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8 二人の伯父さんと準備

大学生活では、アメリカに行かせて貰えると思うと勉強に身が入る。授業は適度に難しく高校までは、それ程勉強しな くても成績はいつも良かったので、この難しさは新鮮で私にとっては生まれて初めて勉強したような感覚だった。辛く大 変ではなく、むしろ心地よい、やりがいを感じていた。

仲の良い友達が夏休みの旅行計画を立てだした。私は一緒に行けないことをとても残念に思った。そして三人に夏休み 、アメリカに3週間行くと話した。彼女らは私が一緒に旅行へ行けないのを残念がり、そして驚いているようだった。何 か素敵なお土産を買って帰ろうと思った。

旅行まで2週間程となり、準備を始めた。まずスーツケースがいる。母が海外旅行経験のある近くに住む母の兄に頼んでくれ借りることになった。母の兄は同じ町内で菰野屋と言う宝石店を開いている。借りたスーツケースの色ははモスグリーン。それは私が初め 実際に見て触れたスーツケース。

ニック肉桂先生に教えてもらった持ち物メモに自分でも細かく書き足して旅行での生活をイメージしながら準備した 。

蜜とも連絡をとり旅行前に、一緒に買い物をする約束をした。蜜とは卒業式後、初めて会う。そして学校の外で二人 けで会うのも初めて。

蜜は看護学校に入学していた。彼女は寮住まいで、その寮は私の大学とそれ程、遠くない場所に位置していたので大学が終わった後、大学近くの最近お気に入りのお店が集まっているシンシア山手で待ち合わせをした。 蜜は伸びた髪に緩いパーマをかけてお化粧をしていた。アイシャドーのペパーミントグリーンがよく目立つ。化粧をした蜜を見慣れないせいか、どこかギコチナク感じた。私は大学の入学式前に生まれて初めてパーマをかけてみたけれど 「一週間で取れてしまい、今はかなりひどい髪型、でもアメリカのヘアーサロンでローマの休日のアーニャのように大胆に切って貰おうと考えていたので我慢して中途半端に伸びた髪をいつも後ろで結んでいた。化粧も何度か試してみたけれ ど上手くいかない。大学の化粧をしていない友達な、

「信実も綺麗な肌だから化粧しない方がいい。 と言われたので真に受けて何もしていない。すっぴん。

「久しぶり!」

と言い合ってから、千歳みどりさんの話を蜜がした。ニック肉桂先生から聞いていたようだ。二人で「びっくりだね」と揃って言った。その他の一緒に行くメンバーのついては蜜は知らないみたいだった。私も何も話さなかった。話す必要もないと思った。 二人でお店をグルグル見て回った。私が肩に掛けているバッグを指して、

「信実の鞄いいね」と言ってくれた。

「ありがとう。私もとても気にいっている。旅行にも持って行くよ」と答えた。アイボリー色のナイロン生地で軽く少し 大きめの肩掛け鞄。どんな服にも合いポケットも多くて使い易い。 蜜も同じようなデザインの鞄を見つけ旅行用に買っていた。

「お揃いの服買わない?」

と、どちらからともなく言い探し始めた。色々みて前にファスナーがあり、そのファスナーから沢山ギャザーが脇に広が るおしゃれなノースリーブカーディガンを見つけ二人とも気に入った。色は茶色、深緑、紺色、エンジ色、黒があった。

「せーので好きな色の服を指さして選ぼう」と言った。

「せーの」二人とも深緑を指した。

「じゃ茶色にする」と言って私は蜜に深緑を譲った。何故かいつも私は人に譲ってしまう。些細なことで揉めるのは好ま ない。 そして深緑は今年の流行りの色でおしゃれだけれど自分の持っているオレンジの半ズボンには茶色も似合うなぁと思った。

ショッピング中、蜜と大学生活やアメリカ旅行の話をずっとした。その後はショッピング街のカフェでエメラルドグリー ンのクリームソーダを飲みながら又お喋りして、

「では7月19日。空港で」と手を高くあげ降り別れ、蜜は寮へ私は家へと帰った。

その次の日、一斤染家に紫根伯父さんが母に用があって訪ねてきた。彼は同じ山吹市の別の町に住んでいてお互い気軽 に行き来している。帰り際、玄関で紫根伯父さんが、

「信実、アメリカへ行くのだってな。信実がアメリカ旅行へ一緒に行くお寺の人、4月からH大の大学院の保育科に通う のではないかな」と言った。また、

「千歳みどりちゃんは遠い親戚や」と言う。

初耳だ。驚いた。それに、みどりさんはH短大に進学だったような気がした。その時は父か母が紫根伯父さんに私の旅行 の話をしたら偶然、一緒に行く中で知り合いが二人もいたため、伯父さんは私に彼らの情報を少し教えてくれたと思った。

でも紫根伯父さんは全面的に信用のできる人ではないと私は幼い頃から思っている。一瞬、奇妙な鋭い風が吹いた。寒かった。

旅行中、お寺の彼に紫根伯父さんと知り合いなのかと、みどりさんは私と親戚と知っていたか訊いてみようと思った。で も若い私にはそれは、さほど気にする問題でもないようにも感じた。若者とは周りが自分に及ぼす影響をさほど考えない 人達だと思う。いい意味で自分が中心なのだ。

この頃、少し前から前立腺肥大の薬物療法を行っていた祖父が入院して手術をすることになった。しかも藍さんのお父 さんの病院。偶然が重なるなぁと思った。手術は成功で順調に回復していたが高齢で足が弱っていたため、リハビリを兼 ね、もう暫く入院することとなった。私も何度か様子を見に行った。病室は古いが特別室でベッドの置かれている部屋と 応接間があった。そこには花柄のベルベットのソファ二つと大理石のローテーブルが置いてあった。大きなベッドで寝て いる祖父は中世のヨーロッパの貴族の様だった。祖父に19日からアメリカに行くから当分お見舞いに来られないと告げ た。祖父は「楽しんでこいよ」とお小遣いをくれた。

旅行の準備は殆どできた。図書館でヨセミテ国立公園など観光地の下調べもした。楽しい時間だった。旅行は行く前が 楽しいという意見には賛成だが絶対に旅行中が一番楽しいとしか思えなかった。

9月1日から始まる試験の勉強はアメリカ旅行から帰ってきてから、頑張ろうと思い勉強に関する物は持っていかない事に決めた。旅行を楽しもうと思った。英語の辞書も中学1年生の子達と同じ勉強するなら必要ないだろうと思い持ち物リストから外した。 誕生日付近に毎年行くことにしている歯医者へも今年は少し早めに行って現時点で、できる限りの体調を整えた。 父に「車移動が多いから車酔いが心配だなぁ」と言うと、

「アメリカは道がまっすぐだし大きなアメリカの車は揺れもないから大丈夫」と言ってくれた。そんなもんかなぁと思っ た。勿論酔い止め薬と自分の中では酔い止め効果があると信じている固い小梅を旅行の日にち分、持って行く事にした。 あとは7月19日を待つだけだった。

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