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名ばかり食事デート

 「いらっしゃいませ〜。お決まりでしょうか〜?」


 「ここを利用するのは初めてでな。オススメがあれば頼めるだろうか?」


 「かしこまりました〜」


 「あ、えっと、私も同じもので!」


 「かしこまりました〜。少々お待ちくださ〜い」


 無事に二ポーン食堂へ入ることができた僕は、妙に間延びした喋り方をする女性店員さんへの注文を終えて一息ついた。その際何となく店内をグルリと見渡してみる。


 うーん、パッと見じゃ店内は他の飲食店と然程変わらない印象だなー。特に変わった家具や装飾があるわけでもないし、異質さは見られない。


 「……」


 さて、僕と女性は対面する形で席についたわけだが、さっきから女性の方がソワソワと落ち着きがない。

 両手の指を絡め合わせながらチラチラと僕の方を見てはすぐに逸らす。そんなことを何度も繰り返している。相変わらず百面相しながら。


 このまま観察を続けるのもまた一興。でもそれ以上に怖さのほうが勝ってたから敢えて話しかけてみることにした。


 「落ち着かないか?」


 「はひぇ!? い、いえそんなことは!」


 少し話しかけただけでこの慌てようだ。僕を前にしただけでそこまで挙動不審になるものだろうか。どれだけ心酔されてるんだろ。


 「そうか。ああ、一応は自己紹介しておこう。ヴォイドだ」


 「も、もちろん存じ上げてます! 常日頃からそれはもう! はい!

 ……あっ! えっと私はククルゥって言います。ククルゥ・ノエ。きょ、恐縮ながら、ヴォイド様をお慕い──じゃなくて尊敬してます……!」


 「それは光栄だ。ククルゥさんか、よろしく頼む」


 「呼び捨てで大丈夫ですっ、というかむしろそうしてください……!」


 「え……あ、あぁ、分かった」


 有無を言わさぬ眼光だ。餌に飢えた肉食獣が如し、いや魔素核から生まれる獣に負けず劣らずな食い付き様と言った方がいいかも。こわーい。


 「しかし尊敬してくれるのはありがたいことだが、私は別に持て囃されるようなことはして来ていないつもりだ。

 ククルゥの為に直接何かをした事もない。ああ、今日が初めてになるのか。まぁそれは置いておくとしても、そこまで私を尊敬するのは正直分からないな。君が思うほど大した男ではないよ」


 「そんなことありません! あの日ヴォイド様に救われてから私の人生は変わりました。生き方や考え方、後ろを向いて生きていくのはもうやめにしたんです。

 それもこれも全てはヴォイド様の慈悲あってこそ。今の私があるのもヴォイド様のおかげなのです」


 …………えー? 何言ってるんだろうこの子。

 僕達初対面だよね? 救われたとか言われても心当たりなんて無いんだけど。いや、妄想の可能性もあるな。こういう手合いは思い込みが激しいものだ。


 「救った、とは? まさか今日のことではないだろう?」


 「ヴォイド様が覚えていらっしゃらないのも無理はありません。もう3年も前になりますし、あの時の私は酷く見すぼらしい格好をしていましたから。

 薄汚いゲス野ろ……こほんっ、酷い父親から虐待を受けていた私を助け出してくれたあの日を、私は一度だって忘れたことはありません」


 これが演技なら大したものだ。でも嘘にしては妙に真実味がある。実際に起きたことで、単純に僕が忘れてるだけなのかな?

 仮に本当だとして、要するにピンチを救われたから尊敬してますってことね。


 うーん……でもそれはありえないんだよな〜。何の得にもならないのに僕が誰かを助けるなんて、まず無い。あるとしたら今回みたいに打算がある時限定。

 得するからと自ら動いたなら多少なりとも記憶に残りそうなものだけど、残念ながら掠りもしない。やはり彼女の妄想か。かわいそうに。


 「ふむ……参考までに、当時の状況を教えてもらっても?」


 「あ、はい。て言ってもあの時の私、殴られたり蹴られたりで意識が朦朧としてて直ぐに気を失っちゃったんですよね。

 目が覚めたあと、医療ギルドの人からヴォイド様が助けてくださったって聞いたんです。だから詳しいことは何も……あるとすれば、ヴォイド様が酷く怒りを顕にした声を出していたことくらいなら覚えてます」


 僕が怒った? つまりククルゥを虐待してた父親を見て怒り心頭な僕が、その父親をとっちめたあと、医療ギルドまでククルゥを運んだってこと?


 いやいや、無い無い無い。そんな記憶はございません。見ず知らずの親子事情に首突っ込むとか正気の沙汰じゃないよ。そもそもここ数年で怒ったことなんて──。


 (んん? ちょっと待てよ?)


 怒ったことはない。そこまで思い至って直ぐに引っかかりを覚えた。


 なんだろう。この喉の奥に刺さった魚の小骨みたいな気持ち悪さ。何かを見落としてる気がする。もう一度思い出してみよう。


 3年前……親子……そして僕の怒り……。


 「……あ」


 うんうんと思い出してみることしばらく、記憶の中で唯一該当するものが一つだけあった。

 とは言え、そもそも前提からして違っており、記憶の中の相手がククルゥの父親だったなら、やはり僕は彼女を助けてはいないのだ。


 そう、あの時は確か魔魂を換金する為にロアルの所へ向かっている途中だった筈。

 質の良い魔魂が手に入ったから換金額に期待できるぞとルンルン気分だった訳だけど、浮かれ過ぎてて何者かの接近に気付けず、そのままソイツにぶつかられてしまったんだよね。


 で、その拍子に手に持って眺めていた魔魂を落としてしまい、挙句ソイツが落ちた魔魂を踏み砕いたもんだから、そりゃあもうブチ切れたな〜。

 浮かれてた僕も悪いっちゃ悪いけど、強くぶつかってきた上に下手をすれば数千万の価値がある物を台無しにされてしまったらね? その時の僕の怒りときたら、自分でも引くほどだったと記憶してる。


 確かあの時……そう、こう言ったっけ。


 「貴様の一生を賭けて償うがいい、だったか」


 うん、そんな感じのことを言った気がする。

 結局その後は騒ぎを聞きつけた人達が半殺しになってた奴を回収して……今思えば、その人達が医療ギルドの人だったのかも。

 流石にその時の会話までは覚えてないや。まぁお咎め無しで今こうして居るのだから、特に僕が非難されてた訳ではないのだろう。たぶん。


 「……」


 「ん? どうかしたか?」


 ふとククルゥの方を見てみると、ポカンとした様子で僕を見ていた。しかし直ぐにその表情は泣き顔へ、更に笑顔へシフトしてと忙しない。

 どう対処したらいいのか分からず無言を貫いていると、徐にククルゥが僕の手を取った。


 「覚えていて、くださったのですね……」


 はい? ……ああ、もしかしてさっきのセリフかな。じゃあやっぱりあの時の男はククルゥの父親だったのか。

 怒り心頭で肝心のククルゥの存在はまったくもって知らなかったけども。きっと近くに居たのだろう。


 「お待たせしました〜。ごゆっくりどうぞ〜」


 (お、きたきた)


 今にもククルゥが感動の涙を流そうとしている時に、ようやく注文した料理が運ばれてきた。正直助かったよお姉さん。


 (これが二ポーン食堂の料理か。確かに見慣れないというか、ライスが赤っぽいのは何故? 上に乗ってるのは焼かれた卵に赤いソース。皿の端にあるのは飾り用の野菜かな?)


 「あ、今日のオススメはオムライスなんだ」


 「オム……?」


 当然の如く話すククルゥに目を丸くする。随分と慣れてるみたいだし、さては常連だな? 心強いじゃないか。


 「とっても美味しいですよ? 卵とライスを一緒に食べるのが定番です。ぜひ召し上がってください」


 経験者は語る、か。ククルゥが常連なのだとしたらその言葉にも納得だけど……うーん、見た感じゲテモノって訳でもない。死大陸の料理ってのは考え過ぎだったかな。


 ま、ロアルも気に入るって言ってたし、物は試しだ。


 「……ふむ」


 皿の横に置かれたスプーンで卵とライスを掬い上げて口に運ぶ。ちなみに仮面は目元だけを隠している物だから、別に外す必要は無い。食事の度に外すの面倒くさいしね。


 何度か咀嚼を繰り返していた僕の感想はと言えば、ズバリ美味しいの一言に尽きた。

 ほっぺが落ちるだとか、服が弾け飛ぶだとか、そんな過剰な表現が起きる程の物では決してない。でもなんだろう、不思議と安心する味だ。


 「どうですか?」


 「美味しいな。複雑な味付けというわけでもないから取っ付きやすいのも良い点だ」


 「ふふ、じゃあ私も……うんっ、美味(おい)しっ♪」


 その後は特に会話らしい会話もなく、黙々とオムライスを食べ進める。ククルゥは食べてる間も落ち着き無く僕の方をチラチラ見てきてたけど、僕は努めて冷静に無視を決め込んだ。

 食事中にペラペラ喋るのは趣味じゃないのだ。悪いね。


 やがてオムライスを平らげた頃、ふと一つ気になる事が。


 「そういえば、これはいくらするんだ?」


 味的には中の上。あとは使っている素材にもよるけど、まぁ安く見積もっても800メアってところかな。一般的な食事処で要求される平均額くらいだと思われる。


 「250メアですね」


 「っ、ごほっ! げほっ……!」


 「だ、大丈夫ですかヴォイド様!?」


 あまりにも予想外な金額にむせてしまった。というか250メアだって!? この味で250!? いくらなんでも安過ぎない!?


 「すまない、大丈夫だ。しかしそれでは儲けはほとんど無いに等しいだろう。何故成り立っているんだ……?」


 「んー、私も噂程度にしか知らないんですけど、オーナーさんは現役の冒険者だとか。そこで稼いだお金をこっちに当てて、謂わば趣味でやってるとかいないとか」


 冒険者をやりつつ食堂の経営も? どんなハードワークだよそれ。僕なら1日と経たずにギブアップする自信があるよ。

 まぁククルゥの言うように所詮は噂。裏では黒い事をやってたりなんてのも今じゃ珍しくないしなー。他に稼ぎ場所がある線は濃厚だろう。


 「こちらお下げしますね〜」


 「ああ、どうも」


 「いえいえ〜。あ、食後のデザートは如何でしょうか〜? 今ならカップル様には無料で提供させてもらってますよ〜」


 空いた皿を片付けに来た女性の一言に、稼ぎ云々の話題は僕の脳内から消し飛んだ。そう、食事もそうだけど本命はそれなんだ。もちろん頂くさ!


 「か、カップル……」


 「ではお願いしよう」


 「は〜い。でしたら、カップル様確認の為に何か証明になる物をお見せいただけますか〜?」


 おっとそう来たか。いやまぁ必然ではあるよね。自称カップルだけで注文できるなら、同じ事を考える輩が大勢現れる筈だし。


 でも困ったな。証明になる物なんて持ってないぞ。

 僕とククルゥの指に即座に魔力で指輪を作り出し「夫婦です」ってのも出来る事は出来る。でも周りには人の目もある訳で、軽率にそんな事を言おうものなら「ヴォイド様がご結婚!」という感じで瞬く間にアレット中に情報が拡散されちゃうよねー。


 じゃあいっそのことキスでもしてみようか? いいやそれも却下。理由は結婚云々とほぼ同じ。あからさまな行動は僕の首を締める事になる。

 そもそも出会ったばかりでそんなこと出来るかい。節操なしのウェインじゃあるまいし。


 ……もう無料に拘らず普通に注文するのもいいかもしれない。さっきの料理が250メアだったのだから、デザートも低価格の可能性が十分にある。多少は妥協してもいい……けど、ここまで来て諦めてしまうのもなー。


 (うーん……あ、そうだ)


 ふと良い案が思い浮かんだ。上手く行けば良し、ダメなら普通に注文しよう。


 「立場上、人前でというのは少々憚られるものがあるのでね。これで許してはもらえないか?」


 「ふえ!!?」


 そう言って僕はククルゥの片手を取り、手の甲に軽く口付けて見せた。これくらいなら大事(おおごと)にもならないよね。

 真っ赤になりながら素っ頓狂な声を上げるククルゥには取り合わず、さてどうなるかと女性の反応を伺う。


 「立場上? うーん……失礼ですけど〜、お名前は〜?」


 「ヴォイドだ」


 「……ああっ! 貴方がヴォイドさんなんですね〜。お噂はかねがね〜。では立場上というのは、つまりそういう意味なんですね〜?」


 「ん? ……ああ、まぁそうだ」


 言ってる意味がよく分からなかったけど、とりあえず頷いておこう。


 「分かりました〜。デザートお二つ、お持ちしま〜す」


 何やら意味深な事を言われたような気もしたけど、一先ずは無事にデザートにありつけそうだ。






 ──……。






 「ごちそうさま。今日は付き合わせて済まなかったなククルゥ」


 「とんでもないです! 素晴らしい時間を過ごさせていただきました!

 それはもうタップリとヴォイド様のご尊顔を記憶に刻み込みましたし、お声も脳内保管しましたし、何より私なんかにく、くち、口付けまで! 私この手は洗いません! 何なら毎晩おかずに──!」


 「そ、そうか」


 うん、やっぱり怖いやこの娘。


 一先ず無事に食事とデザートを堪能した僕達は、他に並んでいる人達の迷惑にならないようにと早々に退店して、大通りに設置されているベンチに腰を下ろしていた。


 ちなみに期待していたデザートは、まぁ可もなく不可もなくって印象。どこの店でも出るような普通のパンケーキだった。

 しかしやはり他と違うのは値段だ。本日のデザートは毎日変わるらしく、そのどれもが100メア均一だと言うのだから驚きである。


 ま、僕からしてみれば味はどちらも60点ってとこかな。皆に人気なのは、それを補って余りある程の低価格っぷりだからこそだろう。

 極力お金をかけたくない僕のような人達にとってはまさにオアシスだろうね。これで混んでさえいなければと思うのは流石に我儘かな。


 ともあれ時間潰しも出来た。正確にはもう少しだけ余裕はあるけど、これくらい誤差だ。そろそろロアルの店に戻ろうかな。


 「では私はそろそろ。この後も仕事が立て込んでいてね。申し訳ない」


 「い、いえ! ホントにありがとうございました! ……あ、あの、ヴォイド様、最後に一つだけいいですか?」


 挨拶もそこそこに、そそくさと退散しようとしていた僕をククルゥが呼び止める。

 振り返ってみると、さっきまでの喜び様は消え失せ、深刻そうに俯くククルゥの姿があった。


 「どうした?」


 「いえ……その、ヴォイド様はとても魔力の扱いに長けていると聞き及びました」


 「ふむ、そうだな。世界最高峰と言ってもいいだろう」


 割と誇張無しにね。僕以外で僕並みに魔力を扱える人なんて見た事もないし噂に聞いたこともない。ま、世界は広いから居るとこには居るかもだけど。


 「図々しいお願いだとは重々承知しています。ですが、どうか魔力の扱い方を教えてはもらえないでしょうか? え、えっと、コツとか!」


 コツなんて僕が教えてほしいくらいなんだけど。魔力に関して僕に聞いたところで、指を動かすコツを教えて! って聞いてるようなもんだよ。ほぼ感覚で使ってるから上手い説明なんて無理無理。


 説明できたとしても手取り足取り教えてる暇もなし。ここは現実を突き付けて諦めさせよう。


 「私のやり方は他者にはオススメしない。理由は、私が持つ魔力が膨大だからだ。それを前提とした扱い方をしている以上、他人が同じ真似をすれば最悪の場合魔力暴走を引き起こすだろう。

 ククルゥ、言ってはなんだが君の魔力総量は平均以下だ。そして個人が宿す魔力の質や量は生まれた時に決まっている。つまり伸び代が無い。

 持たざる者に魔力の扱い方を教えたところで焼け石に水。私の教えは特にな」


 「じ、じゃあ、努力して魔力を増やすということも……?」


 「もちろん出来ない。この世界は不平等だ。生まれた瞬間、魔力を用いて生きるか、それとも普通に過ごすかを強いられる程度にはな。

 ……ただまぁ、一つ例外もある。こちらはもっとオススメしないが」


 「教えてください!」


 グイッと近付いてきたククルゥに少しばかり驚いた。


 なんでこんなに必死そうにしてるんだろ。もしかして訳あり? やだなー、余計関わりたくない……けど、これを教えれば諦めもつくよね。


 「……魔素に体を侵食され、魔人となることだ」


 「え……」


 思いもよらぬ言葉を投げかけられた途端、ククルゥの表情が凍り付いた。


 そら見たことか。世の中そんな簡単に力が手に入ると思っちゃあいけないよ? 生まれた時から規格外である僕が言っても何の説得力も無いけどさ。


 「魔人になれば魔力総量は大きく向上する。が、知っての通り魔人は迫害を受けている存在だ。

 更に言えば、魔力を得たからと言って自在に扱えるようになるわけじゃない。魔素の侵食、その過程で元々身体に刻み込まれている魔力回路はズタズタに引き裂かれ、魔力を使いたくても使えない状態になる」


 「魔力、回路?」


 「水を供給する為のパイプが破損すれば水が止まってしまうだろう? それと同じで体中へ魔力を正しく供給する役割を持っているのが魔力回路だ。

 その回路が侵食の過程で修復不可能なまでに損傷。だから増えたところで魔力は使えない。悲しいことにこれは確実に起こるんだ。

 魔力が増える一方で、それ以上のデメリットがついて来る事を忘れないでほしい。……まぁ、君がそんな愚かな事をするとは思えないがな」


 はい、ここまで圧マシマシで話した訳だけど、これ全部本の受け売りである。ホントにそんな事になるのかなんて正直知らない。

 でも、ククルゥを諦めさせるだけならこれ以上の説得力を持った話しは無いからね。


 「そんな……」


 「……君が何を思い詰めているのかは分からない。だが魔力の道は諦めるのが懸命だ。他の道を模索するといい」


 「他の、道。例えば何でしょう?」


 「何も魔力前提でなければならない訳じゃないだろう? 剣技を覚えるだとか、あとは知識だな。

 ん? すまないククルゥ。これ以上話している時間は無さそうだ」


 「い、いえ! 引き止めてしまって申し訳ありませんでした!」


 「いいさ。君が正しい道を選ぶ事を祈っているよ」


 今度こそ、僕はククルゥと別れて人混みの中へと溶け込んでいった。瞬時に変装を解いて一般人へと戻り、ふと思う。


 結局ククルゥは何で魔力の扱い方を教えてほしかったんだろう?


 (……ま、いっか。どうせ僕には関係のないことだし)


 今はとにもかくにも魔魂の売却額だ。








 「剣技……私なんかに出来るかしら。……いいえ、やらなきゃ。あの子(・・・)を取り戻す為にも私は強くならないと。

 ヴォイド様に示していただいた道を無駄になんて出来ないわ」


 行き交う人の波の中、ククルゥは静かに決意を固めた。他ならぬ彼女自身の目的の為、今日という日を無駄にしない為。


 ただ彼女は気付いていなかった。そんな自分をジッと見つめる存在が居る事に。

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