14 7月31日(金)13日目
朝起きてホテルのビュッフェで朝食。クロワッサンとサラダとオレンジジュースを選んだ。クロワッサンはバターの味が強かった。
今日はディズニーランドへ行く。東京ディズニーランドへは二回東京に住んでいる従兄弟と行ったことがある。高校合格の記念に、一人で東京へ行った。従兄弟の家に泊まらせてもらい東京を案内してもらった。その旅行があまりに楽しかったので高校2年生の夏休みにもう一度、遊びに行った。私は家で、じっとしていることも好きだけれど、計画を建てて旅行することも大好き。
今日の服装は、水色のブラウス、白のフレアスカート。
ニック先生が運転する車で出かけた。到着し車をパーキングに停めてチケットブースに並んだ。料金は当時20歳以上80ドル、16歳から19歳は60ドル、9歳から15歳は50ドル。18歳の私は60ドル用意して順番を待っていた。
すると藍さんと蜜が、
「信さんは若く見えるから19歳でも通じるよ」と言った。信さんは「そうかなぁ」と言ってチケットブースで、「I am nineteenth」と言ってしまった。あっさりの60ドルチケットが買えてしまった。私も試してみたくなってしまい、私の番になると「I am fifteen years old」と言った。
「No」と言われたので、もう一度言ってみたけれど全く信じてもらえない。その様子を見ていたニック先生が、「Sorry. She is eighteenth」と言った。私は60ドル払い何とか入場できた。
嘘が通じなくて何か悔しい気持ちと、嘘を責められたようで、きまりが悪い気持ちと、信さんは6歳もサバを読んだのに私は3歳だけなのに彼はずるいと言う気持ちで、私の心はグチャグチャだった。この旅行では変な質問されるし、寝ている間に部屋に入られるし、私物は交換されるし、私の話は信じて貰えないし、言いたいことは言えないし、信さんから出る言葉は年齢だけでなくすべて嘘? みどりさんは信さんとは初対面らしいが、もし紫根伯父さんが言ったように信さんとみどりさんが同じ大学で知り合いなら、みどりさんも嘘をついている? 誰が私の見方になってくれるのか? 信じられる人はいるのか? わからなかった。もうこの人達とは一緒にいたくないと思ってしまった。
メインストリートを歩きシンデレラ城前のセントラルプラザにきた。ここから分かれて行動することになった。私は澪ちゃんと英ちゃんと三人で目を合わせて「行こう」と言い左方のアドベンチャーランド方へ歩き出した。
残りの人達はどうなったかは見もしないで・・・
澪ちゃんと英ちゃんがアドベンチャーランドのジャングルクルーズに乗りたいと列に並んだ。いいチャンスかもしれない。
「私は少しあっちの方へ行くね」と言って一人で歩き出してしまった。ある考えが浮かんだ。まず私のパスポートはニック先生が持っている。でもお金はトラベラーズチェックで全部持っている。使い方もわかる。ここから抜け出しても数日は暮らせるような気がする。何日も先のことなんて考えられなかった。彼らと一緒にあと9日過して日本に帰るよりも一
人でアメリカの何処かに隠れて生活していく方が私にはずっと意味のあることに思えた。
でもその前にディズニーランドで一つだけ楽しもうと思った。右方に歩き大きな野外劇場に入り空いている席をやっと見つけて座った。間もなく開演になった。客席にぐるり囲まれた舞台では何やら喜劇が始まった。みんな大笑いしている。とても早口でしゃべっているし、聞く意志のない私には全く理解できない。大歓声の中、ただ無表情で見ていると隣に座っていた中年の女性が隣の女性に、
「She can‘t understand it at all」と言い二人でクスクス笑っている。私は本当に何も理解できていない。この劇の内容も、一緒に旅行にきている人達の考えも、兄の事件も親の対応も、大学の勉強も、何もかも私には理解できないと悲しくなってしまった。涙が次から次へと溢れてしまった。
すると隣の女性が困ってしまったのか、
「He said that she was not hungry because she ate a lot」などと簡単な英語に、劇中の科白を訳してくれていることに気付いた。全然しらない異国の人でも私に優しく接してくれる人がいるんだと思うと、さらに涙がでてくるし彼女の英語が理解できて劇の意味がわかってきて笑うこともできている
のが初めて味合う感覚で戸惑ってしまった。そんな感情がいくつもの歪な個体になり私の中で激しくぶつかる音が聞えるようだった。そして大笑いの渦の中、劇が終わった。私は泣いたことが恥ずかしくて、隣の彼女を見もしないで直ぐさまその場を去った。
自分のことを、まだ気に掛けてくれる人がいることを知ってディズニーランドの門から出ないで、もう一度みんなの所へ戻り、残りの旅行を楽しく過そうと思い直した。待ち合わせの場所に近づくと、まずニック先生と澪ちゃんと英ちゃんが見えた。私を待っているかのように仁王立ちしていた。
そして、みんなも、もういた。
「未成年の子だけ残して勝手に行動して無責任だ」とひどく怒られた。私も未成年なんだけれどと思ったけれど何も言えなかった。あの頃の18歳はまだ立派な未成年のはずだ。しかし、なんて自分勝手で反抗的なのだろうと自分でも思えた。きっとみんなは私以上にそう感じていたと思う。気まずい。やっぱり抜け出せば良かったかなと思った。
そんな時、ふと中学生活で後悔した出来事を思い出した。
中学3年の秋、プールが終わったばかりの頃、昼休み時間に友達三人でこっそり壊れていた柵からプールサイドに入りプールを見ながらお菓子を食べる習慣みたいなのがあった。その日は、まだ残暑厳しく友達の一人が、「暑いからプールに飛び込もう」と言った。
私ともう一人の友達は考えた末、賛成しなくて結局、三人とも飛び込まなかった。もし飛び込んでいたら中学卒業以来会っていない彼女とは今でも仲が良かったかもしれないし、私の人生で何かが変わっていたような気がしてならない。きっとディズニーランドの門から今日、出て行かなかったことを何年後かに後悔する日が来るのかもしれないと思いながらユ
ラユラ歩いていた。




