行く桃色竜の、歩くたび左右に揺れる尻尾を眺めながらついて行く。

不意に、その桃色がドスドスと駆け出した。つられてルドも走り出す。踏み込んだのは、一際大きな空間だった。天井に穴があるのか、日の光が差し込んで明るい。

その空間の奥から、のそりと大きな何かが姿を現す。日の光に照らされ、まばゆい輝きを放つ、明るい黄色の鱗を持つ大きな竜だった。首元にふさふさの大きな白い毛が生えている。明らかにルドが見たことのない竜だった。

光竜の長にふさわしいその姿に、ルドが心の中で感嘆のため息を漏らしていると、桃色のかたまりが、その神々しい竜に向けて突進していく。


「お父さんやっほーーーーーーーーーー!!!!!」


ドスッと重い音を立てながら、父竜に挨拶タックルをかましたエメが、ルドに振り返る。


「ほら!ルドもーーーーーーーーーーーーーー!!!」


…見習えと?戸惑って固まるルドに、後ろから機嫌の悪そうな母竜の声が止めに入る。


「基本、エメのやることは見習っちゃダメよ。生まれて数時間でも、それはよくわかったと思うけど」

「…見習うのは難しいと思ってたところなので、そう言われてほっとした。でも少しうらやましいとも思う。ああいうのも」


そう返すと、ミトはグルル…と喉を鳴らした。なんだかんだ言っていても、ミトはエメのことをかわいく思っているのが伝わってきた。

光竜の長は、体当たりしてきたエメの頭に、優しく自身の顔を擦り付け、親愛の意を示す。エメもそれに応えながら、満足そうに喉を鳴らしていた。

仲睦まじい親子の在り様を目にし、ルドは少しの心の痛みを覚えた。今まで葬ってきた竜たちが、次から次へ脳裏に浮かんでくるが、はっきり「顔」を認識した個体など、存在しない。

そのどの竜たちにも、愛する家族がいた。当然のことなのだが、今まで自覚したことがなかったかもしれない。大いなる自分の罪に、ルドは沈んだ。

その気配を感じ取ったのか、前足の足元にエメを張り付かせたまま、父竜が顔を上げてルドを見やった。その視線に、無自覚にルドは身を固くする。


「……我が子であり、人の子よ…。話は、聞いている…。名を名乗るがよい…」


穏やかな、低く重みのある「男性」の声が、ルドの頭に流れ込む。ルドは父竜を見つめ返し、竜の「声」で答えた。


「…レイノルド・アンダーソン。今は、ルドと名付けてもらった。お初にお目にかかる、光竜の長よ…」


長は目を細め、品定めするようにルドを見透かした。何も隠すことを許されない視線の中、ルドは背筋を伸ばし、長と相対する。緊張が鱗を震わせる。


だがその時間は長くは続かなかった。

グァーーーーーーッ、グァッグァッグァッ、と洞穴を振動させるほどデカい竜の笑い声が2つ、長の足元とルドの隣から発せられ、響き渡る。


「…ダメッ、笑っちゃいけないと思ったけどやっぱりダメ、なにこの雰囲気バリバリな感じ!!!あんたたち「それっぽさ」意識しすぎでしょ~~!!!!」

「ぶぁっはははは!!!お父さん「長」っぽ~~~い!!!!なんだっけほら、そういうの「ジューチン」って言うんだよね?!あたし知ってる~!!!」


グァッグァッグァッ、グァッグァッグァッ、やかましいことこの上ない竜の笑い声に、長とルドの作り出した雰囲気が、粉々に壊されていく。

長はルドと見つめ合ったまま、微動だにせずゆっくり「声」を紡ぎだす。


「いい加減にしなさい、お前たち。ルドが固まっているだろう。あとぶっちゃけうるせぇ」


ルドの背筋に、雷が落ちたような衝撃が走る。先ほどまで雰囲気バリバリだった光竜の長から出た俗語が、ルドの頭の中を埋め尽くした。

地が顔を覗かせた父竜に、2体はさらに笑い転げ、しまいには笑いすぎで喉をヒューヒュー鳴らして瀕死になっている。

ぽかんと口を開けて固まってしまったルドに、1体だけ何事もなかったかのような雰囲気で、微動だにしない長が、ゆっくりと声を投げかける。


「…どうした?300か400は年を重ねているのだろう?この程度で我を失ったか?」

「…ぶっちゃけ失った」

「…正直、すまん。まあでも、壊れたところから再生は始まるのだよ、ということで」

「なるほど、わからん」

「…話、戻そうか…」

「うん…」


ルドの抱えていた緊張が木っ端みじんになったところで、2体の話し合いは再開した。


「名乗らせておきながら、こちらが名乗っていなかったな…。私はガザ。光竜たちの長をしている…」

「ガザ、一つ気になっていることを聞いてもよろしいか?」

「よいだろう…、何だ?」

「鱗の色だ。見たところ、光竜たちは明るい緑色のものが多いが、貴方とエメは黄色と桃色…他の光竜と明らかに違う色をしている」

「なるほど…、それは竜が望む形に変貌する性質を持つ生き物だからだ…」

「変貌、とは…?」

「私も初めは、緑色の竜だった…。長になってからだ、このような姿になったのは…。

きっと、「長」になる自分を深く意識したためだろう。意識しすぎだろう、と、ミトには散々笑われたものだ…」

「…心中、お察しする…」

「…気遣い、感謝する…。

…エメは、変貌ではない。生まれつきあの色なのだ…。あれはおそらく、「前世の記憶」が色に宿ったのではないかと、私は考えている…。お前の手のようにな…」

「成る程…」

「…「前世の記憶」で、体の一部が変わるものは多くいたが、色が変わったというのは初めての例だ…。だが、エメは何ら特別な竜ではない…。

強いて言えば、光竜の属性魔法、「癒しの術」が、他より優れている、というくらいだ…」


「癒しの術」、回復魔法。ルドが300年をかけてなお、辿り着くことのできなかった魔法だ。

四大属性魔法の操り方とは、根本的に違うものなのかもしれない。どんなに研究を重ね、「属性」の力を得ても、これだけは体得することができなかった。

光竜の血族だけに受け継がれる術。光竜となった今のルドなら、いずれ使うことができるようになるのだろうか。探求心が頭をもたげた。

そう、探求心だ。ルドは竜になった目的を思い出し、父竜ガザに語り掛けた。


「光竜の長、ガザよ。

私は元、先陣を切って竜殺しに加担していた魔導士だ。貴方の奥方に無理を言って、竜に転生するのを手伝ってもらった。

目的は、竜を殺すことではない、知ることだ。私はこの身をもって、竜を知りたいと思っている」

「…すべて、聞き及んでいる…」

「まずは謝罪を。父であるあなたの承諾を得もせずに、赤子の身を乗っ取ってしまったこと、誠に申し訳ない」

「…よい…。すべては承知の上で、ミトに産んでもらったのだ…」

「…恐れ入る。だが、そんなものに縄張りをうろうろされては、迷惑がる竜もいるだろう。

まだ生まれたばかりの身ではあるが、私は旅に出ようと思う」

「はぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~?!?!?!?!?」


おとなしく瀕死になっていた母娘竜が、ルドのその言葉に反応して頭を上げた。

ガザが視線で制し、ミトは何か言うのを踏みとどまったが、エメはそんなもので止まりはしない。ズンズン近寄ってくると、ルドにずいっと顔を近づけた。


「ちょっとルドちゃん、何言ってんの?お姉ちゃん全然わかんない」

「エメ、私の中身は約400歳なのだ。君の弟なのはこの体だけであって…」

「はぁ~~?!たかだか400歳ぽっちでしょ?私と300歳しか年違わないじゃん!!300歳差なんて弟!!ちゃんと弟だから出てっちゃダメ!!!」

「…理屈も計算も合ってないんだが…」

「理屈や計算だけで姉はできないの!!わかる?!愛だよ、愛!!!姉としての、弟愛がものを言うの!!!」

「エメ、そうはいっても、長のもとに竜殺しの…」

「竜殺しが何だってぇ~~~?!」


ぷぎゅう。

エメは前足で、容赦なくルドの頭を踏みつけた。悔しかったら反撃してみろ、と言わんばかりに、頭を踏んでいる足にぐりぐりと力を入れてくる。

その力に全く抗えない、今の己の身の弱さ。ルドは過去にも似たような形で痛めつけられたことがあったのを思い出した。

あの時は、危害を加えてくる相手に大やけどを負わせた覚えがあるが、エメ相手にそれはしたくないし、今の体がどれだけの魔力量を通わせることができるのかも、まだわかっていない。

まだ不確かすぎる自分という器に、次の一手をどうしたものか、ルドが考えあぐねていると、エメはルドが全く抵抗できないと思ったようで、フシューー、と鼻を鳴らして勝ち誇ったように告げた。


「ほら見なさい!!そんなよわっよわのちまっちまで!どこに旅に出ようっていうのよ!!!

あなたはおとなしく、私の弟してなさい!!少なくとも、私に勝てるようになるまでは!絶対、ぜぇ~~~ったい!!お姉ちゃん旅なんか許さないんだからね!!!!」


後頭部を踏みつけられ、口は地面にめり込んでいるため、ルドは返事すらできない状況なのだが、この姉なら、返事がないのも了承と取ってしまいそうだ。

そこにガザが追い打ちをかけるように、声を重ねる。


「…ルド、お姉ちゃんの言うとおりにしなさい…。

竜の時は悠久、竜を知るのに何を急ぐこともない…。まずは「竜の家族」から知っていくがよい…。

人間と争っているのは、主に火竜と闇竜の一派。ここにいる光竜たちに、お前を恨み、殺そうとまで思うものは、まずいまい…。そこまでの気遣いは無用だ…。

…まあ、今エメが、お前を事故死させてしまいそうだがな…」


そこまで言われて気づいたエメが、はっと前足をルドの頭から退ける。地面に押し付けられていた顔を上げたルドは、ブハーーッと息をついた。何とか事故死を回避した。

ゴフゴフ咳き込むルドを、申し訳なさそうにエメが見つめる。そんな2体に向かって、ガザは柔らかい声で語り掛ける。


「…ルド。エメに認められたら、旅立つが良い…。

…エメ。全面的にルドを任せる。好きなだけ姉弟を味わうとよい…。その方が私は楽だし…」

「長よ、本音が隠しきれていない」

「大丈夫だルド、これは隠す気もない本音だ…」

「…私が無理な突破で、エメを傷つけるようなことをしたら…?」

「どうなるかは言わずもがな…。

それに、お前はエメを傷つけない。それが先程のやり取りでわかった…。

お前を信じよう、お前の「竜を知りたい」という、心をな…」

「……………」


ルドを覗き込むガザの瞳に、嘘偽りはない。何の打算もなく、ただ成り行きを見守ろう、という意思がそこから読み取れた。

竜を知るのに、まず家族から----。それもいいのかもしれない。

それに何より、隣の鼻息の荒い桃色の塊が、ギラッギラ目を輝かせながらこちらを覗き込んでいる。下手に争う気すら失せる好奇心をこちらに向けている。

一時騙して逃げ出すことは可能だろう。だがその後、こういう輩は地の果てまでも追ってくる。エメは間違いなく、決してあきらめない類だ。

ルドは心の中でため息をつくと、ギラギラの瞳にゆっくり視線を合わせた。途端ギラギラに潤いが宿って、さらに光を増す。


「……私は、竜を知りたい。だからエメ、まずは君を知ることにしよう」


この台詞の後、ルドは意識が真っ白になって何も覚えていないのだが、周り曰く、めちゃくちゃエメに可愛がられたらしい。









挿絵(By みてみん)

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