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13 時の静止

掌くんのFacebookからの情報によると彼は2月にオーストラリアのパースから南に地図で見ると下降した街に1ヶ月ほど住んでいたと知った。仕事が何なのかはわからない。投稿されてくる写真は彼がサーフィンボードを抱えている姿、ホームステイ先の家族と彼、そのママの手料理など。楽しそうな明るい写真ばかり。日本にいて政治コメントをしているよりずっと1いい内容。

そして3月の初め帰国している。でも何も連絡はない。忙しいのかもしれない。時は4,5月と過ぎた。思い切って私からメッセンジャーで連絡してみた。私の平日休みの日を指定して取り合えず会おうと思った。でも返事はなかった。もう私と逢う気持ちはないのだろう。そこで知りたいことをメッセージャーで訊いてみた。訊きたいことは山ほどあるが2つに絞って訊いた。今回は日本語で。うまく英語で伝える自信がないからだ。”掌くんはニック先生がみんなを騙したと書いていますが、そのみんなに私は含まれますか? が一つ目の質問。

二つ目は“元県会議員の土器昇さんと家が隣と聞きましたが、本当ですか?“と送ってみた。返事はすぐきた。彼からの返事は”返信しなくてごめんなさい。ニック肉桂がみんなを騙したとは言っていません。あくまで自分は騙されたと思いました。土器昇さんは数年前に亡くなられました。隣ではありませんが近所ですよ“と返事がきた。私は”ありがとう。やっぱり英語では、うまく伝わらないです。きっと日本語でも・・・“と返信し、続いてニック先生に会った経緯、大学を辞めたこと、私の就職の際の土器昇さんとの関係、Facebookで掌くんを見つけた経緯、今の掌くんの発言への言及、アメリカ旅行同行者に嫌な思いをさせてしまった後悔、その失敗は今の自分に活きていること、そして掌くんにとってアメリカ旅行は過去でも私には別世界の出来事のように感じると返信した。そして旅行の写真がない私は写真関係の仕事をしていると思われる掌くんにアメリカ旅行で撮った写真を見せてもらえないか頼んだ。どんな生活をしていたのか知りたいからだ。そして会うことはできないかもう一度訊いてみた。彼からは”のぶみさんの良きアメリカ旅行の思い出は、のぶみさんの胸に仕舞っておいてください。自分の言動で嫌な思いをされたのであれば、お詫び申し上げます“と返事がきた。私はすぐ”そうですね。そうします“と返信したが、すでにブロックされて私の言葉は届かなかった。何を胸に仕舞うの? 物体、写真を私は持っていない。仕舞うのは記憶。つまり写真は要らない・・・彼は自分の仕事を否定しているの?

あの時と同じ。30年前信さんに「もう掛けないでくれる」と言われ電話を切られた時と。顔の見えない相手は動作一つで簡単に消せる。まるで相手は何も反応することがない、ブロンズ像のように。私にも感情も考えもあるのに・・反応されたくないかな。

でも今回、掌くんは謝っている。私が嫌な思いをされたのであればと条件は付いているけれど謝っている。謝るのは君も失敗したと思っているからなの? しかし過剰に丁寧な表現で詫びをされたのでは、本意はわからない。彼が送ってきた

He cheated everyone!!は Everyone Cheated me.なのかなと思った。そして彼は大昔のことを思い出させる私に腹を立てているのだろうか? それとも私は素直に文字通りに謝罪を受け取るべきなのだろうか? どうして彼はニック先生に騙されたと思ったのか? 紫根伯父さんとの関係など訊きたいことは、まだまだあるのに時は再び静止してしまった。ふしぎな国の穴に2人で落ちたはずなのに私独り、穴の奥深い底に置き去りにされてしまった。

仙人兄弟とニック先生は同じ時代に、同じ地域に住み、共に幼児に英語を教えたいという同じ志を持ち仕事をしていた時期もあるのに、もう二度と会わないほど意見が分かれてしまったようだ。彼らの間に何があったのか? 私には、わらないままだけれど、私が思うことは、彼らのように似た境遇の人達でさえわかり合えないなら世界平和って不可能ではないか? ということ。会って言葉で理解し合わなければ恐竜とおなじ。人間の未来も恐竜と同じ道を辿るのかな。

そして私の一部はジュラシックパークの琥珀の中の蚊のように埋もれている。私は琥珀をたたき割って残りの自分を取り戻すことはできなかった。結局、私は成長していない。絶対零度マイナス273.15℃で固まったままの冷たい物体。


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