3 7月20日(月) 2 日目
ドスン! 朝、ベッドから落ちて目が覚めた。家でも柵のないベッドで寝ていて落ちた記憶などないのにどうして落ちてしまったのだろう? タンコブまでこしらえてしまった。
立ち上がり部屋の洗面台で顔を洗い髪を梳かしパジャマを脱ぎ着替えた。紺と白の太めのボーダーTシャツに昨日と同じジーンズを穿いた。
午前11時mary morse hall(私達の宿舎)のロビーに集合してmills hallに出掛ける。
みんな集まったが、蜜がいない。私は蜜の部屋へ行きドアをノックした。蜜はまだ寝ている。慌てて用意してロビーきた。事情を知ったみんなは笑った。蜜も私も初の海外旅行で失敗は仕方がない。
食事は毎回、日本で言うバイキング方式。mills hallのカフェテリアのカウンターに所狭しと並んでいる料理の中から選んでとる。今日はパン、サラダ、ビタミン入りミルク、ピザ、芽キャベツ、チョコレートケーキをトレーにのせた。ガラリとした真ん中の席を陣取って私達は食べ始めた。みんな疲れが出たのか昨日より静かだった。パンは何故か酸っぱくケーキは凄く甘かった。
昼からは、近くの銀行でトラベラーズチェックの一部をドル札に換えに行く。トラベラーズチェックと言うのは今ではあまり使われていないが海外旅行者向けの小切手のようなもので支払い時に店側にサインをするだけでトラベラーズチェックの額面に応じた支払いができるし銀行など両替所で現地の通貨に換金もできる。盗難の安全対策と聞いている。
日本の銀行で私の全財産30万円をトラベラーズチェックにして持ってきた。取り合えず2万円ほどをアメリカ通貨に換金した。
教えられた通り「I’d like to cash to this check.」と言ってみたが通じず、ニック肉桂先生に助けてもらいドル札を手にした。
帰り道では日本人の顔をした年配の男の人に、「郵便局は何処ですか?」と日本語で訊かれた。もちろん、知らない。彼には私が現地の人に見えたのかな? と不思議に思った。それとも、からかったのかな? 少し
散歩してドームに戻った。今日も風は優しく気持ち良かった。
午後5時、早めの夕食になった。今日は2食。ヌードル、ポテト、パン、サーモン、クッキー、ビタミン入りミルクを選んでカフェテリアで食べた。ポテトはローズマリーの匂いがして美味しく、クッキーは凄く甘かった。
午後7時、斜め向かいのお寺のお兄さんの方の部屋に集まって自己紹介をすることになった。みんな自分の部屋の椅子を運んで集まった。彼の部屋は、私の部屋より少し広いようだった。
全員揃うのを待っている間、お寺のお兄さんが腕時計を外した。外した箇所はくっきり時計の形の白い肌が見えた。
蜜が怪訝な顔をして「やだ」と言った。
私は「面白い」と言った。
彼はワザと時計の形に日焼けしたとみえて同感者がいて喜んでいたみたいだった。そして本当の彼は色白。
ニック肉桂先生が、
「しんくんは琵琶湖でウインドサーフィンを練習してきたからなぁ」と言った。それで彼はすごく日焼けをしているのだとわかった。
全員集まったようだ。自己紹介が始まった。
まずニック肉桂先生が話した。
「名前は肉桂公広といいます。でもニック先生と呼んで下さい。いろんな体験をして楽しい旅行にしましょう」と言った。
時計回りに自己紹介をすることになりニック先生の知り合いの男の人が話した。
「名前は瀬戸内龍馬。龍馬さんと呼んで下さい。坂本龍馬と同じ漢字です。年は25歳12月生まれAB型山吹高校出身です。今は電気関係の自営業をしています。アメリカは初めてです。よろしくお願いします」と言った。同じ高校だ。また知り合いかな。世の中は狭いなぁと思った。次にお寺のお兄さんの方が話した。
「名前は仙人信です。苗字の漢字はせんにんと書きます。名前は信頼の信です。信さんと呼んで下さい。僕も偶然25歳12月生まれAB型です。」と言った。龍馬さんが驚いていた。藍さんが、「二人は知り合い?」と訊いた。
「違うよ。昨日初めて会った」と答え、自己紹介を続けた。
「山吹市出身で国立大学の鳥取教育大学院生1年です。楽しい旅行にしましょう」と言い終えた。
ニック先生が、「信くんは車で鳥取まで通っている」と言った。
そんなに遠い所まで車で通っているとは驚いた。大学の友達の中にも新幹線で神戸から通学してる子もいることを思い出した。それに紫根伯父さんが私に話した彼の大学はみどりさんと同じ私立のH大学なのに彼は国立を強調して国立の鳥取教育大学と言っている。本人が言うのだから間違いはないだろう。紫根伯父さんは彼とは知り合いでないから彼の本当の大学名を知らなかったのだと思った。紫根伯父さんと知り合いか確かめる手間が省けた。彼はもう一つ気になることを言った。自分の名前の漢字の説明の時、信頼の信と言った。私の名も同じ信という字を使う。私はいつも信じるの信に実るの実ですと説明している。私は信頼できる人間なのだろうか? と考えてしまうからだ。
だから信頼の信とは言わない。そして実が美しいの美でなくて良かったと思う。私に美しいう字は似合わない。彼は信頼できる人なのだろうかと思った。
次にニック先生の奥さんが話した。
「肉桂涼です。アメリカのミルズカレッジに来るのは二回目です。今回の参加者はとてもいい子ばかりで、これからの旅行が楽しみです。体調を崩したり眠れなかったりした時は薬を用意してきたので相談してくださいね。あっ年は信さん、
龍馬さんと同じ25です。私はO型です。夫はAB型です。すごい偶然で今回の旅行参加者の男の人みんなAB型ですね」
と言った。とても濃い化粧をしていて綺麗でモデルのような人だとまた思った。
次に藍さんが話した。
「名前は仙人藍です。19歳です。仙人信さんとは同じ苗字ですが親戚ではありません。高校の時1年間ニュージーランドに留学しているので今短大1年です。私はニュージーランドのホームステイ先で英語に慣れるのがとても早いねと言われていました。ニック先生の英語教室を手伝っています。今回の旅行でもたくさん英語で話したいです。よろしくお願いします」と言った。
次に藍さんの妹が話した。
「仙人紅です。中学3年です。私立の中高一貫校なので、受験生ではありません。私も姉のようにニュージーランド留学するので英語を話せるようになりたいです。よろしくお願いします」
藍さんも紅さんも堂々としているなぁと思った。次に蜜が話した。
「名前は蒲公蜜です。看護学生です。信実とみどりさんとは高校で同じクラスでした。よろしくお願いします」と言った。次にみどりさんが話した。「千歳みどりです。H大学短大の保育科の1年生です。よろしくお願いします」と言った。次は私。手短に済ませようと思った。「一斤染信実です。M大学薬学部1年です。よろしくお願いします」と言った。
次は蜜の妹。
「蒲公英です。中学1年です。ニック肉桂先生の塾で英語を勉強しています。話せるようになるよう頑張ります。この旅行はディズニーランドと飛行機が楽しみです」と誰よりもしっかりと話した。
最後に蜜の妹の友達の女の子が話した。
「朝日零です。家が涼さんの隣です。鰻やです」とそっけなく言った。
数えてみると11人。一人足りないと思っていると。信さんが、
「弟の掌は高校3年生で今、自分の部屋で受験勉強をしています。彼の血液型は確かめていないけれど、両親はA型とB型なので弟もAB型かもしれないです」と言った。
受験勉強を終えてから4ヶ月しか経ってないのに懐かしいなと思った。そして1つ年下と言うことは2年間、同じ時期に同じ中学に通っていたことになる。全く覚えていないけれど・・・こんなに知り合いが多いのは飛行機に乗り、わずか数時間でアメリカまで来られたように本当に世の中が狭いのか、それとも奇妙な狭い所にいるのか不思議な気持ちになった。でもみんな良さそうな人達。楽しい旅行になる予感がした。




