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12 7月29日(水)11日目

朝、目が覚めた。薬が効いたのか時間は短いが久しぶりによく眠れた気分。ゆっくりと身体を起こして部屋を見回した。何処にいるのか分かるまで時間を必要とした。ここはアメリカ。ドームの自分の部屋。一見したところ何も変化はない。でも空気と匂いと光がどこか違う。音は初めからなかったみたいに存在しない。この地球には私一人のよう。静寂。ベッドから出て洗面台へ行くと何かが、変。歯磨きラックに二本並べて立てて置いた歯ブラシの一本だけ使われたように横になって置いてある。ドアの鍵を見た。掛かっていない。掛け忘れたのかもしれない。歯ブラシの他は動いていないようだ。でも自信がない。私が動かしたのではない。誰? 鍵を掛け忘れていたとしたら、イタズラ好きな掌くん? それとも私が信さんの部屋に行かなかったから信さんがきた? 鍵が掛かっていたとしたら、ここで働いていて合鍵を持っているかもしれないSam? だったら怖い。とにかく、みんなの様子を観察してみようと思った。アメリカにきて初めてメガネを掛けた。おかしい・・・メガネを掛けても掛けなくても見え方が変わらない。むしろ裸眼の方がよく見える。視力が良くなっている。でもメガネを掛けてカフェテリアに行った。食べ物をトレーに取り長いテーブルの前にきた。周りを見渡す。掌くんと目が合った。私を見て大笑いしてる。掌くか・・・掌くんだ。Sam、信さん、掌くんの三人の中では一番害がなく、なんとなく、いいような気がした。その時は歯ブラシを触られたことだけがとても恥ずかしかった。ニック先生が歯ブラシは二本いると言ったのは自分で二本使うとい

う意味でないことかもとその時、気付いた。そして、さらに恥ずかしくなった。その時、誰かに相談するべきだったのだろう。でも一度、蜜に相談して信じて貰えなかった私は誰にも信じてもらえる

自信がなく段々疎外感を感じるようになり誰にも相談できなかった。私の周りで何かが起きている、でもそれは何なのか分からない。慎重に行動しなくては。

私は豪華船で優雅な旅をしていたはずなのに嵐も吹いていないのに一人頼りないボートに乗せられ大きな客船とはロープで繋がっているのに客船に戻ることができないそんな感じだった。だれかに助けて欲しかった。

今日は最後のWanda先生の授業。サンフランシスコ・オークランドの思い出を順番に話した。相変わらず椅子の間隔が狭く信さんの脚に触れてしまう。なんとなく、ぴったり触れた状態が正しい位置のような気がして私の脚と彼の脚は最後までくっついたままになっていた。彼がどう思っていたかは分からないまま。私は暖かくて落ち着けた。授業が終わり席を立ったとき信さんに頭を下げて無言でテラスをでた。

カフェテリアまでWanda先生と歩いた。Wanda先生は今日ハワイへ帰る。私達はロサンゼルスで4日間すごし5日後にハワイ在住の彼女に会う。

どんな話の流れだったのかは思い出せないけれどWanda先生が、

「You have beautiful eyes.」と言ってくれた。

きっと彼女には私が、かなり落ち込んでいるように見えたので励ましの意味だったと思う。

昼から掌くんにプールに誘われた。

「行けない」と答えた。

もし一緒に行っていたら、昨日の夜のことを話してくれたかもしれない。でも生理中では行く気にはならなかった。

 今度は龍馬さんが話し掛けてきた。「信実ちゃん。元気ないけど大丈夫?」と訊いた。

「昔はこんな風ではなかったのよ」と答えた。

「僕も父親が半年前死んでから、なんか変わってしまった気がするなぁ」と言った。

親の死と兄が犯した犯罪は身近な人にもたらす結果は同じなのだろうかと考えた。殆どの死は人の意思に反していつか起こる。でも犯罪はその人の意思で起き周りの人を傷つける。人の死は他人に話せることでも犯罪は人に話すことができいと、その頃の私は考えていた。そして一緒に暮らしていた私にも兄の犯罪の責任があるのではと考えていた。

龍馬さんとの会話を曖昧に終わらせ、自分の部屋に戻り荷物をスーツケースに仕舞う作業をした。何処へも行きたくない。ここにいたいと強く思った。

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