15 8月1日(土)14日目
今日の予定はホテルで朝食後、ユニバーサルスタジオジャパンへ行く。ジーンズ、ベージュのTシャツ、蜜とお揃いの茶色のカーディガンを着た。蜜は深緑のカーディガンを着ていなかった。
昨日のこともあって気のせいか、みんな私によそよそしく接している。今日は喋らない腹話術の人形みたいに誰かに操られているように大人しくしていようと思った。みんなが乗る乗り物に乗り、見る物を見て食べるものを食べて適度に笑って頷いて過した。きっと傍からは楽しんでいるように、みえているのでないかなと思ってった。それでいいしと思っていた。何を見て何をしたのか分からないまま、無事イベントを終えて、ホテルに戻った。ホテルでは部屋割りはあるものの、それぞれの部屋を自由に行き来している。同室のみどりさんが澪ちゃんたちの部屋に遊びに行き、私一人の時、蜜が
入ってきた。そして、こんなことを言った。
「信実は、信さんが好きだよね。でも信さんは藍さんのことが好きだよ。だから駄目だよ。私も信さんが好きだけど・・・」と一方的に話した。蜜の言葉を聞いて柔らかいものが敷き詰められた白い空間に突然押されたみたいな感覚になった。私は気持ちの整理ができない。
まず私は信さんが好きなのだろうか? 彼に何処かであったと感じる。私のそんな感はよく当たる。中学の時、違うクラスの女の子と何故かとても馬が合い話していくうちに誕生日が一日違いで、その事を彼女が母親に話すと同じ産婦人科病院、同じ病室だったと彼女の母親が覚えていて教えてくれお互い驚いてしまったこともある。今回は感が外れて、ただ先輩の6年後のように感じているだけだろうか? 彼が好きなのだろうか? 先輩が好きなのだろうか? ここでは先輩=信さんなのだから、信さんが好きでいいではないかと1つ無理矢理解決。
信さんが藍さんのことが好きは違う気がする。藍さんが信さんを好きが正解で信さんはだれが好きなのだろう? 涼さん? 私? それは分からないけど取り合えず2つ目解決。
最後、蜜が信さんを好き? 全く考えもしなかったこと。確かに私はこの旅行で信さんと、それ程話していない。彼は藍さんや蜜といる時間の方が長かったと思う。それで彼と蜜の間にも恋愛感情が生まれたのだろうか? 気付いてあげられなかったショックで動揺した。確かに信さんはごく公正な判断で見た目かっこいい。しかもここは外国、綱渡り効果と言うことがあって綱渡りをしているような非日常の中で人に優しくされると、その人が好きになってしまうことがあると聞いたことがある。彼は親切で頼りになる面もある。蜜はそれではないのか? では私も藍さんもそうかもと考えられる
。それにしても蜜がそんな風に考えているとは思い掛けないことだった。私は友達が好きな男の人を好きにならないようにしてきた。何億人もいる中でたった一人を取り合う必要がないと考えていた。だんだん困ったことになってきている。
困の漢字の成り立ちのように家の中に生えた木の枝が多方に広がっていくようだ。私が何も話さないでいると蜜が、「私もホームシックになってきた」と言った。私も? とは蜜は私がホームシックとでも言いたいのだろうか? そうなのだろか? こんなに日本に帰りたくないと思っているのに・・・と思った。
蜜が部屋から出て行きまた一人になるとすぐにドアのノックの音がした。ドアを開けると龍馬さんが申し訳なさそうに立っていた。
「これからチャイナタウンへ行くけど一緒に行かない?」
と誘われた。「どうしようかな。みんなに訊いてみる」と答えた。
澪ちゃん達の部屋にみどりさんや蜜もいたので、龍馬さんとチャイナタウンへ行かないか誘ってみた。すると、「今日は疲れてしまったから行けない」とみんな即答した。廊下にいた龍馬さんに、「せっかくだけどやめておく」と断った。はるばるアメリカまで来たのだから行くべきだったような気がしたけれど、どうしても行けなかった。誘ってくれたの信さんだったら、みどりさんも蜜も行っただろうか? 私はみんなを誘わずに行っただろうか? と思った。夜遅く龍馬さんが、お土産の小籠包をもって来てくれた。龍馬さんは一人で行ったようだった。生まれて初めて食べた小籠包は冷めていた。




