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94/107

94,お前に授けよう。

 

〈滅却絡繰り〉を装備。


 これで、倒すだけで復活のない滅却となる。

 冒険者ギルドは良いものを作った(そして妹のセーラが盗み、おれのアイテムに入れたのだったな)。


「勇者少女。足場をいただけるか?」


 勇者少女が肩をすくめて、『見えない刃』を放つ。斜め上方へ。

『斬撃効果』をなくすことで、この刃に乗っかっていくことができる。


 なんといっても偽【豪腕卿】は、50メートルクラスの巨人なものだから。


 こうして高みへと飛んでから、〈魔滅の大槌〉と〈双蛾の斧〉の二刀流、《覇魔弾》。

 一撃必殺の、破壊力をこめた振り下ろし攻撃。


 対する偽【豪腕卿】は、塔のような剣でガード。


「むざむざ食らうと思ったか、そんな単調な大技を!」


「失敬な」


 というわけで、《時間跳躍ディレイ》。

 敵のガードが終わるまで跳躍し、無防備となった偽【豪腕卿】の頭部に叩きこんだ。


 どうと倒れる偽【豪腕卿】。巨人ゆえに地響きが起きる。


 こっちはくるりと回転して着地。


 瀕死の偽【豪腕卿】だが、余裕の笑みを浮かべている。さて?


「無駄なことだ。俺様は、アリサさまの加護により、何度となく復活するのだからな!」


「え、なに、アリサだって?」


 サリア様の残滓で創られた存在。分かりやすい名前。そして、『世界を滅ぼす者が来る』と、忠告してくれたのに?

 いや、あの忠告自体が、自身を犯人候補から逸らすための作戦だったのかもしれん。ミスリードというやつだ。


 だとすると、バカな部下のせいで、せっかくの作戦も台無しということか。

 まぁ、偽【豪腕卿】が死に際にアリサの名を出すことも、ミスリードさせたろう作戦のうち、ということもあるが。

 いや、そこまで入り組んではないな。


 ところでこの偽【豪腕卿】は、これから滅却されることを知らんので、説明してやろう。


「偽【豪腕卿】。この凶悪なる〈滅却絡繰り〉の説明をしてやろう」


 というわけで、懇切丁寧に説明してやった。

 だんだんと偽【豪腕卿】の顔に理解の色。やがて絶望した調子で言う。


「ま、まさか……では復活はないというのか? 完全に消滅するだと? アリサさまのご加護はどうなる? いや俺様は信じんぞ!!」


 本物の【豪腕卿】が復活しなかったのは、〈サリアの大樹〉を奪われたからだが。

〈滅却絡繰り〉は、無条件で発動できる。よくよく考えなくても、もっとも恐ろしいアイテム。


「まぁ信じなくてもいいんだけど。じゃ、トドメをさすね」


 仕留める一撃。

 偽【豪腕卿】が跡形もなく消え去る。復活のない消滅だ。


 勇者少女がふいに言った。


「あー、分かったわ」


「なにが?」


「冒険者ギルドが、ソルトを『特異点魔物』にして討伐クエストを出したのに、〈滅却絡繰り〉を出さなかった理由。それは単純な話で、これ以上、あなたに〈滅却絡繰り〉を奪われるリスクを避けたかったからよ」


「ふーむ」


 冒険者ギルドといえば、おれの古巣である〈暴力墓〉の推奨レベルに細工し、初心者たちを死地に送っていたんだったな。

 あれは、【消滅卿】と組んでいるんだとばかり思っていたが、どうも違うのではないか、と思えてきた。


 仮にアリサ側と組んでいたのならば。

 最終的には、アリサが【消滅卿】に弱体アプデ入れたのも、うなずける。


「もっと早くするべきだったことを、するか」


「なにするの?」

 と勇者少女。


「冒険者ギルドのギルマスに会いにいく。穏便な話し合いのために」


「拷問するのね、OK」


 いや、ちゃんと人の話を聞け。

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