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88/107

88,よく働いた。

 

 まずは重装戦士に重傷を負わせて、戦線離脱させた。


 ただ、回復魔法のレベルが髙ければ、ここで復活も可能だろう。


 ここのパーティの魔法使いが回復役なのは、魔杖の種類で分かった。

 回復効果を高める魔杖を装備していれば、自分がどの属性か教えているようなものだ。


 というわけでボスのころからの心得。

『戦闘をだらだらやりたくなければ回復役を潰すべし』。


 即席パーティの困ったところは、それぞれの役割分担にもとずいた行動を、すぐにできないことだろう。

 回復役をガードするのは、もう一人の重装戦士の役割なのだが。


「俺が撃破してくれる! 《重音爪》!!」


 回復役は無視して、こちらに巨大戦斧による攻撃スキルを仕掛けてくる。


「なんたることだ」とおれ。


 回復役の魔法使いも同じ感想だったらしく、後方に移動する。

 つまり、負傷した重装戦士の回復をしているときに、無防備になりたくないというわけだ。


 回復役が後方に引いたので、はじめの重装戦士はやはり戦力に戻らない。

 

 よって、残り三人。

 回復役を潰すのは後回しでよさそう。


《重音爪》とかいう、斬撃力を上げた一撃を〈魔滅の大槌〉で弾く。


「俺の一撃が──!」


 と、無駄に驚愕している。

 追撃で仕留めてやろうかと思ったが、少しはパーティ精神をもっている者もいた。


「させるか!」


 と、精霊使いが攻撃を仕掛けてくる。


 ところで精霊使いの攻撃には、妙にデバフ付与がある。

 妙にと言うのは、なんで精霊攻撃とデバフがセットなのか。


 まぁ、おれには想像もしない理由があるのだろう。


 とにかく精霊使いによる精霊召喚攻撃は、回避するに限る。

 が、ホーミング機能があったせいで、回避先でくらった。


 ダメージはたいしたことないが、速度低下のデバフをくらう。

 ただでさえ、敏捷性特化ではないのに、ここで動きがのろくなるとは。


「いまだ、仕留めろ!」


 と、精霊使い。

 命令されたことにイラッとした様子で、重装戦士が再度攻撃を仕掛けてきた。


「俺に命令するんじゃねぇ! 《重音爪》!!」


 ふーむ。

 ここは『時間跳躍ディレイ』でいきましょぅ。


 ただし今回は攻撃を遅らせるのではなく、速まらせる。


「な、動きの速度が、上がっただと──!」


《重音爪》が到達する前に、こちらの〈魔滅の大槌〉で、その両腕を両断しておく。


「ぐぁぁぁぁぁあああ!!」


 ちなみに、厳密には『攻撃速度が上がった』わけではなく、時間を跳躍しただけ。


「まったく、レベル400帯のわりには、たいしたことがない。冒険者の強さは、やはりレベルだけじゃないな」


 と、おれは嘆きつつ、両腕を両断した重装兵士を蹴飛ばして、精霊使いにぶつける。

 そこから連続ディレイで精霊使いの防御魔法のタイミングをずらしまくってから、柄頭を脳天に叩き込む。


 ちょっと加減を間違えて、脳漿が飛び散る。


「おっと、殺してしまった。まぁいいか──」


 よくよく考えると、殺してしまっても〈サリアの大樹〉で復活させてやればいいのか。

 案外、一回死んだほうが、その失敗の経験から学ぶのではないか。


「さて、もう一人は──?」


 逃げ出した回復担当の魔法使いの背中を見やる。


「敵前逃亡か。仲間を見捨てた点は、見逃せんな。残念ながら」


『時間跳躍ディレイ』で、その魔法使いの脳天に、〈魔滅の大槌〉を叩きこんだ。

 真っ二つ。


 それから重傷で倒れている重装戦士のもとに戻り、顔面を踏みつけて殺した。

 ラスト一人。


 それは両腕を両断したほうの重装戦士。

 おれが視線を向けると、なんと泣きながら命乞いをしはじめた。


「命乞いだと? 冒険者魂はどこにいった? まぁ、全部が全部、命知らずとはいかんのか。それでも冒険者の質低下を感じずにはいられない」


「お、お願いします、し、死にたくない、故郷に家族が、」


「大丈夫、大丈夫。復活させてやるから」


「や、やめてくれ!!」


「大丈夫だって、痛くない、痛くない」


 一撃で首を叩き落──そうとしたが、向こうが変に避けるものだから、半分だけ切断してしまった。


「あぎゃぁぁぁああぁぁああああ!!」


 と、なんか苦しんでいる。

 うーむ。避けるから。


 こんどはちゃんと首を刎ねた。


 それから〈サリアの大樹〉に接続し、いま殺した四人を復活させるようにする。

 復活場所は、最寄りの町の入口でいいな。


 親切だよな、おれって。


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